第140話 今後の指針



 イベントの翌日。



 『銀月の使者』のメンバー、全員が会議室に集まっていた。集めたのは勿論…………


「悪いね、急に集まって貰って」

「なぁに、ギルド長からの召集だ。予定が重ならない限りは集まるだろうな」

「そうだね♪ ヨミちゃんが集めるとなれば、面白そうなことがありそうじゃない?」

「確かにな」


 カロナの言葉に皆が同意するように頷く。


「面白そうなことね、今回はちょっと皆が想像しているようなことじゃないかもね。まぁ、先に紹介することがあるのだけれども……」

「そこに座っていれば、誰でもわかっているさ。戦闘前に話していた内容も聞いていたからな」


 ここにいるのは『銀月の使者』のメンバーだけ。だが、見慣れない者が座っていることに皆は気付いている。だが、ここにいる理由はヨミが言葉にしなくてもわかっていた。


「あら、自己紹介は必要ない?」

「……ネヴィルア。ネルでも好きに呼んでいい」


 12個目の椅子に座っていたのは、決勝戦で戦ったネヴィルアだ。戦闘前にヨミが誘ったことにより、ネヴィルアがこの場にいる。

 ネヴィルアはヨミに見せたような笑みを浮かべることもなく、無表情で挨拶をする。短い挨拶だが、こういう人だと決勝戦で理解しているので追求する者はいない。


「仲良くね。では、本題に入るわね」

「やはり、あのことか?」

「流石にわかるよね。ダンジョンのことよ」


 イベント中に魔王が生み出したことになっているダンジョンのことだ。告知を出した運営が関わっているのはわかっているが、魔王が出現させたことになっている。

 ダンジョンはフィールドごとに1つずつ出現しており、初心者、中級者、上級者とわかりやすく分かれている。簡単に言えば…………



 初心者 レベル10~20


 中級者 レベル20~30


 上級者 レベル30以上



 というように、適正レベルで対応されている。魔王……運営からのメッセージで、レベルを上げて先へ進めということだろう。

 今、ヨミ達や最前線クラスのプレイヤーは第3のフィールドへ進めているが、第2の大ボスがレベル35だったことから第3の大ボスは今のレベルでは何も出来ないぐらいの差があるのだろう。




 そこで、悪役を楽しむプレイヤー達であるヨミ達はこれからの指針を決めようとしていた。


「私は皆の意見を聞いてみたいよね。ダンジョンと言うオモチャが出来た。で、何をしたいかしら?」


 今まではヨミが考えた案を提示してきたが、今回は皆の意見を聞いてみたいと思ったのだ。


「俺達に聞くのな。ふむ……ダンジョンにむらがるプレイヤー達を頂くしか思い付かんな」

「ダンジョンが餌になるね♪ でも、人数の差がキツイよね♪」

「えぇと……中に入って待ち伏せとかですか?」

「でもな、間違いなく俺達を恨んでいる奴等が待ち伏せしてくるぞ?」

「普通にやっていては、ただのPKのと変わらないよね。それじゃ、マミ達の出番がないわよ」

「あるかわかりませんが、ダンジョンを乗っ取ってダンジョンマスターになるか……」

「いや、そんな機能はないみたいだぞ」

「……ないかな。普通にダンジョンを楽しむとか?」

「ふむふむ、色々と考えてくれるわね」


 ヨミは様々な意見を聞き、笑顔を浮かべるが…………どれも普通で面白味がないと思っていた。


「ヨミ、なんか物足りなそうだな?」

「あら? 顔に出ていたかしら?」

「いや、なんとなくな?」

「長い付き合いがあるアタシ達だからわかるわよ」

「僕にもわかりましたよ」


 ジュン達にはわかっていたようだ。ジュンの言うとおり、物足りないと感じていた。その原因はーーーー


「やっぱり、私にしたらダンジョンは魅力的じゃないよねぇ」

「おいおい、運営の奴等が聞いたら泣くぞ?」

「まだ入ってもいないのに、何を言っている? と思われそうだけど、典型的過ぎて物足りないわ」

「……何か考えがあるの?」

「えぇ、私はダンジョンをオモチャと言ったけど、それよりもそそる宝石箱があるよね」

「……?」

「宝石箱? 何かあったか?」


 宝石箱と例えたが、それが何かのか全員は思い付かなかった。




「……うひ、あるじゃない。宝石箱と言うーーーー」






 王城よ。






「「「「「…………はぁ!?」」」」」


 ヨミの言う王城とは、アドル王国の中心にある王城のことだ。




「つまり、ダンジョンなんて無視。私達で王城を落とそうじゃない? うひひひひひぃぃぃ!!」







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る