自然は今傾いて

山葵

本文

7分袖の白いTシャツは陽を飲み込んで

葉脈にように刺繍が刻まれていた


ひとつの車輪は颯爽と道を駆け抜けていく

もうひとつの車輪が追いかける

雑草は遠くで今日もかけっこをするこども達を見守っていた


「わたし」は見向きもしなかったが

それでも笑顔でこちらに手を振っていることくらいは知っているのだ


ああ、

今日くらいは許してやろう


袖からはみ出ている腕をくすぐられたが

別に悪い気がした訳では無い


毎日このくらいの調子でいてくれよと全体重を右足にかける。これはあいつらへのエールだ


芽吹きと終焉への幕開けの違いがわかるか?

人は大地から全てを知るのだ

目を閉じて大きく空気を取り込んでみた

ああ、

広がる闇、何も見えない

ただ全てが変わりゆくのだ


置いてかれるよう今日も進もう

誰にも知られないうちに

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自然は今傾いて 山葵 @idolmasapi

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