第67話 武技之型と月光魔法
「さぁ、またやろうぜ! マミは隅っこで大人しくしていなさい!」
「はいぃぃぃぃぃ」
ヨミとマミは大ボスのサテバウムと相対していた。本気で戦う為にマミを下がらせて、アルティスの仮面を被る。
「ふえっ!? ヨミちゃんの姿が!?」
「そういえば、まだ見せていなかったわね。この姿がPKをする時のスタイルよ」
説明はこのくらいにして、ウイルスのガスを吐き出すサテバウムに集中する。
「新しい技は使えるかしらね?」
ヨミはジュンへ会いに行く前に新しく手に入れた『武技之型』で1つの武技を作り出していた。ドルマは剣と刀、両方の素質を持っており、一時間ぐらい考えた結果、ある漫画からパクることにした。
名前をそのままにした時は却下されたけど、内容は刃を飛ばすというシンプルさで即決された。ある漫画の主人公、黒◯一護が使う必殺技で…………
「ます、ガスを吹き飛ばしてあげる。 一之型『夜天月斬(やてんげつざん)』!」
魔法みたいにカタカナに嵌めたかったが、ヨミは厨二に掛かったことはないので思い付かなかった。しかし、平仮名でもかっこ良く叫べるように考えたのだ!
夜天月斬は黒い月牙◯衝のまんまである。ガスに向かって飛ぶ黒い刃はガスを吹き飛ばしながらそのまま、サテバウムに当たる。
「……!?」
「そらそらぁ!!」
一回だけに留まらず、夜天月斬を放ち続ける。夜天月斬に掛かるMP消費量は30と少なく、斬撃自体の威力はSTRの高さに左右されるので結構使いやすい技だ。しかし、デメリットもある。
「やっぱり、攻撃が軽いわね」
「え、どういうことですか?」
声が聞こえていたマミが疑問を漏らしていた。斬撃の攻撃が軽いと言われても意味がわからなかったのだ。
「のけぞる……ノックバックはわかるかしら?」
「あ、わかりますが……もしかして、ノックバックが起きていない?」
「正解よ。サテバウムは動かないから分かりにくいけどね」
どんな攻撃にもあるはずのノックバックが夜天月斬にはなかった。当たれば、ダメージは受けるが衝撃は起きていない。つまり、距離を取りたいと思っても夜天月斬では適しないということだ。
「まぁ、ノックバックがなくても問題ないけどね」
「それはーー」
どういうことですか? と言う前に、ヨミの持つドルマに変化があり、言葉が止まってしまう。ドルマに纏う闇が大きくなっていたのだ。
「5秒溜めれば……『夜天月斬』!」
今までは三日月の形に飛んでいったが、今回は三日月その物が回転し、刃も大きくなっていた。
「!?!?」
「根っこぐらいなら簡単に斬り落とせるわ!」
「す、凄い威力です! 体力が結構減りましたよ!?」
根っこだけに留まらず、本体を斬り裂いて体力バーもグンと減った。夜天月斬は衝撃が発生しないが、今のように威力が高ければダメージが増えて痛みで生物なら脚を止めるだろう。
ちなみに、夜天月斬の効果はこうなっている。
『夜天月斬(やてんげつざん)』 MP30
黒い斬撃を放つ。衝撃は発生しないため、ノックバックの効果は無し。その代わり、クールタイムは0になる。
5秒間、溜めることで威力増大する。(クールタイムが10秒間発生する)
5秒間溜めて、放つとその後に10秒間のクールタイムが発生するが、MP消費量は変わらない。漫画の技を参考にしたが、思ったより使えることに口元が吊り上がる。
「おっと、そろそろ魔封の叫びが来るわね」
夜天月斬の連撃であっさりと2本を削り、もうすぐでバーの半分に辿り着く所だ。半分を切ったら、スキルを封印する叫びが来るので、もし月光魔法を封じ込められたら試せないので……
「MPは……うん、ぎりぎりあるね。使わせて貰うわ」
攻撃範囲へ入るように、襲ってくる根っこを避けながら本体へ近付いていく。攻撃範囲へ入ったのと同時にドルマを持たない手を突き出す。
「月光魔法、『乱月光波(ムーンシャイン)』」
手から蒼白い光が発光したかと思えば、瞬間に光の暴力が起きた。
ドバァァァーーン!!
初めて放ったヨミも驚く程だった。光を正面から受けたサテバウムは身体にあった弱点の複数の赤い斑点にも喰らったからか、残っていた体力バーがグングンと減った。
ーーそして、最後のバーも吹き飛ばされ、サテバウムは光の粒になって消え去った。
サテバウムの体力を一撃で消し去ったヨミは…………
「やべぇ、オーバーキルだわ」
まだ序盤といえるとこで、この『月光魔法』はオーバーキル過ぎる。隅で観戦していたマミも口を大きく開けて呆気に取られるのだったーーーー
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