魔術大会
第15話 いざ新イベント 魔術大会へ
ハインズ・ロッケンバウアー。(15)誕生日 7月12日
趣味:剣術訓練・魔術訓練・温泉巡り
セントウィリアム王国の王位第一継承権を持つ第1王子であり、スカーレット・オズワルドの婚約者でもある。
鮮やかな金髪碧眼を持ち、何事においても万能なパーフェクト超人。ゲーム内における攻略対象の一人で、不動の人気ナンバーワンだった。
スカーレット・オズワルド(15)誕生日12月15日
趣味:乗馬 お茶会
特技:攻撃魔術 錬金術
柔らかくウェーブした金髪を背中の中ほどまで伸ばしている。青い瞳は妹のマーガレットとおそろい。
芸術品のように整った顔立ちと均整の取れたプロポーションは、セントウィリアム王国に於いて並び立つものの居ない美貌として知られる。
エルザ・クライアハート(15) 誕生日7月7日
茶色のセミロング
一般階級の平民の娘。
聖女としての力に目覚める運命にある、大ヒットゲーム『聖ウィリアム王国物語~恋する聖女と5人の王子~』のヒロイン。
色々あってアルフに自分の事をエルザさんと呼ばせることに成功。立て続けにほっぺにチュゥをするなど、自分ではスカーレットとの恋愛レースに勝っていると確信している。
アルフ・ルーベルト(17)誕生日 5月28日
趣味:スカーレットの育成
高身長で黒髪に黒い瞳を持つイケメン執事。普段は髪をオールバッグにしているが、寝るときは流石に下ろしている。最近聖遺物の守護者を討伐したことが噂でもちきりになり、ここまでの出来事と合わせて今や学園内で時の人となっている。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「お元気そうで何よりです」
「アルフさんもお元気そうで。その節は大変お世話になりました。」
「………ところで質問なのですが――――
「黙秘いたします」
「………。」
予想はしていたが、取り付く島もない。
横でツンとすまし顔のまま動かなくなったビアンカの事はいったん諦め、俺は少し離れた場所でハインズとのお茶を楽しむスカーレットに視線を移した。
「それでこの間ヴィシャスと……」
「まぁ!お噂は兼ねがね聞いておりますわ。ヴィシャス様とも懇意になされていますのね?」
………ふむ。
スカーレットの方は問題なくハインズとの逢瀬を楽しめているか。
この間キスしてきた時は何が起きたのかと思ったが、翌日以降は大きな変化はなし。
変化と言えば以前よりもぴったりくっついてくる様になったくらいのもので、あのキスが夢だったのではと思うくらいその話題を出そうとしない。
しかしあれは危ないところだった………。
まじで顔だけは俺のドストライクなんだから、軽率な行動を取るのは本当にやめて欲しい。
世間知らずなお嬢様だから他意はないんだろうが、いくら何でもあんなことされ続けたら、我慢できるものも我慢できなくなってしまう。
とにかくお嬢様はハインズと逢瀬を重ね、二人の愛を確実なものにしていってもらわねば。
「お二人とも仲睦まじくて微笑ましいですね。そう思いませんか?ビアンカさん」
「………スカーレット様は執事の教育が苦手でいらっしゃいますか?主人が婚約者とお話をしているというのに、無駄口を叩くなんて何をお考えで?」
「………。」
問題はコイツだ。
というかコイツだけじゃなくてクルトの方も気にしなきゃいけないのに………、結局コイツなんなんだよ。
あの後記憶を頼りに考えてみたけど、どうやっても思い出せない。
確かにハインズ付きのメイドの描写はあったような気がするけど、少なくともメインストーリーに絡んでくるような重要キャラではなかったはずだ。
「ところでビアンカさん。よろしければ今度一緒に食事でも……」
「結構です。私はハインズ様の御付きですので休暇など御座いません」
「………。」
どうにかして情報を引き出したい。
それぞれのイベントを本来のストーリーとは違う展開にもっていっている時点で不確定要素が多すぎるのは致し方ないとして、そもそもが不確定要素の人物なんて危険すぎる。
それにこいつの強さは尋常じゃなかった。
今まで見てきた中でも間違いなく一番強い。
イベントに本来含まれている危険を、丸ごと排除できてしまうような……そんなレベルの強さだ。
どうすれば……なんて逡巡していると、
「アルフ! あんたちょっとこっち来なさい!」
愛しのお嬢様からのお呼び出し。
ツン…と澄ましたままのビアンカに軽く会釈してから歩き出したものの、結局ビアンカにはガン無視されてしまった。
普通に凹むなこれ。
無視されるとか嫌われるってのは大変なもんだな。
まじでエルザの心の強さに尊敬の念がつきないよ。
「お呼びでしょうか?」
「遅いわよ。ハインズ様を待たせないでよね」
「これはこれは……大変申し訳ございませんでした。ハインズ様」
