第1話 学校の始まり

穏やかな日光が、ローレンス・アリアの部屋に柔らかな光をもたらし、その光は部屋の隅々まで優しく照らしていた。部屋の中は静寂と暖かさに包まれる一方で、空気は新たな一日の始まりを告げるように、わずかに動き始めていた。アリアはまだ眠たそうにベッドで寝返りを打ち、手を口に近づけて大きく開けて、その動作一つ一つが、彼女の深い夢から徐々に現実へと戻ってくる様子を示していた。

 彼女の母、サイアは、部屋のドアをそっと開け、朝の光がさらに部屋に流れ込むようにした。そして、優しい微笑みを浮かべながら

「マリア、もう起きる時間よ」

穏やかに呼びかけた。

アリアの瞳は、ゆっくりと開かれ、朝日の光に包まれると、その眼差しは新たな一日への期待で輝き始めた。窓から差し込む光が、彼女のまばたきとともに部屋中に輝きをまき散らし、その光景はまるで新たな冒険の始まりを予感させるようだった。

「朝の支度をしないと」

 アリアは起き上がり、そのままベッドの近くにある机の椅子に座り込み、床に広げた魔術の設計図を見つめた。机の上には未完成の魔薬の試料や触媒等が散らばり、彼女の昨夜の研究の跡があちこちに見られた。それは、彼女がどれだけ情熱を持って魔術の研究に没頭しているかを物語っていた。

その時、外からは友人のセリスの明るい声が聞こえてきた。

「アリア、おはよう。今日も一緒に学校へ行こう」

アリアはセリスの声に応えて立ち上がり、研究に使用した魔法陣のことを思いながらも、心を切り替えてベッドから離れた。しかし、ベッドの脇に座り込んでいた魔法陣のことが頭から離れず、彼女はそのまま手元の魔法陣に触れた。前夜の研究の成果が非常に気になり、何か新しい発見があるかもしれないという期待が彼女の心を掴んで離さなかった。だが、その衝動を抑え、アリアは少しでも早くセリスと会うために身支度を整えた。アリアはドアを開けると、そこには明るい笑顔でセリスが立っていた。セリスは部屋中の散らかった魔法陣や薬品瓶を見て、眉をひそめながら

「ん?、こりゃ大変だな。アリア、また夜更かしして研究に没頭してたのか?」

アリアは顔を赤くしながら頷き、

「う、うん、ごめん。何か新しい発見があるかもしれないって思って、つい夜遅くまで研究してしまったんだ」

セリスは微笑みながらアリアの手を取り、

「大丈夫だ、一緒に手伝い合えば、あっという間に片付く」

そして、二人は協力して部屋の片付けを始め、その過程でお互いの研究や日常について語り合った。セリスは魔法陣を整列させ、アリアは薬品瓶を整理した。時折、笑顔でおしゃべりをしながら作業を進め、アリアの部屋は徐々に整然となっていった。

「しかし、相変わらずアリアの魔法陣の立体構造は複雑で難解だな。これは傷癒セラフ魔術か?」

セリスは怪訝な表情を浮かべた。

「ええ、傷だけではなく、根源そのものまで癒すの。ここまで完成するのに何日も徹夜したの」

アリアは少し照れながら答えた。そして二人は片付けを終えると、サイアが作ってくれた朝食に向かった。

 アリアの母サイアが用意した朝食の香りが部屋に広がり、テーブルの上には美味しそうな料理が並んだ。アリアとセリスは座り、感謝の気持ちを込めてお互いに食事を始めた。セリスは食べながら

「サイアさん、いつもこんなに美味しい朝食を作ってくれてありがとうございます。」と言い、サイアは優しい笑顔で

「いいのよ、セリスちゃん。友達が来ると嬉しいから、いつでも遊びに来てね」

アリアはうなずきながら

「母さん、セリスと過ごす時間が楽しいからね」 

 それから朝食を終えた後、アリアとセリスは学校に向かうために準備を整えた。制服を着て、魔術書や魔道具をバッグにしまい込んだ。外は明るい陽射しと爽やかな風が出迎えて来て、アリアとセリスは、学院へと向かう途中で友情と共に新たな経験へのステップを踏み出すのであった。

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