第20話 「今日の出来事」

因みにハイポーションを注射器でお尻にさすと、お尻が熱で真っ赤になる上、3倍くらいの大きさになる。実は、ハイポーションの効き目を一番貯蔵できるのがお尻なんだって、しかもお尻から体内を伝って、魔傷に直接効き目が行くとドクターワトソンが言っていた。


あと、真っ赤になったお尻はかなり熱を持っているので、暗闇でみると明るく光ってるんだって?本当なのかな?残念なことに私は見ることはできなかったんだけど、こうして、オリバーソースの治療は無事に済んだし、私は、聖女様ではなく、単なる治療師であることを意識づけたことになった。


ビンセント家に戻ったオリバーソースの姿を見た伯爵は、巨大になったお尻を見て愕然となった。


「な…なんだ…その尻は?」


「お義父様!!その…ハイポーションの注射を打たれまして」


「なぜ?尻がでかくなる?」


「それは…」


黙り込んだオリバーを見かねた。おつきの物が伯爵に耳打ちをした。


「ほう」


しかも、こいつが話を盛るのがうまい


「実は、あのフリージアとかいう娘は、単なる治療師でして、足に聖水を掛けるともう…オリバー様は悲鳴を上げまして、まるで子供のように叫んでいたんですよ」


「ほう…」


「極めつけは注射です。このくらい大きな注射器をお尻にぶちゅうと刺されて、”うぎゃあああ”と断末魔の叫びをあげまして、治療室の外の人たちもびっくりして中をのぞいてきたんですよ」


という話を聞かされた伯爵はこめかみに手をあて、しばらく、黙り込んだ。そして、作戦が失敗しことと、またしてもフリージアにしてやられてことへの悔しさがこみあげてきたのだった。


「今度こそ!!」


そんなこととはつゆ知らず、私は、エターナル平へ来ていた。もちろん、魔法の練習のために、今回はエナジーボールという技らしい、詳しく説明すると野球のボールくらいの大きさのエネルギーボールを作って、的に当てるというもののようなんだ。マーリン様は、手をかざすとポンポンと発射されていたのだった。


「いいか…フリージア。まずは、一つ作って的へ当てるのじゃぞ」


「はい」


『エナジーボール』


私の右手からポンと出来だエナジーボールは目標に向かってまっしぐら。すると、マーリン様が


『多重障壁!!』


そして、私が放ったエナジーボールが的に当たると轟音とともにきのこ雲ができた。そして、20キロ四方を吹き飛ばしていたのだった。


「・・・」


マーリン様はしばらく言葉を失っている。


「マーリン様?」


はっと我に帰ったマーリン様は


「フリージア…この技の禁止じゃ」


「はい…」


やはり、私は魔法に向いていないのかもしれない。



***


この日、治療室には珍しい客人がいらした。ローズマリー家のクラウス様。何の前触れもなく、一人やってこられた。


「今日は、どのようなご用件で?」


するとじっと私を睨んでいる。これは、困ったぞ。一体何を考えているのだろう。何も話してくれない。


「どこか具合は悪いのですか?」


「・・・」


弱ったぞ、本当にこの人は何をしに来たんだろう。


「あの~?」


コンコン


誰がドアをノックした。


「すみません。治療中ですので後にして頂けませんか」


するとガチャリとドアが開いた。そこにはポートランド家のレオン様の姿が見え、有無を言わさず部屋に入ってきた。そのことに気付いたクラウス様は、無言で立ち上がり、レオン様とすれ違った瞬間、手をつかまれていた。


「どこへ行く?」


「レオンには関係ないだろ」


一体、なんなんだろう?私は完全に無視されている。


「だったら、何故、こんなとこにいる?」


「だから~関係ないって言っているだろ」


「あの~?喧嘩なら外でしていただけないでしょうか?」


2人の視線が私に注がれた。するとクラウス様は、私を指さして叫んだ。


「それもこれもこいつのせいだ!!」


「はぁ~?」


私が驚いているとレオン様は、不敵な笑みを浮かべている。


「そうだな。全てはこいつのせいだよな」


やはり腹黒なレオン様、困っている顔を見て喜んでいるに違いない。はっきり言ってむかつく


「あの~次の人が待っていますので、用がないのでしたら、部屋から出て行ってもらえませんか?」


「何を言っているんだ?君は、君が原因でクラウスがこんなことになっているんだぞ!!」


「そうだ。すべであなたが悪いんだ」


意味が解らない。この人たち絶対に私をからかっているに違いない。


『サイコキネシス』


「え?」


「うわ」


クラウス様とレオン様をサイコキネシスで空中に浮かせた。彼らも相当な魔力を持っているようなで、あがいているようですが、空中に浮いて何もできないでいる。


「とりあえず、部屋から出て行ってください」


私が指をさすと扉が自動的に開き、二人はふあふあと浮かんだまま、扉の外へ出て行ったのだった。


「それではさようなら」


「まて!!話がある!!」


「そうだ」


バタン!!彼名の声も虚しく扉の外へ消えていった。


「さてと…」


こうして、私は治療を再開したのだった。



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