第8話 ★猫トラ本 ネコ世界の健康保険
<サイド 城島叶斗(会社員)>
「ネコ科ヒョウ属トラの巻~政治家になるための本~」
第4話のタイトルを見て目を疑った。
ネコ世界の健康保険????いや、さっきの話で攻め込まれていたよね。ネコ逃げまどっていたよ??
何でいきなり敵はいなくなったの?ネコ世界滅亡??ってフラグをたてといて、回収もせずに、健康保険ってあんまりだろう?
とりあえず読む。
『ネコ達は、怪我が多い。ネコ同士での喧嘩も多いし、寿命がそれほど長くはないので、病気になることも多いし、ちょっとした病気でも死ぬことが多かった。
彼らは、光る財産を集めることは好きだったが、出すことは好まない性質だ。自分の体調が悪いくらいで財産を差し出し、治してもらうということを嫌がる。医療機関は客が少ないので、客単価をあげようと、ちょっとした治療でも大金を請求する。
あるいは、たいして効果が期待できない医療サービスを提供して、大金を請求したり、自分にメリットがある医療サービスを優先的に使用して、患者にとって本当に良い医療サービスとは異なるものが提供されるなどという問題も起きる。
で、結果的にネコ達はさらに医療機関にかかろうとせずに、医療にお金を落とさないから医療の発達が遅れるという悪循環に陥っていた。
これを是正するには3つの方法が考えられる。
1つ目は、医療機関を政府機関が囲い込んで、医療サービスを提供させるという方法だ。囲い込まれた医療機関は公務員となり政府が生活を保障することになるため、競争原理は働かない。競争原理が働かない場合、一般のネコ達に上から目線でサービスを提供することに繋がったり、医療技術の発達が個人のやる気によって左右されてしまうが、すべてのネコに医療サービスは行き渡るし、提供される医療サービスの総量が増えるなら、今よりは医療の発展も進むだろう。
2つ目は、軍隊組織や警察組織、大手の商社などが抱え込む方法だ。この場合、少しは競争原理が働くから、政府機関だけが抱え込んですべてのネコに医療サービスを提供するよりはサービスの向上や医療技術の向上も期待できる。ただ、この大手組織に伝手がない一般のネコ達をどうするかという問題が残る。市民病院などを作り、そこで最低限の医療サービスを行うという方法は併用できるが、医療サービスに差を付けなければ、大手組織が医療サービスを抱え込もうとする動機が失われるので
提供する医療サービスに差がある以上、本当に十分な効果があるかわからない医療サービスが提供され、それによりお金をだまし取られたりするという問題も起こり得るが、公正な競争の徹底により悪質な医療機関は排除し、医療技術の発展をしているところが、より多くの利益を得ることで医療の発展もすすむという青写真で構築される仕組みである。
これは現在のアメリカの医療提供体制に近い。
そして最後の3つ目の方法が、提供する医療サービスの多くに提供単価を政府が決め、その7割から9割を本人からではなく本人が加入する医療保険から支給するという方法だ。保険適用となる医療サービスを選択するのに時間や手間がかかり、限定的になることや、最新の医療サービスが医療保険の適用対象になるまで時間がかかるなどの問題点はあるが、これが日本の医療提供体制に近い。
私たちが実現を目指すのは日本方式だ。
医療保険の原資は、なにかの支払いが行われ所得となる際に源泉徴収する。仕事の時間単価が高いものほど多めに徴収させてもらう。時間単価が高い仕事=危険な仕事=怪我する可能性が高く医療保険を使用する可能性も高いという理論で押し通した。
累進課税制度という考え方をネコ達に説明するのはむつかしい。
日本の健康保険制度は累進課税である。社会保険でも一定金額までは累進であがっていくし、社会保険を持たない国民健康保険であると、より所得に応じて金額が左右される。市民税非課税世帯の給与所得98万円以下の世帯なら年に8000円くらいで済むが、年収が700万円くらいで地方なら100万円を超える場合もある。(介護保険も含めてだが。)
この制度改革は急務だが、ネコ世界においては、そこまで負担感はない。医療提供機関が少ないし、医療機関に行く習慣がまだないからだ。猫の世界は異世界だけあって医療提供サービスがシンプルだ。以前にも紹介したポーションが存在しているから、ポーションの質を定義して、怪我の大きさに合わせて使用するポーションの質を定義し、医療点数を定めることで9割以上の医療サービスがカバーできた。
猫カゼへの対応など基本的な医療サービスの医療点数まで含めたら件数として提供されている医療サービスの99.9%は網羅できた。無論、提供されている医療サービスで効果がはっきりしていないものも全国調査ではあったから、3割は自主診療扱いになったが。
混合診療は禁止にはしなかった。
日本では医療事務が煩雑になり切り分けが難しいことや効果がはっきりしない医療サービスを受診することで国民が無駄な負担を強いられる可能性があるなどの理由があり、混合診療は原則禁止である。先進医療として認められるものなどでは保険外併用診療として認められる部分もある。
しかし、自由を求めるものが多いネコ世界では、効果がはっきりしない医療サービスを高い金を払って受診するというのも自由だという考えが強く、混合診療を禁止することはなかった。
この制度が動き出した後、ネコ達の不慮の死亡が減少し、平均寿命、そしてより大事な健康寿命も延びることになった。』
えぇ!すごいガチなんですけど。
まぁ、タイトルが政治家になる本だから、これくらい知識として当然知っていてほしいのだけど、結局、敵はどうなったの??と思ったら前話の末尾に小さく書いてあった。
『皆様の応援で、敵は無事撃退されました。応援ありがとうございました。』
なに?この映画中にペンライト振って応援しようとか、子どもたちが声を合わせて応援したら解決!!みたいな雑な取り扱いは???
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