第168話 カロナの活躍
カロナが『凶痛結界』を発動した。その結界の範囲を示す陣がジョーと近衛騎士達が使ったのよりも、広がっていった。床の全てを塗りつぶすようにーーーー
「ッ、ぐぁあっ!?」
ルクディオス殿下は突然に左腕から痛みを訴えてくることに苦痛の表情を浮かべつつ、困惑していた。その現象はルクディオス殿下だけではなくーーーー
「ギャァァァァァ!?」
「ぐぅぅぅっ!? な、何故…痛みが!?」
「ぐぎぃぃぃぃぃーー」
「こ、この結界は……しまっ!?」
近衛騎士達も左腕から痛みで叫び声が漏れる中、ジョーは咄嗟に動き出していた。
「隙を見せたな!!」
「ごふぁ!?」
ジョーの近くにいた近衛騎士の1人が突然の痛みで剣を落としてしまい、隙を見せたことで首を斬りつけられてしまう。
「チッ! すぐ体勢を整え直せ!!」
「あは♪ まず1人死んだね♪」
「貴様! 男の方は結界の効果を受けていないのか!?」
「いいや? しっかりと痛みを感じているぜ」
範囲内にいる筈のジョーが自分等と同じ効果を受けているように見えなかったことに疑問を浮かべていたが、ただの我慢だった。
ジョーの表情は変わっていないが、痛みで額から汗を流しているのが見える。痛みは最初からわかっていれば、覚悟を決められる。なので、武器を落としてしまった近衛騎士は突然だったことで隙を見せてしまったのだ。
「私の『凶痛結界』は敵味方も無差別に受けちゃうからね~♪」
『凶痛結界』はシンプルにカロナが現在に受けている痛みを敵味方関係なく、共有する効果だ。そのシンプルの故に、範囲が半径25メートルと広くなっている。
「あぁ、薬を使っても痛みは消えないよ♪ まだ私が傷付いているからね」
「……結界は死ねば、消えるが……その死で更に痛みを受けることになるか。なら、痛みを感じさせないまま殺すしかないな」
死に繋がる痛みをカロナに与えれば、同時に範囲内にいるルクディオス殿下達も受けることになってしまうだろう。流石に死にはしないだろうが、その痛みでまた隙を見せてしまうだろう。
「ルクディオス殿下、どうしますか……?」
「お前らは早めにその男を片付けろ。片付けた後に、女を殺す。少々は痛みを受けることになるが……」
「わかりました」
出来るだけ痛みを感じさせないように首を斬り落とすつもりだが、少しでもずれたらその痛みを共有してしまう。
「ふぅん、しばらくは私を倒さずにNo.4を先にやろうってことね…………でも、無駄ぁ♪」
カロナは自分の得物を右足に当て…………
「しまっ!?」
「ギコギコ~」
「「「ぐぁぁぁぁぁ!?」」」
少しずつ削られて、拷問のような痛みが皆に襲いかかっていく。ジョーも痛みに顔を歪めるが、見ているだけではない。
「『血赦熱輪』!!」
「ッ、防御だぁぁぁ!!」
「うおおぉぉぉ!? ただの斬撃じゃない!?」
輪の形をした赤い斬撃を防いだ近衛騎士達は防いだ瞬間に斬撃から液体になり、身体に掛かってしまう。
「……血? ッ、あ、熱い!?」
「燃えているぞ!!」
「ルクディオス殿下!」
そして、その液体が燃え始めた。ルクディオス殿下はすぐ水魔法で液体を洗い流そうと4人分の巨大な水玉を放ったが…………敵対していたカロナから眼を離してしまった。
「あはっ♪」
「…………え?」
カロナがルクディオス殿下の眼から離れた瞬間に、『瞬動』でノコギリの刃を背後から1人の近衛騎士の首に当てていた。
「また1人♪」
「うぎぁぁぁぁぁーー……」
刃を引くごとに悲鳴が上がり、見た目より切れ味があるノコギリはひと引きで首を斬り落とした。
「貴様ぁぁぁ!! 『連続突牙』!!」
「ばーか♪」
近衛騎士は怒りで忘れていた。カロナへ攻撃してしまうと…………
「ぐがぁ!」
「痛い? 痛いよねぇぇぇぇぇ」
カロナは致命傷を避けるように動き、傷付いていた右足へ突き刺さるようにした。新たな痛みに技の途中だった近衛騎士は攻撃を中断して、地に伏せてしまう。
「また1人♪ ………あー、もう体力がないや。あとは任せていい?」
「あぁ、もう来ている頃だろうな」
「頑張ってね♪」
カロナはトドメを刺し、あとルクディオス殿下と近衛騎士のリーダーが残った所で、カロナの体力が既にあと僅かになっていた。このまま、出血ダメージで落ちてペナルティを受けるので、その前に結界を解除して自殺した。
「ッ、自殺しただと?」
「あー、渡り人のことを詳しく知ってねぇのか? まぁ、説明するのも面倒臭いから話さねぇけどな」
カロナが自殺した今、残っているのはジョーとルクディオス殿下、近衛騎士のリーダーだけに……あとは端っこで顔を青ざめている貴族のおじさんになる。
戦況は被害が多いのはルクディオス殿下側だが、2対1で結界が消えたから痛みも消えてお互いは無傷の状態になっている。なので、ジョーは不利になるが…………
「うはっ、ようやく来たか」
扉の向こう側から2つの足跡が聞こえ、ジョーは笑う。タイミング良く、リーダーが寄越した援軍が現れたのだからーーーー
ーーあとがき
ストックが少なくなってきたので、次回からは1話ずつとなります。
すいませんが、宜しくお願いします。
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