冗談は、およしになって! パート7

小説太郎

第1話

「 おねえさん、そのジャケット、ステキじゃね~。どこで拾うたん?」

男は、見知らぬ女の笑いをとり、さらには彼女にしようと思って、そう言った。

「 拾い物なんかじゃありませ~ん。」

「 ウソ~! ほいじゃあ、親切な人がおったんじゃね~。誰にもらったん?」

「 もらい物でもありませ~ん。」

「 ということは、盗んだんね~。いけんね~、それは。」

「 そんなこともしてませ~ん。」

「 ほいじゃあ、まさか自分で買ったとか?」

「 自分で買いました!」

「 へ~! 見かけによらず経済的な実力者なんじゃね~。尊敬させて。ね、お願いじゃけ~。」

「 それは是非してください。代わりに、軽蔑させてもらってもいいですか?」

「 何~! おどりゃあ、わしをなめとるんか~! このおたんこなすびが! こうなったら二人で一緒にここで闘いを繰り広げようや! わしは長年柔道を習ったにも関わらず結局柔道10級のままで終わってしまったが、おねえさんには全然負ける気せんで。どっからでもかかって来い!」

女が、目をパチクリさせていると

「 言うて冗談よ、あくまで。よかったら、電話番号教えてもらえる?」と男は、急に柔和な表情になって言った。

女は、何を思ったのか、急に駆け出してどこかへ行ってしまった。

男は、思わず思った。“ 人は、経験から多くのことを学ばねばならぬ。それにしても、私の何が一体いけなかったというのだ? 素晴らしいセリフの連続だったというのに。”

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