ドウナシとヨツアシ

染谷市太郎

第1話

 そいつは、青いカーネーションの形をしていた。




HelloハローAloアロー您好ニンハオعَلَيْكُمアッサラーム、うーん……こんにちは?」

 外国語の嵐、最後に日本語。

 なじみのある言語に、オレは思わず反応してしまった。

「ああ! 日本語がいいんだね! よかった、これでお話ができる」

 やつはその大きな体で大げさに喜びの表現をする。

 その顔に表情はない。というか、表情を作れるパーツがない。

 なぜならそいつの頭部は、青いカーネーションの形をしていた。


 そいつをオレは見上げて睨んだ。どこが目なのかわからないが。じっくりと化けの皮を剥ぐように睨み上げる。

 どっしりとした男の体が威圧感を放っている。その胴体の上で咲いている大きな青いカーネーション。ひどくひょうきんで、どこか無機質な見た目。

「そう睨まず」

 そいつはオレの視線に軽快に首を傾げた。顔があれば苦笑いでも浮かべていたのかもしれない。

「これから私たちは家族になるのですから」

 そいつはオレを床から抱き上げた。

 オレは身をよじるが、意味はない。この短い手足では抵抗もできない。

「大丈夫ですよ」

 これからいったい何をされるのか。ただ不安でこわばるオレを、そいつは厚い胸板に抱きとめた。


「私はあなたの幸せを願います」


 そいつの体は、ひんやりと冷たかった。

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