第34話 「暗殺未遂のあと」
「クラリス…なぜ、殺(や)らなかった」
「申し訳ございません。失敗しました」
ホーリーはため息をついた。あの場面で偽聖女をクラリスが殺害、その兵士は逮捕されるが脱走して姿を消す。それが今回のシナリオだった。それが失敗した。しかもクラリスは教会でも最強と言われる騎士、そんな彼女が失敗したのだ。
「どうした。お前らしくない。あの至近距離でしくじるとは、一体何があったんだ」
「それが…信じられないだろうが偽聖女を刺した時にオリハの爪が砕けてしまったのだ」
先端が砕けたオリハの爪を見たホーリーは蒼ざめた。オリハの爪、ミスリル合金の盾をも貫く武器、教会が偽聖女を確実に仕留める為に特別に用意したものだった。
「オ…オリハの爪が折れただと…」
「そうでなければ、殺(や)れていた。偽聖女はいったい何者なのだ」
「わからぬ。ただ、影の情報では偽聖女はミスリルの剣が通用しなかった。だから今回はオリハの爪を用意した」
「それは聞いている。しかし、あの女は、その爪すら砕いた。ということは本物の聖女なのでは」
「何を馬鹿なことを言っておる。それだけは認められない」
「それと偽聖女のステータスはどうなっている?」
「魔力 5 以外は、その辺にいる女性と変わらない」
ホーリーは、偽聖女のステータス記録をクラリスに見せると
「おかしい…ではあの時、何故私は彼女の力に負けたのだ?」
クラリスの体力はその辺の男よりもはるかにある。更に彼女は魔法で体力強化もできる。つまり、ごく普通の女性の体力では抑え込むことは絶対にありえないのだ。
「わからない。ただ、魔王の手先であるということであれば、魔力で押さえることができる」
「しかし、その魔力が5しかないのだろ。少なくとも力が発揮された時は、その数値が上がるはず」
「だからよくわからないのだ」
彼らは知らない。フリージアのステータスに全て兆という単位に100という数字があることを、つまり、魔力は100兆5なのだ。二人はしばらく相談をした。
「クラリスは隙を見てあいつを殺(や)ってくれ」
「わかった」
***
話は、王宮に戻る
「陛下、あれでよろしかったのでしょうか」
「あれでよい」
「しかし、聖女様の治療は凄かったですな~折れた足を一瞬で完治させるとは」
「うむ」
国王を除くここにいる者たちは知らない。知らされていない。この間の戦いでフリージアが死者を蘇らせたことを
王宮でそんな話がされている間、私は、一度、実家に戻ってから、マーリン様の家に向かっていた。もちろん、一般庶民が着るような服を着てなんだけど、そんな私を呼び止めた人物がいた。
「聖女様ですよね」
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