きどあい!
紙月三角
第1話
【事件だ!】
①
「たいへん、たいへん、たいへん……たーいーへーんだよーっ!」
私立
教員や風紀委員に見つかれば、即刻手厳しい説教が飛んできそうではあるが……幸いなことに、周囲には今、そういった人たちはいない。
②
廊下を歩いていたクラスメイトの
「え? ど、どうしたの……って……⁉」
③
ドンッ!
猛スピードで走る
「あ、
④
頭の上に無数の星やヒヨコのイメージを浮かべながら、
「も、もおーうっ!
――――――――――――――――――――
【四季部】
①
「「「えぇーっ⁉ 今度のテストで部員の平均点が60点以下なら、四季部が廃部ぅーっ⁉」」」
②
「ねぇー⁉ やっばいよねーっ⁉ あっははーっ! 60点とか、私、今までの人生で取ったことないよー⁉」
おそらく、この部で一番勉強が苦手なのは
しかし彼女は、いつもどおり楽しそうにそんなことを言う。
③
「ハルキ、笑い事じゃないネ! 廃部なんて、絶対ダメだからネ⁉ あんまりナメたこと言ってると……ぶっ殺すヨ⁉」
留学生のフューリー・ウィンターが、あまり意味を理解していなそうな片言の日本語で叫ぶ。きっと、漫画かアニメで見たセリフをそのまま言っているのだろう。
④
「え……困る……。この部がなくなったら……私はこれから、どこで昼寝すればいいの……?」
まるで、この世の終わりかと思うほどに悲しそうな顔でそう言ったあと、今も眠そうに大きなアクビをする
「いや……。寝るだけなら、どこでもいいでしょ……」
その隣で、この部で唯一の常識人担当の
――――――――――――――――――――
【試験対策】
①
「こうなったら、なんとしても平均60点以上取らないとぉー! そのためにはぁー……」
部長の
いや。顔は動かしているが、その視線は最初からたった一人に向けられている。
「え……?」
②
「はあ……。分かってる、私もできるだけ協力はするよ。でも、私だけ頑張ったってだめでしょ?
③
各自が、声を合わせて言う。
「「「……勉強会?」」」「カンニング?」
「え?」
だが……一人だけ、明らかに言葉が違う。
④
「もおーうっ! 冗談だよー! あはははーっ」
誰も何も言っていないのに、勝手に自白する
「は、はは……あはは……」
相変わらず、深いことを何も考えずに全力で楽しそうに笑う彼女に、圧倒されてしまう
――――――――――――――――――――
【勉強会……?】
①
の、はずだったが……。
「よぉーし、ちょっと休憩しよーっ!」
そういって、コントローラを置く
②
「
ゲームに負けてエキサイト気味のフューリーは、
「二人とも……ここに何しに来たと思ってるの……? ふわぁーあ……」
ベッドの上の
③
「はあ……」
彼女は、先輩からもらったらしい過去問のプリントやその紙片が、机の上に白紙のまま散らばっているの見て、特大のため息をつく。
④
「あ、ありがとぉーっ! ここからは、
そう言って、行儀悪くトレイの上のケーキを手づかみで口に放り込む
結局、勉強会はちっとも進んでいない。だが、この部のこういうゆるいところが嫌いではなかった
「……はいはい」
と、呆れ顔でつぶやくのだった。
――――――――――――――――――――
【決戦の日!】
①
試験当日。
「……うーん。……うううーん」
答案とにらめっこをしながら、小声でうなっている
②
隣の席の
(…………)
だが、自分とは違ってそうとう苦戦しているらしい
そんな彼女の気持ちが、通じたのか……。
③
④
「……うんっ!」
そして、その結果は……。
――――――――――――――――――――
【審判の日……】
①
四季部の部室で、机を取り囲んでいる四人。
互いに視線を合わせて、
「……せぇーのっ!」
一斉に、採点済みの答案用紙を机の上に出す。
②
フューリー……52点。
そして、
平均60点は……超えた。目標は、ギリギリで突破したのだ。
③
「や、や……やったぁーっ!」
「これって全部、
今回の点は、おそらく彼女にとって今までで最高の得点だ。努力が報われたことが、相当嬉しいのだろう。
④
「違うよ……。これは、
「ヒューヒュー」「もおうっ! 相変わらず熱々なんだから、この二人ワ! 嫉妬させるなヨっ!」
そんな
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