第68話 意識の違い
サテバウムを倒して、マリーナの街へ行けるようになったマミだが、ヨミにすぐ街へ行くのを止められる。
「え、今は行っては駄目なんですか?」
「こっちの都合になっちゃうけど、マリーナの街では特殊イベントが起こっているの。まだ終わっていないから、街へ行く前に近くで採集でもしない?」
「あ、知っていますが……ヨミちゃんは参加しないのですか?」
特殊イベントなら、とても良い報酬が出そうなのに参加しないことに疑問を持っていた。その質問に苦笑しながら答える。
「まぁ、まだアルベルト達の前で目立ちたくないだけよ」
「そうですか。わかりました、採集をしている間は守ってくれるなら構いませんよ」
マミは素直でヨミが参加しない理由をあっさりと信じて、新たな素材を手に入るチャンスに目を輝かせていた。
本当に良い子なんだよね。この状況が私のせいだと知ったらどう思うかしら?
特殊イベントと聞けば、ゲームだと納得するかもしれないが、実際は宗教戦争で人同士に殺し合いをしているだけなのだ。醜い戦いをするようにと仕向けたのがこのヨミだと知ったら、マミは軽蔑するのだろうか。
とにかく、まだ中学生であるマミには見せようとは思わなかったから採集をしようと言ったのだ。
いつか、人が人を殺す所を見るかもしれないけど、最初が戦争でとかは可哀想だよね。
「ヨミちゃん! あっちに沢山の採集ポイントがありそうです!」
「ふふっ、慌てなくても逃げないわよ」
楽しそうに採集ポイントへ向かうマミに優しい目で着いていくーーーー
「……あらあら、貴方達は盗賊かしら?」
ヨミとマミは5人の男に囲まれていた。名前の所に盗賊と出ていたので、プレイヤーではなくNPC……いや、盗賊だとモンスター扱いになる。
「うはははっ! 子供2人だけじゃ、ここら辺は危ないぞ?」
「優しいおじさんが着いていってやろうか?」
「「「そうだそうだ」」」
「ふぅん、ここの盗賊は喋れるのね……」
「よ、ヨミちゃん? だ、大丈夫?」
「大丈夫よ。知っていると思うけど、盗賊はモンスター扱いなの。だから、倒さなければならないの」
「俺らをモンスター扱いだと? 生意気なことを言う子供だな!?」
「子供子供と……うるさいわね」
もう話すことはないのでドルマを呼び出して、リーダーっぽい男の首を斬り落とす。
「なっ、リーダーを!?」
「マミ、頭を伏せていなさい」
「は、はい!」
マミは言われた通りに頭を……いや、身体ごと地に伏せていた。
「そこまで伏せなくてもいいけど……『夜天月斬』!」
「うごぁ!?」
「がぁっ!?」
「ごぶぅ!?」
一気に後ろにいた3人を纏めて斬り伏せる。レベルは10~13程度だったので一撃だった。
「な、なんだ! 貴様は!?」
「『パワースラッシュ』」
ヨミは耳を貸さずに頭を叩き潰した。わざわざ、スキルを使って1番グロそうな殺し方を選んだのは…………
「はぇ?」
「終わりましたよ」
マミにヨミが人を殺している所を見せる為にだ。闇商人をしてくれるとはいえ、今回のように一緒にパーティを組むこともあるし、その時にプレイヤーやNPCをPKする可能性もある。もし、殺人に拒否感を浮かべるなら付き合いを考える必要がある。ある意味、これはテストだ。
たまたま人間の盗賊に会ったし、試してみたけど反応はどうかしらーーーー
「す、凄いです! あっさりと5人を倒しちゃうなんて!!」
「……あれぇ?」
思っていた反応が違っていたことに首を傾けてしまう。
「えっと、私はモンスターといえ、人間を殺したわよ? 最後はグロい殺し方になったけど……」
「え、グロい殺し方? グロいですか……?」
「ん、んん??」
あれ、おかしいなと思い、どんな風に見えていたのかと聞いてみたら、最後は真っ二つになって光の粒になって消えていたと。それで、ヨミはあることを忘れていたことに気付いた。
そうだった、まだ中学生だからフィルターが掛かっているんだったわ。
残酷な描写に対してのフィルターが掛かっていないヨミから見ると、頭を潰されて血が弾ける描写だが、マミの視点だと斬られても血は全く出てなくて、ポリゴンになっていくだけなのだ。
「……あー、これは私のミスだったわね」
「え、何か言いました?」
「いえ、なんでもないわ」
ヨミは理解した。この前からわかっていたことだが、マミは人間が死んでもゲームだからと殺人に対しての拒否感が薄い。残酷な描写に対してのフィルターが助力しているのもあり、ヨミがどんどんと知らないNPCを殺してもポリゴンになって消えたなーとしか思わないだろう。
仲良くなったNPCが殺されたとかショッキングな経験をしないと考えは変わらなそうね。まぁ、わざわざやる必要はないけど。
テストは失敗したが、今の時点ではマミを闇商人として使うことには問題はないとわかっただけでも良しとする。
「ほら、採集ポイントがあるわよ?」
「あ、取ってきます! あとで、ヨミちゃんが欲しい物があったら、分けてあげますね!」
たまには普通に冒険者みたいなことをしてもいいかぁ……と楽しそうにするマミを見て思うのだったーーーー
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