第134話 第3回イベント 決勝戦



 ヨミは驚いていた。勿論、ジュンが瞬殺されたことにではない。今、ネヴィルアが使った魔法…………




 陽光魔法か、月光魔法と関わりがありそうな魔法じゃない。もしかしてね…………


 考察をするが、情報が少なすぎるから推測してみたことを確定させることは出来ない。


「まぁ、次の相手だし、駄目元で話をしてみようかしら」


 ヨミの頭には負けたジュンのことは1%も残っておらず、次の相手であるネヴィルアのことばかりだった。ネヴィルアの戦い方から人形の使役、陽光魔法しか得ることはなく、未知な部分もあるがアルベルト並の強者である可能性も考えなければならないだろう。





『さぁ、決勝戦が始まります!』




 あ、そろそろね。うひ、ここまで来たからには優勝をしたいわね。


 ヨミは仮面を被り、舞台へ転移する。







 観客のボルテージが上がって行く中で、応援をする者は……やはり、ネヴィルアの方が多い。理由はわかりきっていた。ヨミはレッドで、更に先程で街に被害を出したからだ。罵倒と言う程ではないが、ネヴィルアにヨミを倒せと圧力を掛けるような言葉も聞こえてくる。しかし…………




「……ようやく、話せるね」




 なんと、ジュンの会話にも応じなかったネヴィルアから話し掛けてきた。ニターと下手な笑顔を浮かべて、友好的に話し掛けられ、ヨミは仮面で見えなくなっているが表情は驚愕の一面を浮かべていた。


「え、ええと……」

「……どうしたの?」


 下手な笑顔からきょとんとした表情に変わり、ヨミはネヴィルアが何を考えているかわからなかった。だが、会話を望んでいるのは読めたので、話をすることに。


「いえ、驚いていただけよ。わかっているけど、私は周りから嫌われているぐらいに悪い人なのよ。なのに、笑顔を向けられるとは思わなかったわよ……ちょっと変な笑みだったけど」

「……笑みは苦手だから気にしないで欲しい。周りはうるさいけど、私は貴女のことは嫌いじゃないよ。だから、話をしたいと思ったの」

「ますます、わからないわね……でも、話をしたいのは私も同じよ」


 会話をしてくれるとわかり、また下手な笑みを浮かべて人形を抱く手に力が入ったように見えた。

 今更だが、ネヴィルアはヨミより少しだけ背が高いぐらいでマミと同じで中学生ではないかと思うぐらいに子供らしさがあった。


「……ヨミと呼んでいい?」

「いいけど……」

『あ、あの……友好的にしている所にゴメンだけど……これから決勝戦だよ!?』


 これから戦うような雰囲気を感じず、友好的に会話をしていたからか、クイナが慌てて割り込んできたが…………


「……うん、ヨミと呼ぶね。私はネヴィルア……なんなら、ネルでいいよ」

『無視!?』


 ネヴィルアはクイナの言葉を聞いておらず、無視された形になっていた。可哀想だと思ったがヨミも会話をしたいので、先に断りを入れておく。


「あー、司会? ごめんね。少しだけ会話する時間を頂戴」

『えぇー』

「そうね、観客にも面白い話になると思うわよ」


 まだ戦いを始めなくても、観客を待たせるようなことにはならないと言っておく。ハテナを浮かべるクイナだったが、ヨミは既にネヴィルアへ向き合っていた。


「それで、話をしたいのね? 想像は出来るけどなんでか、聞いてもいいかしら?」

「……うん、ヨミはネルと同じだよね? 神様に気に入られた存在のこと」

「やっぱり」


 ヨミが想像していた通りだった。ネヴィルアが言う神様のことは…………イルミナのことだ。


「陽光魔法は月光魔法と関わりがある魔法で間違いはないわね」

「……うん、神様に気に入られた同士なの!」


 2人の会話で会場に喧騒が響き渡った。ヨミとネヴィルアが使っていた聞いたこともない魔法が特殊な魔法であり、神様に関係があるとわかったからだろう。2人は周りの観客を無視して、話を続ける。


「つまり……あの称号を持っているのね」

「……うん、反則レベルの性能だよね。でも、このゲームが更に楽しくなったからラッキーだと思うよ」

「それは同意するわ」


 あの称号、『女神イルミナの寵愛』を貰ってから出来ることが増えて、周りとの差を更に付けられるようになったし、月光魔法と言う特別な魔法を手に入れた。それが楽しくならない訳がない。


「……やっぱり! この決勝戦が終わったら勝ち負け関係なくフレンドになってくれない?」

「構わないわよ。なんなら、ネルがレッドやイエローに対する嫌悪感がないなら、私のギルドに入る?」

「……え、良いんですか! 入る!」

『ストップぅぅぅ!! 決勝戦には関係ないことは後にして下さいよ!?』

「……まぁ、そろそろ戦う?」

「……楽しみ。どっちが強いか知りたい。本気で来てね?」

「うひ、安心しなさい。優勝を狙っているから本気で行くわ」


 会話が終わり、ヨミとネヴィルアはお互いが距離を取り始めた。友好的になったが、戦いでは手を抜くことはない。今はどっちが強いか決める。




『ようやく、始められる……スタート!』




 グダグダな開始になった決勝戦。クイナの合図により、お互いが動き始めるーーーー








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