第165話 雪だー!


 ドラゴンから魔族のことを聞いて、10日が経った。

 あれからリアーヌは一度も俺の部屋に来ていないし、会ってもいない。

 その間、俺達はやることもないので俺の部屋でグダグダと過ごしている。


 今日もまた、生首の2人と正面で本を読んでいるナタリア、そして、隣に座っているAIちゃんと話をしながら過ごしていた。


「…………そういえば、リリーは?」


 生首アリスがナタリアを見上げながら聞く。


「まだ寝てる。昨日寝るのが遅かったみたい」

「…………ああ、昨日はユウマが寝させてくれなかったからね」


 言い方。


「カードゲームをしていただけだろ」

「…………まあね」


 ナタリアは早くに寝たが、リリーと俺はずっとカードゲームをしていた。

 アリスとアニーは生首だった。


「リリーさん、弱いですもんねー。マスターが唯一、勝てるのがリリーさんだから……」


 あいつ、めっちゃ弱い。

 実に良い奴だと思う。


「それで遅くまで付き合わせたの?」


 ナタリアが呆れる。


「いえ、リリーさんは眠そうでしたけど、マスターがあまりにも楽しそうにしているので何も言わずにニコニコと笑って付き合ってました」


 良い奴……


「私とはすぐにやめるのにね」

「お前、強すぎ。インチキしてるだろ」


 腹黒いらしいし。


「してないよー。じゃあ、もう一回やってみる?」

「いいぞ」


 俺とナタリアがカードゲームをしようと思い、机の上に置いてあるカードに手を伸ばすと、扉が開かれ、リリーが満面の笑みで部屋に入ってきた。


「雪だよ! 雪! 積もってる!」


 窓から外を見ればわかるよ。

 白いもん。


「いいから朝飯を食え」

「あ、そうだった!」


 リリーは部屋を出ると、すぐに朝食を持って戻ってきた。

 そして、定位置であるナタリアの隣に座り、朝食を食べだす。


「すごいね! 積もったねー!」

「そうだな」

「ユウマ、ユウマ!」


 朝から元気だなー……


「何だよ」

「遊びに行こうよ。雪遊びしよ!」


 えー……

 寒いよ……


「いいけど、暖かい格好をしろよ。お前もアニーほどじゃないけど、足を出してるだろ」


 仕方がない。

 約束したし、昨日は付き合わせちゃったみたいだし。


「うん! かまくら作ろー」


 覚えてるし……

 よほど楽しみだったんだな。


「私も付き合うよ」


 ナタリアが付き合ってくれるらしい。

 だが、その言葉を聞いた子ギツネはコタツの中に潜っていく。


 俺はコタツに手を突っ込むと、尻尾を掴み、引っ張る。


『やーん、寒いー……』


 引っ張っているのだが、AIちゃんは何かを掴んでいるようでなかなか出てこない。


「子ギツネ、私の腰を掴まないで」


 アニーか。


『アニーさんも行きましょうよ』

「嫌」


 アニーはすげー嫌そうだ。


『じゃあ、こっち』

「…………私は戦力にならないから掴まないで」


 今度はアリスかい。


「ユウマ、AIちゃんが可哀想だよ」


 ナタリアがAIちゃんを庇った。


『そうですよー』

「こいつ、日に日に怠惰になっていくんだが……」


 最初の頃はマスターより先に起きないといけないからとか言って、いつも起こしてくれたのに最近はまったく起きてこない。

 しかも、起きてもすぐにコタツに潜っていく。


『寒いのはダメなんですよー……』


 キツネのくせに。


「わかったから出てこい。パメラは……絶対に来ないし、3人で行くか」


 あいつも嫌なのはきっぱり断るからな。


「そうだね」

「よーし、頑張るぞー」


 何を頑張るんだろう?

 遊びか?


「私、防寒着を取ってくるよ」


 ナタリアがそう言って立ち上がると、部屋を出ていった。

 すると、AIちゃんがコタツから出てくる。


「お前、私はマスターのスキルだからマスターから離れませんって言ってなかったか?」

「ここから狛ちゃんの視界をリンクして見守っています」


 狛ちゃんを連れていけってことね。


「アニー、散歩に行かないか?」

「狛ちゃんの散歩は昨日行った。デートに誘ってくれるならリアーヌを連れてきて。温泉に行きたい」


 本当に外に出たくないんだなー。


 俺がそのまま待っていると、リリーが朝食を食べ終え、片付けに行った。

 そして、リリーが戻ってくると、ナタリアも戻ってくる。


「はい、リリー、これを着て」

「わかった!」


 俺達は暖かい格好に着替えると、部屋を出て、狛ちゃんのところに向かった。


「狛ちゃーん、外に出るかー? 雪が積もっているけど……」


 そう聞くと、狛ちゃんがソファーから降り、尻尾を振って、俺達の足元をくるくると回る。


「そうか、そうか」


 物好きな犬だわ。


 俺達は狛ちゃんを連れて、寮を出る。

 すると、一面に白い雪が積もっており、寒かった。


「すごーい!」


 リリーは嬉しそうに地面の雪をかき集める。


「リリー、あっちの広場でやろう。この辺りは他の住民に迷惑になる」

「それもそうだね! よし、行こう!」


 俺達が歩いていると、人通りは少ないが、やはり子供達ははしゃいでいた。

 そして、俺とナタリアは近くにある広場に行くと、はしゃぐリリーをお父さんとお母さんの気分で眺める。

 その後、リリーの要望通り、かまくらを作り、ついでに雪だるまも一緒に作った。

 正直、もう寒さを通り越して楽しくなってきている。


「リリー、そろそろ買い物に行って、お昼ご飯にしようよー」


 ナタリアが向こうの方で雪玉を投げているリリーを呼ぶ。


「わかったー!」


 俺達は昼前になると、買い物に行き、寮に戻った。

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