魔法学園の特別教室〜その教師、元世界最強賢者により〜

深夜翔

教室招待編

page00 : 学園には最強がいる

――春。

 色とりどりの花が咲き乱れ、新たな一年を迎える季節。

 子どもたちは新生活・新入生に胸躍らせ、学園全体が春と同じ彩りに染まる。


 ここスペリディア魔法学園は、国が誇る世界有数の大規模魔法師教育機関。

 世界のありとあらゆる魔法知識が集結するその場所は、魔法に憧れる子どもたちにとってまさに楽園。


 そんな学園に今年もまた、春が訪れた。


 明るい色に染まり、楽しい春がまた――


 ドカァァァァァァァァンッッッ


 とてつもない爆発音。

 何かの残骸が宙を舞う。


「……また失敗。もう少し出力に改良が必要か」


 波乱の春がまた、始まるのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「グレイ先生だー!おはようー!」

「ホントだ!!珍しいね、こっちにいるの」

「イル先、入学式出るのか?」

「ってか、先生今年も担任持たないの?」


「――おはよう。ちびっ子どもは朝から元気だな」


 腰まで届きそうな長い黒髪に紅色のメッシュ。

 175センチを超えた高身長に、特徴的な尖った耳。長い白衣に身を包みポッケに手を突っ込んで歩く。

 おおよそ教師とは思えない風貌の女性だが、顔を知る在校生からは親しげに挨拶され、それを適当に流す。


――イルミス・グレイ


 それが彼女の名である。


「グレーセンセー!今年度もよろしくね!!」

「私の名前はグレイだ。それと、君とはできることなら会いたくない」

「ひどっ!!」


 子どもは嫌いだと本人は訴えるが、生徒たちからの人気は高く……


「グレイ先生!!また研究室をめちゃくちゃにしましたね?!破片がこちらまで飛んできて大変なんですよ!その寝癖も!あなたは教師としての自覚が――」

「あーはい、すみませんー」


 同じ教師らからの評判は低い。


 当然と言えば当然で、しかしだからこそ生徒たちの信頼を得ているとも言える。


 そんな、教師としての態度はイマイチな彼女だが、魔法学を担当するこの学校随一の魔法の使い手であり――


「知ってる?グレイ先生の噂」

「なんだそれ?」


「ほら、歴史の授業で習った二百年前の……」

「魔王を討伐した勇者の事だよね」

「そう!まだ魔王が存在した時代の伝説」

「それが?」


「知らないの?ほら、勇者レイナと一緒に戦った戦士ゴルエン、僧侶のシュマリエ、パラディンのハイスともう一人」

「あ!あの魔法使いの……」

「違う違う!!魔法使いじゃなくて――」



 またの名を――イルミス・グレイ

 かつて魔王を倒した、伝説の賢者その人である。

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