冗談は、およしになって! パート3

小説太郎

第1話

「 おねえさん、そこで何しよるん? ひょっとして座っとるとか?そのベンチに。」

男は、勇気をふりしぼって女に声をかけた。

そこは、ある都市の繁華街の通路であった。女は、その通路に設けられたベンチの1つに座っていた。

その女は、魅力的な容貌をしていた。最高レベルの男と深い関係にあり、何人もの並みのプレイボーイ を手玉に取っているような感じがあった。

だからこそ、男は、とっておきの冗談をのっけから披露したわけだが、女の反応は、つれなかった。男は恋愛の対象にまるでなってなかったばかりでなく、友達にもなれそうになかった。「 誰~?」と女は、ひと言だけ冷ややかに言った。

男が次に何を言うべきか戸惑っている間に、女はすぐに視線をそらした。

男は、何とか頑張って、「 わしは、わしよ~。孔雀や白鳥じゃあないで。」と言ったら、若干反応があったようだ。女は、視線を男の方へ戻して、「 あ~、そう。」と少し笑顔になって言った。

「 おねえさんは、やっぱり笑顔もすごいステキじゃね~。いっぺんでファンになってしまうよの~。よかったら、電話番号教えてもらえん?」男がそう言うと、女の表情がにわかにこわばった。男が予想していた通り、女には深い仲になっている男がおり、さらに並みのプレイボーイクラスの男達と軽く食事をしたり電話でたまに話す位のことはしていたが、その男達には図々しさはほとんどなかった。しかし、今目の前にいる男は違う。明らかに図々しい男だった。こんな男にしつこく言い寄られて、今付き合っている男との関係を壊されたらたまったものではないと女は思ったのだ。

「 ダメです、それは。」女は、きっぱりと電話番号を教えることを断った。

「 いや、そんなこと言わんでや~。電話かけて欲しゅうないんじゃったら、わしは、一生おねえさんに電話かけんけ~、番号だけ教えて~や~。わしは、メモ帳に控えたおねえさんの電話番号を時たま眺めるだけで幸せよ~。」

( バカなこと言わないで。そんなことあるわけないわ。) 女はそう思い、ベンチから立ち上がってすぐにその場から駆け去った。

気が利いたセリフを言い続けてきたと思っていた男は、思わず叫んだ。「 あっれ~!そんな~!」

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