第12話

「俺をっ、俺をお前のような混ざりものと一緒にするな!!!」

 リーダー格の男は全身で否定するように体を震わせた。

「俺は違うっ俺は、侵略者に、寄生虫に娘を、家族を奪われたっ! それをお前と同じだと! 怪物が語るな!!!」

 怒りに転げながらリーダー格は泡を吹き散らし突進した。

 腕にはギラリとナイフが光る。


「ああ、そんなところまで、同じでしたか」

 ずぷり、と旦那の首にナイフが刺さる。

 同時に旦那はがっちりと片腕でリーダー格の男をおさえた。暴れる男。しかし片腕であるにもかかわらず、旦那の拘束はびくともしない。

 目を見開くリリに、旦那は後ろ手でサインを出す。


「私も、宿主の娘から伝染した口ですよ」

 ぐぐ、とリーダー格を青い花弁の奥から覗き込むようにする旦那。

「そして私は、哀しみと慈愛という父性を知り、あなたは、怒りと愛護という父性を知った」

 じわりじわりと進むナイフ。だらだらと流れる鮮血。

「同じでありながら、しかし私は看過しえません。破滅行動へ転がり落ちる、同胞など」

 後ろ手で受け取った注射を振りかぶる。ナイフが突き進む。それは同時だった。


 ぼとり、と青いカーネーションが地面に落ちると共に、注射液に中身、試薬は男へと注入されていた。

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