スカーレットのむくれ顔を無視してハインズに頭を下げると、金髪イケメン王子は肩を竦めて少し微笑んだ。
キザったらしい態度を……とは思うが似合ってるからなんとも言えない。
「今魔術大会の話をしてたのよ」
「はぁ……魔術大会ですか」
魔術大会。
4人目の王子との出会いと、聖遺物を手に入れる機会を兼ねたイベントだ。
まぁ4人目の王子はどうでも良いとしても、この魔術大会で手に入る聖遺物は是が非でも手に入れたいと思っていた。
どうにか俺もこの大会に参加出来たりしないもんかな……まぁ無理だろうが。
この大会で手に入る異物は朝霧のロッド。
魔力を大幅に増強させ、使用者の戦闘力を大幅に向上させる効果がある。
エルザが聖女になるにせよ、スカーレットが聖女になるにせよ、このロッドはストーリーの攻略に必須級のアイテムといっても過言じゃない。
もしこのロッドが手に入らない事態になると、本当に面倒くさいのだ。
最終盤のボス戦はかなりの高難易度戦闘で、正直普通にエルザを育成しただけだと負ける。
ロッドが無いと尚更辛く、一度試してみた時にはレベルをカンストさせないとクリアができなかった。それでもギリギリだったしな。
これからの展開がどうなるか分からないにせよ、手に入れておいて絶対損はしないだろう。
「それでね、あんたその大会に参加しなさい」
「………私がですか?」
「そうよ、ねぇハインズ様?」
「うん、今スカーレットと話していてね。それが良いんじゃないかと二人の意見があったわけだ」
「どうしてまたそんな話に……」
本当にどうしてそうなった。
そもそも魔術大会は生徒同士で魔術の腕を競う意図で開催されるもので、従者が参加してどうこうするようなものじゃない。
「ハインズ様があんたの強さに興味があるのよ」
「………強さと言われましても」
「アルフ君はビアンカと一緒に聖遺物の守護者を倒しているだろ?ビアンカも君の強さが尋常じゃなかったと言っていたからね。僕も君の戦う所を見てみたい」
「いえ、あの……そもそも私が魔術大会に出れる訳が―――
「出場条件については問題ないよ。ここに来る前に運営委員会に確認済みだ。まぁアルフ君が出場するとなると、スカーレットの代理という枠で出るしかないようだが」
「………そうですか」
………どうなんだこれ。
正直な話良いのか悪いのか判断しかねる。
本来魔術大会は、いつも通りにスカーレットがエルザの当て馬にされるイベントだ。
戦いを勝ち抜き、二人は決勝で当たることになる。
戦いの末の勝者はスカーレット。
負けイベントとしか思えない強さのスカーレットにあえなく敗北した……と思いきやそこから急展開が始まるのだ。
試合後の検査でスカーレットは魔力ドーピングをしていた事が判明し失格。
スカーレットの信用は地に落ち、聖遺物もめでたくエルザの手元に収まることになる。
実際の所、スカーレットは魔力ドーピングがされている事なんて何も知らなかった。
大会中は本気でハインズへの愛の力が自分に成長をもたらしていると信じて疑わなかったのだ。
魔力の増強剤をスカーレットに盛ったのは彼女の取り巻き達で、もっと言えばその裏では毎度おなじみクルトが暗躍していたのである。
とまぁ……大雑把に言えばこんなイベントだな。
確かハインズはこのイベントに不参加で、新しく出会う王子にスポットが当てられていたはずで――――
「それでね。僕も参加することにしたんだ」
「頑張ってくださいねハインズ様っ!アルフなんかに負けないでくださいッ!」
「………。」
「ありがとうスカーレット、でもどうだろうな?ビアンカに尋常じゃない強さと言われるくらいなら…普通に考えて僕が勝てる見込みはなさそうだが」
「そんなことありませんよッ!ハインズ様の方がアルフより強いに決まってますっ!」
「まぁお手柔らかに頼むよ。チャンスがあれば君と手合わせができると思い立ったら居ても立ってもいられなくなってね。」
「………。」
いや……無理だろ。
これは八百長するしかない。
どうあっても俺がハインズに勝っていいわけが……。
あぁでもそうするとロッドはどうなるんだ…?
ハインズ以外の王子だったら別に何にも気にせずボコボコにしてやるが、ハインズだけはまずい。
だって俺はスカーレットの代理だぞ?
スカーレットの従者なんだぞ?
主人の将来の夫をボコボコにする従者なんて、そんな事あっていいわけが無い。
「アルフ君。もしもトーナメントで手合わせすることになったら全力で頼むよ。楽しみにしているんだ」
「アルフ、あんた分かってんでしょうね。全力でと言われたんだから全力でやりなさいよ?手を抜いたら承知しないからね」
「………」
どうすんだよこれ……。
「聞いてんの?アルフ?」
人の気持ちも知らないで何を呑気な……。
勘弁してくれよ、お嬢様。
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