第175話 年齢は気にしないでおこうね
部屋に戻った俺はこの日はゆっくりと過ごした。
翌日も部屋で過ごし、リアーヌが来るのを待つ。
「ただいまー」
部屋でコタツに入ってくると、買い物に行っていたナタリアが戻ってきた。
「外はどうだった?」
コタツに入ったナタリアに町の様子を聞いてみる。
「大騒ぎだね。買い物をしていると店の人とかに色々聞かれたし」
昨日の夕方に魔族が侵攻してきたことと北のトレッタの町が落ちたことが公表された。
それと同時に緊急依頼も公示されたらしい。
「暴動みたいなことにはなっていないのか?」
「そこまでじゃないね。遠いし、何とかなるだろうって感じ。でも、物価が上がるんじゃないかみたいな心配はあった」
その程度なら問題ないな。
「そこは仕方がない。さっさと終わらせよう」
「そうだね。それとウチの人達は緊急依頼を受けるっていうことで王都に行くんだって。クライヴさんがそういうわけだから自分達でご飯を用意しろってさ」
レイラは自主性に任せるって言っていたが、他のクランメンバーは依頼を受けるようだ。
クライヴの飯が食べられないのは残念だが、仕方がないだろう。
「今さらだけど、お前らって王都の人間だよな? 行かなくて良かったか?」
ナタリアとアリスは王都出身だし、アニーみたいに守りたいと思っているかもしれない。
「王都は大丈夫でしょ」
「…………うん。王都だけは厳重だし、優秀なAランク冒険者も多い」
「だよね。ユウマの手伝いの方をするよ」
「…………うん。ついていく」
良い奴ら。
でも、アリスは起き上がってほしかったなー……
「じゃあ、問題ないな。飯は俺達で作るか……」
「あ、ユウマは座ってていいからね」
「…………私達が作るから」
ナタリアとアリスが慌てて止めてくる。
アリスなんかは起き上がってきたし。
「あっそ。じゃあ、頼むわ。リアーヌとパメラは来るのかねー?」
「あ、マスター、パメラさんは来るっぽいですね。先ほど、同僚の夕食の誘いを断っていました」
AIちゃんが教えてくれた。
「相変わらず、筒抜け……」
「…………タマちゃんがいるからね」
2人がヒソヒソと内緒話をする。
「リアーヌがわからんな」
連絡を取れない。
あいつの場合は転移で王都に行っている場合もあるし、向こうからやってこないと何をしているのかがわからないのだ。
この前みたいに10日も来なかったら心配になる。
「何か式神を作りますか?」
「あいつ、何が好きなんだ?」
「さあ? でも、狛ちゃんやタマちゃんを可愛がっていましたし、かわいい動物が良いと思います。間違っても爬虫類や虫はダメですよ」
嫌いそうだったなー……
「ネズミは?」
旧鼠。
「良い印象がないです。もっとかわいいので」
まあ、ネズミは食料を荒らす害獣か。
俺とAIちゃんが相談をしていると、扉の方にリアーヌが現れた。
「ただいま戻りました」
リアーヌはそう言うと、靴を脱ぎ、こちらにやってくる。
そして、定位置である俺の隣に座ると、コタツに入った。
「リアーヌ、お前、動物だと何が好きだ?」
「動物ですか? 特には……なんでです?」
「お前が王都に行っていると連絡が取れないだろ。この前も10日ほどいなかったし」
「あー……そういうことですか。私は大丈夫ですよ。ケネスに仕事は任せましたし、当分は叔父上に報告しに行くくらいで王都に長く滞在することはないです。普通にギルドの寮で寝泊まりしますし、これからはユウマ様のそばにいます」
そう言って、少し腰を上げると、触れるくらいの距離で腰を下ろす。
「管理したがる男と管理されたがる女……」
アニーがボソッとつぶやいた。
「黙れ、堕落女。お前こそユウマ様におんぶにだっこだろ」
「楽でいいわー」
アニーはクランの副リーダーの面影がないな。
「リアーヌ、ドラゴンのところに行くのは夕食を食べ終わってからでいいな?」
「はい。そのくらいなら十分に暗いでしょうし、そうしましょう」
リアーヌが笑顔で頷いた。
「リアーヌ様、夕食を食べます? まとめて作っちゃいますけど」
ナタリアがリアーヌに聞く。
「悪いな。私は食事を作れないんだ…………いや、覚えるか。よし、手伝おう」
「あ、いいです。なんかユウマと同じ匂いがするんで」
ナタリアがすぐに断った。
「そ、そうか? じゃあ、仕方がないな」
リアーヌがニヤニヤと笑う。
『発情してますねー……同じという言葉だけに反応してます』
放っておけ。
その後、ナタリアとリリー、あと珍しくアリスが夕食を作りにいったので待っていると、パメラがやってくる。
パメラがやってくると、3人がすぐに夕食を持ってきたので皆で食べた。
そして、夕食を終えると、出発の準備をしだす。
「ドラゴンいわく、すぐに着くらしいからちょっと待ってろよー」
そう言いながらナタリアにもらったマフラーを首に巻いた。
すると、防寒着を着たリリーが戻ってくる。
「お待たせー! 行こう! 行こう!」
リリーはよほどドラゴンに乗りたいらしく急かしてきた。
「ユウマ、待っている間に温泉に入ってもいい?」
ナタリアが聞いてくる。
「いいぞー。この前は中途半端だったし、ゆっくり入れ」
そう言うと、ナタリアだけでなく、ナタリアも生首の2人も起き上がり、部屋から出ていった。
ついでにリリーの姿もない。
「私達が寒い目に遭うっていうのに薄情な奴らですね」
リアーヌが見上げてくる。
「まあまあ。どうせコタツでぬくぬくと過ごしているわけですから同じことですよ」
AIちゃんがリアーヌを宥めているが、AIちゃんはAIちゃんでタンスを開け、タオルと替えの下着や服を用意していた。
「子ギツネ……お前は主と同じ苦労をする気概はないのか?」
リアーヌが呆れた顔でAIちゃんに聞く。
「私はマスターのために絶景を見るんです! リンクするんです!」
だから見ねーっての。
「リアーヌ、帰ったら入ればいいだろ」
「それもそうですね。じゃあ、ご一緒に…………ひやー! そんなこと言えない!」
リアーヌが両手で顔を覆った。
『マスター、知ってます? この発情幼女って、85歳なんですよ』
年齢を言ってやるな。
「ど、ど、どうしよう!? ん?」
リアーヌが恥ずかしがっていると、パメラがリアーヌの服をくいっくいっと引っ張った。
「リアーヌ様」
「何だ?」
リアーヌがパメラの方を向くと、パメラが自分の顔を指差す。
「私も」
「……まあ、そうだな。私も取りに戻るか……ユウマ様、すみませんが、一度、寮に戻りますので」
2人も着替えを取りに戻るらしく、転移で消えていった。
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