第一部

第1話転生したけど…

「姉さん…」


「な~に?」


「いい加減お風呂上がりに下着姿でリビングをうろうろしないでくれと何度も言ってるよね?」


「だって…」


「だってじゃないよ!父さんも母さんも姉さんに何とか言ってやってよ!」


「まあ、父さんは娘の成長が見れて嬉しいが?」


 この変態親父め…。


「父さんは後でちょ~っとばかり話をするとして…」

「えっ、ちょっと待って、母さん!?」

「聖夜の言う通り、もう高校生二年生なんだし、そこら辺はわきまえないとね?いい、春?」


「は~い、お母さん…」


 姉さんも父さんは特に反省してくれ…。本当に心からそう思うよ…。




***


 俺がこういう風に姉に言うのには勿論理由があるんだ。それは、俺がゲームこの世界に転生して来た事が関わっている。


 この世界は現世で一世を風靡した恋愛ゲーム『君と恋して♡』の世界。俺は現世でメインヒロインの可愛春に惚れていた…。冗談なんかじゃないぜ?ガチもガチ!ガチ恋勢って奴だ。オタクと笑うか?笑いたきゃ笑えばいいさ…。俺は本当に本気だったんだから…。


 ─何々…それがどうしたって?まだ分からない?察しがいい人は気付いてるんじゃない?そうなんだよ…。


 俺は現世で多分死んで、転生してこの世界に生を受けたんだ…。そしてこの世界が君と恋してのゲーム世界だと気付いた時、可愛春と本気で恋愛出来ると思ったんだよ!!!やったぜ!ありがとう神様ってな!


 でも…彼女は僕の姉だったんだ…。こんな事ある!?ガチ恋だったんだよ?今風いまふうに言うなら推しのよっ!?普通こういう時の転生ってモブとか主人公…最悪でも悪役じゃねっ?ねっ?ねっ?それなのに何でよりにもよって彼女の弟なの?他のヒロイン達の弟とか兄でも良かったじゃん。こんなの俗に言う蛇の生殺しだよね?ホント…


「何でだよぉぉぉおおおー!(藤原○也さん風)」


 ─と、心から叫んださ…。それこそ血の涙が溢れそうになる位の悲壮な気持ちで…。


 分かるかい?僕はこの世界に転生しても尚、彼女と恋愛する事は出来ないんだ…。


 それなのに…こんな僕の気持ちも知らないで当の本人と来たら下着姿で俺の前をうろうろするんだぜ?気がおかしくなるだっちゅ~の!とにかくこれで理由は分かっただろ?



***


 転生してから15年。俺は未だに彼女に恋している…。俺は弟で望みも糞もないのにな…。もうすぐ高校に入学。高校生活に慣れたら…バイトして家を出て一人暮らしでもしようかと思っている。理由は察しがつくだろうけど、結構…いや…、かなり辛いもんだぜ?好きな人が手を伸ばせば届く距離に居るのにその手を伸ばす事が出来ないのは…。こんなに近くに居るのにな。それこそ彼女に触れる事が出来る距離なのに…



「どどど、どうしたの聖夜?」


「ん…何が?」


「お、お姉ちゃんをそ、そんなにも真剣に見つめて…も、もしかして、エッチな目で私を…」


「阿保かぁぁぁー!考え事してただけですぅぅぅー!何で姉さんをそんな目で見ないといけないんだよ!俺にも選ぶ権利はあるつ~の!母さんと同じでそんなに無い胸を…」


「馬鹿野郎ー聖夜!!命が惜しくないのかっ!?」


 どうしたんだ父さん?そんなに慌て…て…


「…聖夜ちゃん♪」


 声がする方へと振り向くと母の姿。表情は笑顔なんだが決してその顔は笑っておらず、母さんの背後にはスタ○ドと言う名の山姥が…。


「ひっ…」


「さっき…何て言ったのかな?」


「な"、何"も"言"っ"て"ま"せ"ん"!!」


「せ~い~や?お姉ちゃんも聞きたいかな? かな?」


 いや…姉さんはいかにも怒ってますって、しても可愛いだけだから…って、そんな事思ってる場合じゃねぇ~!?どうする!?どうする!?


「あっ…」


「何、聖夜?お母さんに何か弁明でも?」


「お、思い出した事があって…」


「何を?」


「こ、この間…父さんの帰りが遅かったのは父さんがキャバクラに行ってたからって事を母さんに伝えたくて…」


「…はっ?」


「うぉ~い!?聖夜!?どういう事!?何故そこで父さんを!?」


 それは姉さんの下着姿をイヤらしい目で見たからだよ…父さん…。言わないけどね。


「…あ・な・た♡」


「ふぁっ!?!?!?」


「うふふふふ…本当なの?」


「ち、違っ!?聖夜の勘違いで…」

「父さんの背広の裏ポケット…」

「何故それをぉぉぉー!!???」

「ふふふっ…聖夜の言う事は本当なのね?」

「せいやぁぁぁぁぁぁー!!!俺を身代わりとして売ったのかぁぁぁぁぁぁー!」

「さぁさぁ…寝室へと行きましょうか…あ・な・た♡」

「…はひっ」


 父さん…どうか…どうか…ご無事で…。


「聖夜♡あなたは後でね?」


 どうやら逃げられなかったようだ…。父さんが首根っこを母さんに掴まれ、リビングから2人の姿が消える…。



 むにゅん…


 背中に柔らかい感触…まさか…。


「聖夜?私はちゃんと聞いてあげるからね?で、誰の胸が小さいって?」


 頼むから姉さん…下着姿のまま俺の背中から抱き付いてくるんじゃないよ!?それ…俺にとっては御褒美にしかならないからな?ホント…勘弁してくれ…。





******

あとがき

いつも私の作品をお読み頂き本当にありがとうございます!いつもの様に皆様へのお願いがございます!新作の小説は最初が肝心です!少しでも面白ければ下部より星や評価の方をポチっと何卒宜しくお願いします!作者フォローも出来れば是非!


美鈴でした!

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