第162話 悪足掻き



 雷豪風塵鬼の雰囲気が変わる。ここから何をして来るかは未知数だが……体力バーは最後の1本で、もう半分もない。ヨミはアルベルトとなら力ずくで押しきれると考えていた。


「グギャャャァァァァ!!」

「剣を地面に……!? 跳べ!!」

「足場を!?」


 剣が地面に刺さった瞬間に雷が轟き広がっていた。アルベルトの上げた声に、ヨミはジャンプしてかわしたが……アルベルトは雷豪風塵鬼との距離が近かったのもあり、足が雷に絡まれてしまう。


「ッ、ダメージは無いが、『鈍足』を喰らった!」

「まだ雷が足場に……ハッ!」


 着地したくても、まだ足場に雷が轟いており、降りた瞬間にアルベルトのように『鈍足』の状態異常を貰ってしまうだろう。だから、日傘の隠し刃を投げて足場を作り出した。

 柄に着地し、雷は来てないか確認したが、絡み付いて来なかった。


「チッ! まだ何かをするつもりだ!」

「次は風で……竜巻を放つつもりね!」


 今度は剣を抜き、最後の足掻きと言うように、4本の竜巻を生み出した。地面に降りられないヨミに竜巻をかわす事なんて出来ない。なら、迎撃するしかない。


「アルベルト! 2本の竜巻を任せられる!?」

「2本なら、問題ない!」


 アルベルトは『鈍足』があるが、全く動けない訳でもない。


「『精霊武装』!」


「ドルマ、行くわよ!」


 アルベルトはクラウ・ソラスを抜き、ヨミはドルマに本来の姿に戻って貰い、溜められるだけの威力を持った『夜天月斬』を放つ。

 ヨミの『夜天月斬』は相殺までは行かなかったが、軌道を逸らすことは出来た。アルベルトの方は『鈍足』で動きにくくなっているが、迎撃ならこの場に縛られても問題はなかったようで2本の竜巻を力ずくで無理矢理に相殺していた。


 しかし、雷豪風塵鬼は竜巻で仕留められるとは思っていなかったようで、雷の鎧に切り替えて迎撃したアルベルトに向かっていた。


「ウガァァァァァ!!」

「グッ、ォォォォォォーー!!」


 アルベルトは真正面から受け止め、防ぐが力は雷豪風塵鬼の方が上で、少しずつ押されていた。勿論、アルベルトは力で勝とうとするつもりはなく…………




「今だ!」




 雷の鎧を纏う雷豪風塵鬼の動きを止める為だけに、アルベルトは真正面から受け止めたのだ。動きを止めた後はヨミにトドメを刺してもらう為にーーーー




「この一撃で終わらせるわ。『黒月牙突』!」




 一点の突き、雷豪風塵鬼のこめかみへ向けて放たれた。




「ギガァ!? ギィィアァァァーー」




 今ここ、この叫びを最後に中ボスの鬼は膝から崩れ落ちていく。


 ヨミとアルベルトのタッグは無事に中ボスを討伐することが出来たのだったーーーー





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る