第29話 それ逆じゃない?
配信を見始めてから30分ほどが経過した。
スマホを手に真剣に配信を見ていると扉が開いた。
「お風呂お先にありがとう。何見てるの?」
俺の持っているスマホが気になったのか月はそんなことを聞いてきた。
「ああ。今推しの配信がやってたからリアタイしてた。」
「そうなんだ。先にパパっとお風呂入ってきたら?その間に夕飯作っておくからさ。」
「いいのか?」
「なにが?」
ぽかんと言った様子で青色の瞳が蒼を見据えていた。
「いや、なんていうか申し訳なくて。」
「そんなの気にしなくてもいいよ。私は好きな人に料理を食べてほしいだけだからさ。」
花が咲き誇ったかのような笑みを月は浮かべていた。
「そ、そうか?」
「あれぇ~?もしかして照れてるの~?」
「うるせぇよ。わかった。パパっと風呂入ってくるわ。」
「なんかこの会話夫婦みたいだね?」
いつものようにすこし揶揄ったようににこやかに微笑みながら言った。
「だから、なんでお前はそんなに俺と付き合いたいんだ?そろそろ理由位教えてくれてもいいんじゃないか?」
蒼がずっと気になっていたこと。
聞く必要もないと思っていたがこれからもかかわる分聞いていたほうが付き合いやすいのかもしれない。
「それはまた今度。早くお風呂に入ってきなよ。」
ばっちり躱されてしまった。
「風呂行ってきま~す。」
蒼は早々にあきらめて風呂に向かった。
「こんな俺のどこが好きなんだろうな?」
蒼は風呂に入りながら一人で考えていた。
なぜ月が蒼に惹かれているのか。
あまり取り柄のない自分のどこが好きでここまでしているのかが気になって仕方がない。
「やっぱわからん。」
どれだけ考えても蒼は答えにたどり着くことがなかった。
「今度美波か海斗にでも相談してみるか。」
蒼は半ば思考を放棄して人に聞くことに決めた。
そもそも女心なんて蒼には一ミリもわからない。
だからこそ、そこらへんに詳しそうな人に聞くのが生産的だろう。
「のぼせる前に出るか。」
蒼が風呂場の扉をあけるとそこには月が立っていた。
「、、、は?」
もう一度言う。
風呂場をあけたら”月がそこに立っていた。”
「覗くなって言っただろ!」
蒼はそう言いながら物凄い速さで股間を隠した。
(ねぇ、逆じゃない?ふつうこういうのって男の人が覗いちゃうもんじゃないの?なんで逆なの?クソっラブコメの常識まで最近のLGBTの波に乗っているのか。)
蒼は頭の中でとてつもなくくだらないことを考えていたが半ば現実逃避だろう。
だって、そんなことを考えても現実は変わらないんだから。
「え?覗くなって覗けって意味じゃないの?」
「んわけあるか!どういうフリだよ。そんな振りしねぇよ。」
「そうなんだ?」
月はそう言いながらも視線は蒼の体から離すことがなかった。
普通に変態である。
「そんなことより早く出て行けよ!」
「ええ~もうちょっと~」
「出てけ!」
蒼がそう睨むと月は少し残念そうに風呂場から出て行った。
「どうしよう。今日の夜逆に俺が襲われたりしないか?」
蒼は今日寝るときに同じ部屋なのを思い出して恐怖を抱いていた。
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