第65話 制限解放



 予測もしてなかった展開で呆気に取られたヨミだったが、深呼吸をして貰った魔法と称号の確認をする。


「月光魔法……魔法は使えないのだけれども? ……いえ、女神イルミナも運営側なら、プレイヤーのステータスを見れてもおかしくはない筈。それでも、魔法を渡した?」


 なら、称号に何かあるのかと思い、先に称号の内容を確認する。まず、予想が出来る『イルミナ教の信者』と『ルルイエ教の敵』から。



『イルミナ教の信者』

 イルミナ教の教えを信じる者へ贈られる称号。イルミナ教である信者のNPCの好感度が上昇する。



『ルルイエ教の敵』

 ルルイエ教へ敵対した者へ贈られる称号。ルルイエ教である信者のNPCの好感度が下降する。



 この2つは分りやすく、誰にも修得は出来そうな称号だった。あと、『女神イルミナの寵愛』だが…………



『女神イルミナの寵愛』

 女神イルミナから寵愛を受けている者に贈られる称号。イルミナ教である信者のNPCの好感度が大幅に上昇する。

 女神の恵みにより、制限スキルが本来の姿へ戻るだけに留まらず、その上へ解放される。




「………えっ、制限スキルが解放?? 解除じゃなくて?」


 制限なら解除の言葉が良く使われるのだが、解放と書かれている。もしかして、変わっている? と思い、ステータスを確認したらーーーー


「ふえっ!?」


 可愛らしい言葉が出る程に、想像もしてなかったことが起きていた。元から持っていた制限スキルが…………



『武技(アーツ)不可』→『武技之型』

 武技を自由自在に作り出せるスキル。最初に武器に合わせたアーツをカスタムして、運営に申請することで新たなアーツが生まれる。(作成可否、発動条件、MP消費量は運営側にて決定される)

 作成出来る数はスキルレベルと同等とする。スキルレベルが上がるごとにATKの上昇値が増えていく。

 ATK+10%される。



『魔法不可』→『魔導極限』

 魔法の域を突破し、魔導へ成り上がる。このスキルにより、使える魔法の幅が広がる。特殊魔法クラスを使用可能になる。

 スキルレベルが上がるごとにMPとINTの上昇値が増えていく。

 MP+10%される。

 INT+10%される。




 たまげるわぁ……。色々な効果が付いているんだけど!?


 色々ありすぎて、混乱するがまだ確認していないモノがある。


「……スキルが変わったから『月光魔法』が使えるようになっているのね」


 そう、メインは『月光魔法』だ。最初に貰えるスキルには無かったし、あの女神イルミナから直接に与えられた魔法なのだ。もしかしたら、希少どころかワンオンリーの魔法なのかもしれない。

 その『月光魔法』の効果は…………



『月光魔法』

 特殊魔法クラス。女神イルミナに選ばれた者にしか使えない魔法。陽がある時間は通常威力、効果に対して、夜の間は威力と効果が2倍になる。


Lv1


『乱月光波(ムーンシャイン)』 MP300

 前方へ扇形状に月の光を放つ魔法。


『|月の癒し(ムーンメディア)』 MP500

 HP20%を回復し、持続回復が付加される。(3秒に1%回復し、1分間続く)



「つよっ……夜だと、『|月の癒し(ムーンメディア)』は40%も回復して、更に2倍になるから……全てを合わせると80%!?」


 発動して、1分後にはほぼ全快出来そうな回復量になるようだ。その分、MPの消費量は高いので使い所を考えなければならない。


「MPは……うん、レベルを上げれば問題はないかぁ。あと……あれ?」


 ステータスを見たら、おかしなことに気付いた。




 まだイエロー? 私はNPCを殺したんだよね?




 そう、名前がレッドではなくてイエローのままだった。バグなのかなとGM(ゲームマスター)に連絡してみた。









 あぁ、そういう仕組みなんだ。


 レッドにならなかった理由がわかった。レッドになる条件がNPCを殺すのは間違っていないが、それだけじゃなかった。

 レッドになる為には……犯罪者であることをNPCに認知されること。つまり、指名手配されないと駄目なのだ。


「ルルイエ教は邪教と呼ばれていたし、その聖女が殺されたと衛兵へ伝えることが出来る訳がないか」


 おそらく、イルミナ教の暗殺部隊と名乗ったのもあり、衛兵に頼らずにルルイエ教の信者だけでイルミナ教の教会へ突撃すると決めているのかもしれない。


 つまり、面倒なことをせずに直接に殺してやる! ということだろう。




「まぁ、レッドにならなかったのは残念だけど、やりたかったことは出来たし、いいかぁ」




 ヨミが事を起こした数時間後に、マリーナの街限定で特殊イベントが発生したのだった。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る