第145話 司教
司教を含めた、教会にいる人々がヨミへ向けて頭を下げる。普通ならこんな状況に合う人はなかなかいないだろう。だが、その原因がわかったヨミは溜め息を吐き、言葉を発する。
「皆さん、頭を上げてください。友達が困惑していますので」
「了解しました」
司教が了承した同時に皆が頭を上げる。ヨミはもう1つの願いを伝える。
「今後は普通に接して下さい」
「しかし……」
「これが私の為になるからです。他のプレイヤー達に見られたら、面倒です」
「……わかりました。私の考えが足らず、申し訳ありません」
「いいわ。で、どうしてわかったか教えてくれるかしら?」
司教、シスターまでもヨミが『女神イルミナの寵愛』という称号を持っていることを知ったのか? 知っていなければ、「司教が神に愛され者よ」とは言わないだろう。
「我が神からの御言葉が降りてきました。ヨミ様とネヴィルア様に御目を掛けられている等と……」
「成る程ね」
多分、神に仕えている者は何らの繋がりがあるのだろう。それで、ヨミのことを知ったと。
「……ヨミ、新しい情報を」
「うーん、この情報はまだ広めるつもりはないわね。何せ、まだ2人しかいないし」
「……わかった。教えていいと思ったら、私に聞かせて」
まだ教えられないと言うと、ハーミンは素直に引き下がった。
「まぁ、今はクエストのことで来たからその詳細を聞きたいのだけど?」
「……司教、私が受けたクエストの説明をお願い出来る?」
「わかりました。そのクエストは『図書館からの邪なる気配』ですね。最近、司書が図書館から嫌な気配を感じると言っており、神官を何人か送りましたが……」
「何もわからなかったと?」
「はい。夜になってからも調べてみましたが何も感じませんでした」
「……何か特殊な条件があったと考えているけど、司書だけが感じ取れる理由がわからない」
「職業とかだったら、お手上げだけど……」
司書という職業だけが感じ取れるとなれば、クエストを受けてもクリアは出来ない。それだったら、クエストを受けることは出来ない筈だ。しかし、ハーミンが受けられたことから、クリアへの道筋が必ずある筈だ。
「夜には何も起きなかったよね? その時は神官だけで?」
「いえ、その時は依頼された司書の方も一緒でした。しかし、その夜は何故か司書も何も感じなかったと」
神官がいた時は何も感じなかった?
「ねぇ、邪なる気配を感じた時って、司書が1人で動いていた時だけ?」
「いえ、同僚と一緒にいた時も感じたと」
それって、神官の職業が駄目ってことかしら? それか、神官と言えば邪なる者の弱点である光魔法を持っているからとか……
ヨミはハーミンを見た。ハーミンはプレイヤーであり、夜の図書館には入れない。そこから考えてみると、条件がわかってくる。
「もしかして、神官か光魔法が駄目で司書と一緒でも何も感じなかったかも。ハーミンが調べても何もわからなかったのは、夜じゃなかった。それに、司書の同行も必要じゃないかしら?」
「……多分、そうかも」
ハーミンもヨミの意見に同意する。
「まず、私達が夜の図書館に入れないと意味がないけどね」
「……司書も一緒となると厳しくなる」
「それでしたら、私が繋ぎになりましょうか?」
NPCの司教からクエストが発生しました。司書と同行し、邪なる気配と言う原因を調べてくる。もしくは解決をする。
解決すれば、報酬が増えます。
クエストを受けますか?
これで、司書と同行出来るようになるのね。
「……クエスト内容が変わっていた」
「勿論、受けるわよね?」
「……うん」
ハーミンも同じようなクエストに更新されていた。ヨミとハーミンはyesを選び、クエストを受理した。
「ありがとうございます。では、今夜にやりますか?」
「今夜、あと1時間で夜になるわね」
「……大丈夫」
現実との時間の進みが違うので、ゲーム内での今夜とは大体1時間ぐらいになる。ヨミとハーミンは了承を出し、1時間は準備時間に充てるのだったーーーー
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