第19話エミリーの計画
「ご、合同合宿・・・・」
まさかの展開に、空太は言葉を失った。
(今・・・砂原エリは有未の近くにいる・・・!)
「・・・塾の合宿?本当に、確実にそこに行ってるの?」
「は、はい。エリーから送られてきた写真だけじゃなくて、同じ塾通ってる子のSNSの写真にも、エリーが載ってたから」
そういって、エリーはスマホを見せてきた。
砂原エリと同じ塾に通ってる子のSNSには【これからバスで合宿所に向かいます♪】と書かれた投稿と、バスの中で友達数人で撮られた写真が載っていた。そして、その背後には偶然写りこんでしまったらしい砂原エリの姿があった。
「さ、砂原エリと連絡とれないのか!?」
「観覧車止まってからメッセージに既読つかなくて、何度か電話かけたけど、かからないんです。合宿場所が山奥の方って言ってたから、多分圏外になってるのかも・・」
「・・・・・・・」
(じゃあ、有未とも、連絡つかないのか・・・)
混乱のせいで無言になる空太に対し、エリーは冷静な態度でにっしゃんに向き合った。
「・・・合宿場所はどこ?」
「・・・そこまではわからないです・・深山地区の方ってだけ聞いたけど・・」
「空太、そこに向かうわよ!!」
「え、でも、合宿所の場所が」
「塾に電話して聞けばいいでしょ」
「あ、そっか」
「とりあえずここ降りるわよ!」
エリーは観覧車のドアを開けて、ドアから身を乗り出した。
そんなエリーの様子に戸惑いつつも、にっしゃんはドアから顔を出した。
「あ、あの・・・私は」
「あなたは危ないから救助が来るまでここで待機してて。砂原エリから連絡くるかもしれないから、このスマホは借りるわよ」
「あ・・・はい」
そう言って、エリーは柱を伝って降りだし、空太も後に続いた。
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観覧車の柱をつたっておりながら、空太はエリーに問いかけた。
「・・・・どうゆうことなんだろ・・・ただの偶然かな?何で砂原エリは、有未と・・」
「目的はよくわからないけど、今はとにかく砂原エリの元へ向かうしかないでしょ」
「そ、そうだけど・・・」
「・・・この事故にしたっておそらく砂原エリの罠だと思う。あの友達を使って邪魔な私たちを足止めするための。多分、システムにハッキングして」
「ハッキング!?中学生にそんな事できるのか!?」
「それか共犯がいるかもしれないけど。でも、そんな優秀な共犯がいるならあんな間抜けな子は使わないでしょう」
「でも、今、電波の届かない場所にいるんだろ?それなのにハッキングなんて」
「あらかじめ時間指定で停止するように信号を送っていたのかも。詳しいやり方は私もわからないけど・・・」
「・・・・そ、そんな・・」
「それならエミリーの館で何も起こらなかったのも合点がいく。エミリーの館と違って観覧車はハッキングで運転を停止させることができる。そうすれば簡単に外には出られないし、救助にも時間がかかる。つまり、遠隔で私たちの足止めができるってこと」
(・・・俺たちはずっと砂原エリの罠にはまってただけだったのか)
(・・・・いや、でも・・・・)
「・・・・でも、なんかおかしくないか?」
もうすぐ地上だが、空太の問いかけに、エリーは手を止めた。
「え?」
「だって、にっしゃんを観覧車に乗せても、俺たちが観覧車に乗るかはわからないだろ?まあお前とはぐれてて合流した勢いで乗っちゃったけど、下で見張ってるって方法もあったわけだし」
「・・・・・・・・」
「そうすれば、足止めできなくなる」
空太の疑問を聞いて、エリーは固まった。
「・・・・下で、見張る・・・足止め・・・」
「おい、どうした?」
「・・・・まさか」
何かを閃いたらしいエリーは急いで柱を降り、地上に降り立った。エリーの元に、観覧車の従業員が駆けつけた。
「お、お客様、お怪我は?」
「・・・・この近くに、爆弾が仕掛けられてるかもしれない」
「ば、爆弾!?」
「すぐ調べて!!」
エリーがマスクを脱ぎ、偽の警察手帳を見せると、従業員は慌てだした。
(みんな意外とだまされるんだな・・)
空太も地上に降り、エリーに駆け寄った。
「エ、エリー爆弾て」
「あんたも探すの手伝って!!」
そう言って、エリーと空太は観覧車の裏側に回った。
「エ、エリーいくらなんでも爆弾て」
「観覧車の下に仕掛けておけば、私たちが観覧車に乗っても乗らなくても始末できる。観覧車の裏は林だし、この観覧車もそんなに大きくない。下で大規模な爆発を起こしてそのまま火災が起きれば、観覧車内の人間も助からない・・・あった!!」
「う、うそお!?」
エリーの言う通り、観覧車の裏側に、大きな紙袋が置いてあった。
「こ、これ砂原エリが仕掛けたのか・・・?」
「おそらく。私たちがにっしゃんの尾行してる間に仕掛けたんだと思う。ここは人目につかないし・・・ほら」
