第98話 リベンジ



 新職業を選択し終わったヨミはまだ仮面を被ったまま、森をさ迷っていた所にーーーー




 横から光の放流が襲ってきた。


「ッ!」


 キッカの『自動防御』が働き、ヨミを光の放流から守った。だいぶ、耐久力を削られたが新しく手に入れた『風防壁』で遠距離攻撃の威力が削れたのでキッカは一撃で消し飛ぶことはなかった。


「防がれました!」

「充分だ。あれは生きた防具……いや、テイムしたモンスターだ。そうだろ?」

「久しぶりだな。この前のリベンジをしに来たぜ!」

「倒して、アレを返して貰うわよ!」

「今も持っているかわからないがな。まぁ、この前は奇襲でやられたから仕返しをして貰ったよ」

「貴方達は……」


 突然に現れたパーティ、ヨミは見覚えがあった。




 そう、このパーティは『もののふサークル』でヨミがイエローだった頃に倒したパーティであった。






《『もののふサークル』ファイマ視点》



 見つけた。この前の借りを返させて貰うぞ!


 リーダーの剣士であるファイマは大剣を構えて、パーティ仲間である大盾使いのロブスタは神官のマオと魔術師のアドラスを守るように動く。盗賊のミアは遊撃として動く予定なので、4人から離れた場所で仮面ちゃんを睨んでいた。

 そして、その仮面ちゃんが話し掛けてきた。


「あら、なんでテイムモンスターだとわかったのかしら?」

「……同じ使い方をする人がいただけだ」

「ふぅん……貴女なのね」


 やはり、わかっていて聞いたようだ。何せ、こっちは向こうのと違って目立つからな。


 仮面ちゃんと同じ使い方をしているのが、神官兼魔物使いであるマオがモンスターを装備しているからだ。マオの神官服に浮いている羽衣を装備しており、その羽衣がキッカと同じモンメの派生であるモンスターなのだ。

 そこからヒントを得て、防具だけではなく武器までもテイムしたモンスターであることも見破っている。


「……うひっ、その様子から『武具化』もバレていそうね。先程の攻撃、神官の『レイ』の上位魔法、『ホーリーレイ』かな。私のキッカはアンデッド族だからダメージは多いけど、スキルである程度は減少しているけど、思ったより削られたからその羽衣が強化したのかしら」


 俺が思っていた以上に仮面ちゃんは頭が良く、観察力が高いようだな。PSが高いからわかっていたことだ。だから……マオ、そんなに慌てるなよ。


 仮面ちゃんが話した通りで、マオの羽衣のモンスターは光属性の支援に特化しており、攻撃力が低い神官でも支援を受けた『ホーリーレイ』は防御力が低いプレイヤーを葬れる程だ。

 ファイマはそれ以上に時間を与えるのは不味いと考え、話を終わらせようとする。


「案外とお喋りなんだな。さっさとやるぞ」

「あら、急ぐ男性はモテないわよ?」

「そんなことはどうでもいいのよ! さっさとやられなさいよ!」


 ミアが戦況を動かした。数本の投げナイフを投擲し、仮面ちゃんもナイフを投擲して相殺していた。


「嫌になるPSだな。『サンダーボルト』!」

「『ホーリーレイ』!」

「魔法で押しきれると思わないことね。『乱月光波』」


 2人の魔法を1つの魔法で相殺……いや、仮面ちゃんの魔法が少し勝っていた。相殺しきれなかった分がマオとアドラスに向かうが……


「畜生! 2人の魔法が1人の魔法に負けるのかよ!?」


 大盾で防ぐが、ロブスタの体力が四分の一も削られてしまう。


「やっぱり、一筋縄(ひとすじなわ)ではいかないか! ミア、行くぞ!」

「え、ええ!」

「次は接近戦で来るのね。相手をしてあげる」


 仮面ちゃんは5人が相手でも余裕を持って、刀型のモンスターを持って向かってくる。今のドルマはカナタムの姿になっており、もののふサークルは気付いていない。今のドルマを正面から相手にしては駄目なことにーーーー


「うらぁーーなっ!?」

「アンタの大剣が耐久力を削られているわよ!?」

「うひひひひひ!!」


 ファイマが攻撃して、仮面ちゃんはドルマで防いでいるだけなのに、ファイマの大剣だけが凄い勢いで耐久力がガンガンと削られていた。








 剣としての攻撃力に圧倒的な差があったのも関係しているが、もう1つの原因があった。先程、新職業のスキルで『虚脱弱』があったのを覚えているだろうか。その効果がーーーー



『虚脱弱』 MP100

 発動してから1分間、相手の装備に触れただけで耐久力を大幅に削ることが出来る。(クールタイムが10分間発生する)



 このスキルはファイマとミアが来る前に発動しており、剣を打ち合うだけで大幅に耐久力を削られている訳だ。



「っ、今だ!」

「? ッ!?」


 まだファイマと剣を打ち合っているのに、アドラスから巻き込むとわかる程の威力を持った魔法が撃ち出された。

 相討ち覚悟なのかと思ったら、ファイマの身体が光りだした。後ろでマオが何か魔法を発動しており、防御魔法だとヨミは見破っていた。


「成る程ね! 『夜天月斬』!」

「ぐぅ!」


 力で押し付けるファイマを吹き飛ばし、『夜天月斬』で魔法の威力を削ぎ、キッカで防ごうとしたが……


「『拘束』!」

「なっ!?」


 吹き飛ばされたファイマの影から現れたミアが鎖を投げて、防御しようとしたキッカが拘束され、地面に引きずり落とされてしまう。これでは、ヨミを守るモノがないという状況になってしまう。





《『もののふサークル』ファイマ視点》


 防御の要はあのモンスターだ! あれを仮面ちゃんから引き離せば、防御力が下がっている状態の筈!


 装備の1つになっているテイムモンスターが身体から離れると防御力が下がるのはマオが体験していることで検証もしていた。だから、今の仮面ちゃんはほぼ無防備に近い状態で、威力が削がれているといえ、高いINTのアドラスが放った魔法で落ちると考えていた。

 防ぐつもりだった仮面ちゃんは避けようと動いても間に合わない所まで魔法が迫っている。


「ーーーーーー」


 仮面ちゃんが何かを叫んだが、魔法が当たったのを確認出来た時は勝ったと思った。ファイマは内心でガッツポーズをする程に。他の仲間も勝ったと思い、笑顔を浮かべていた。






 ーーーーそれが、地獄への始まりだと知らずに…………





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