第73話 喉かな朝



 中ボスを倒したヨミは街へ戻された瞬間にログアウトしていた。流石に疲れたのもあるが……ジュンに絡まれるとわかっていたからだ。


『うおいっ!』


 後から電話で文句を言われた。口にした通り、今度にビールを奢ると約束して許して貰った。






 次の日、起きたら公式サイトで1週間後にギルドホームが作れるようになると宣伝されていた。


 ギルドね……、色々と準備をしないとね。


 ギルドホームといえば、お金が掛かる代物なので、しばらくはお金を集め続ける必要はあるだろう。良いクエストがあったら良いなと思いつつ、朝御飯の準備をしようとしたらメリッサ……鳴海から電話が来た。


『朝御飯、まだ食べていないならカフェへ行かない? なんなら、奢るわよ?』

『お、珍しいね。いいわよ』


 朝御飯を一緒に食べるのは久しぶりだ。何の用があるのか聞いてみたが、普通に朝御飯を誘っただけらしい。

 待ち合わせのカフェを決めて、外出の準備をする。





「おはよー」

「来てくれてありがとうね」

「奢って貰うし、ありがとうはこっちだよー」


 今日は平日だが、仕事がないからかスーツの姿じゃなかった。カフェのオススメを注文し、会話を始める。


「私服とか珍しいね。仕事はないの?」

「今日は有給を取っているわ。溜まっているからここら辺で使ってくれと上司から言われていてね」

「ホワイト!」

「い、いや……私の会社は普通だから。そっちの会社がブラック過ぎただけよ?」


 美世がいた会社では自由に有給を取れなかったし、鳴海のように上司から言われることなんてあり得ないことだ。


「会社の話は止めよ? そういえば、『イルミナ世界』の公式サイトを見たかしら?」

「見たわ。ギルドホームが出来るようになるでしょ。まずはお金を貯めないとね!」

「お金はいいとして、私達はともかく……誰か誘う予定はあるかしら?」

「そのことについて、考えがあるから皆がいる時に話すでいいかな? 1週間後に皆を集めるつもりだったし」


 ギルドホームの宣伝があってから、美世はある計画を立てていた。それは皆の協力が必要なので、先だって進めるのは出来ないが……


「今はお金集めやレベル上げに集中して貰えるとありがたいわね」

「そうね、わかったわ……いつ、イエローに上げればいいかしら?」

「ん、もしかして……」

「良くわかるわね。そう、累が見つけたわ!」

「見つけたのね!!」


 累が見つけたのは、ネームの色を誤魔化す薬のことだ。イエローにしか効果はないが、鳴海が自由に動く為に必要な物だ。


「数は充分に集まっているなら、私にも幾つか貰えないかな?」

「え、美世には必要ない物じゃないの?」

「アルティスの仮面があるから必要はないけど、別のことに使うから」

「ふぅん? あとで累に連絡しておくわね」


 まだ詳しい説明をして貰っていないが、美世がやることに鳴海は説明を求めずに好きにさせると決めている。


「あ、朝御飯が来たわ」

「美味しそうなパンケーキね!」


 穏やかな朝にパンケーキを美味しく食べる美世。









 鳴海と別れて、真っ直ぐ家に帰った美世はすぐログインした。お金を集める為に冒険者ギルドに向かって高額クエストをやろうと思った先にーーーー


「え、メール? …………あら、ルファスから?」


 この前、出会った貴族のルファス男爵からのメールだった。内容を読んでいき…………口元が吊り上がる。




 面白そうね。報酬も良いし、受けようかしら。




 ヨミを指定した、貴族からの依頼だった。報酬も今の状況から嬉しい物だったので受けることにしたーーーー









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