エリーは慎重に紙袋を開けて、中に入っていた箱を開けた。
「な・・・なにこれ」
「時限爆弾」
「え、ええ・・・・!」
テレビやドラマで見たことはあるが、実際生で見るのは初めてだった。そして、爆弾に表示された時間は、残り二分を切っていた。
「こ、これどうすれば」
「解体してる時間はない。どこか、人が少ないとこに」
「ひ、人がすくないとこって」
「入口のとこに大きな池あったでしょ。あそこに捨てる」
「え、でも」
観覧車の場所は入口から離れていて、普通に歩いて五分ほどかかる。
「ま、間に合わないだろ」
「走って持って行って。あんたの足なら間に合うでしょ」
「え、えええええ」
「ほら、早く!これを処分しないと、この場にいる全員が死ぬのよ!!」
「あ、あああ・・・・くそっ」
空太は震える手で紙袋を持ち、邪魔なマスクを脱いで走り出した。
「空太!もし間に合わなければ、その場に置いてすぐ逃げて。処分できたら入口で待ち合わせね」
「す、好き勝手いいやがって」
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全速力で走り抜け、入口付近にある大きな池の前にたどり着き、池に爆弾を投げ捨てた。
「みんな、離れて!離れて!」
周囲の人間に呼びかけながら、空太は池から離れた。
次の瞬間、大きな爆音が響き、水しぶきが舞った。
あまりにおおきな爆音と衝撃に、空太は体勢をくずして、地面に顔をぶつけた。
「や・・・やばあ」
(あいつ・・・本気で俺たちを殺す気だったのか・・)
(し、しかもにっしゃんまで巻き込んで・・・)
あまりの衝撃に呆然としていると、後ろから大きなクラクション音が響いた。
振り返ると、入口前で、車に乗ったエリーがこっちに来いとジェスチャーしていた。
「え?え?」
(あいつ・・・運転できたっけ?)
戸惑いながらも、震える足でエリーの元へ駆け寄った。エリーは運転席から身を乗り出して助手席のドアを開け、空太を車の中へ引きずり込んだ。
「ドア閉めて!」
「こ、この車・・どこから」
「駐車場から借りた」
「そ、それ盗難sh「飛ばすからしっかりつかまってて!!」
宣言通り、エリーはアクセルべた踏みして、猛スピードで車を走らせた。空太が池に向かって走ってる間に、観覧車裏の林を抜けたとこにある駐車場から車を拝借して、入口に回り込んできたらしい。
「お、お前車運転できたのか!?」
「あんたがやってるとこ見て覚えた」
「で、でも無免だろ!?お、俺運転変わるから」
「あんたのちんたらした安全運転じゃ間に合わない。それより、塾に電話して合宿所の場所聞きだして」
そう言って、にっしゃんから借りたスマホを差し出してきた。
「で、でも部外者に教えてくれるかな」
「保護者にでもなりすませばいいでしょ。合宿所の場所がわかればある程度ルート絞れるから」
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「どう?かかった?」
「ダメだ。出ない・・・」
スマホで塾の電話番号を検索してかけたが、今の時間は業務終了時刻で、誰も電話には出なかった。
「それぞれの塾と、総合受付みたいなところにもかけたけど、出なかった・・・」
「・・・・・・あんたの彼女ちゃんの親に電話して聞いたら?親なら知ってるでしょ」
「・・・有未の家の番号がわからん。俺が元々使ってたケータイは拉致された時に家に置いてきちゃったし・・」
「あんたの家に電話して、番号教えてもらったら?」
「今の時間だと、家には五年前の〝俺〟がいるから、それも難しい・・」
「・・・・・・・・」
(どうしよう・・・・・)
「てゆうか、今、砂原エリと有未は同じバス乗ってるんだよな?もしかしてバスジャックでもされてたりして・・」
「多分、それはないと思う。移動中のバスでそんな事したら自分にも危険が伴うし、殺害後の処理も難しい。砂原エリの目的はまだわからないけど、もし彼女ちゃんを殺すつもりでも、移動中じゃなくて合宿先に着いてから狙うと思・・・」
PIPIPIPIPIPIPI
「え?」
不意に鳴った電子音に顔を上げると、にっしゃんのスマホに、知らない番号から電話がかかってきた。
「だ、誰だ?」
「さあ」
「でもこれ、にっしゃんの携帯だしな」
「・・・もしかしたら、砂原エリかも。スピーカーにして、出てみて」
「え、でも」
「いいから」
渋りながらも、空太は受話ボタンを押し、スピーカー設定にして、運転席前のスマホスタンドに立てかけた。
『・・・・あ、もしもし』
「・・・・・・・」
『・・・えっと、私、砂原です』
「!!」
空太とエリーは驚いて顔を見合わせた。
(さ、砂原エリ!?・・・・あれ、でも・・・)
『砂原エリの・・・母です』
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