第108話 謁見?
馬車に乗っていると、リアーヌが次々に質問を投げかけてくる。
オットーは完全にいないものとされており、少し気の毒だったが、そうこうしていると、馬車が止まった。
「着いたか……一応、言っておきますが、非公式な謁見なため過度な礼儀は不要だそうです。ただ、失礼にはならないようにしてください」
リアーヌが釘を刺してくる。
「わかっている」
「ですよね。すみません、一応、言っておかないといけないことなんで」
「それもわかっている。俺達は身分もない冒険者だからな」
そんな者に礼儀を求めない。
生きる世界が違うからだ。
とはいえ、限度はあるぞってこと。
「すみません……ユウマ様はよくわかってらっしゃるとは思うんですけど、異世界の方のもので…………あ、お前もわかったな?」
リアーヌは俺とオットーに対する言葉遣いも態度も表情も何もかも違う。
「あ、はい……あまりしゃべらないようにしますね」
「なんだわかっているじゃないか。あ、いや、Aランクだったな」
Aランクともなれば貴族なんかとの付き合いもあるのかもしれない。
「会うのは国王陛下一人か?」
「はい。もちろん、護衛の騎士はついていると思いますがね」
そりゃそうだろ。
「武器は?」
「持っているんです?」
「俺はこの護符だ」
懐から護符の束を取り出し、リアーヌに渡した。
「では、お預かりします。お前も持ってないよな?」
リアーヌは受け取ると、オットーにも確認する。
「はい」
「よろしい。まあ、魔法なんかもあるが、何かしようとしたら私や護衛の騎士が有無を言わさずに殺すからな」
「わかってます」
「では、行こうか。ユウマ様、私についてきてください」
リアーヌは俺には注意せずに馬車から降りる。
俺達も馬車から降りると、すでに王城の中の中庭のようで数人の兵士が馬車を囲んでいた。
そのうちの1人がリアーヌに近づいてくる。
「お待ちしておりました、リアーヌ様。国王陛下がお待ちです。どうぞこちらへ」
「うむ」
兵士が先頭になって歩き出すと、リアーヌも続いたため、俺達も歩いていった。
そのまま歩いていき、王宮に入る。
王宮に入ると、召使いや兵士とすれ違うが、その度に端に避け、俺達というか、リアーヌに頭を下げていた。
多分だが、リアーヌは相当、格が上の貴族なんだろう。
俺達は王宮内を進んでいき、階段を昇っていくと、豪華な扉が見えてきた。
扉の前には兵士が立っており、番をしている。
『あそこに要人がいるって丸わかりですね』
AIちゃんが指摘してきた。
『侵入者を想定していないのかもしれないな。まあ、ウチの国じゃないし、放っておこう』
『それもそうですね』
この世界は魔法があるし、そういう特別な警備もあるのかもしれないし。
俺とAIちゃんが念話で話していると、扉の前までやってくる。
「リアーヌ様と客人をお連れした。陛下に取り次いでほしい」
俺達を連れてきてくれた兵士が番をしている兵士に声をかけた。
「かしこまりました」
番をしている兵士は頷くと、扉をノックする。
「陛下、リアーヌ様がお見えです」
『わかった』
中から壮年の男の声が聞こえた。
すると、兵士が下がっていき、リアーヌが扉を開ける。
そして、一礼をすると部屋に入った。
俺とオットーもそれに倣い、一礼をし、部屋に入る。
部屋の中は扉の豪華さとは裏腹に質素な作りで広くもない。
窓があるが、それ以外には本棚が並んでおり、読書部屋って感じだ。
そんな部屋の真ん中には立派な白い髭をした壮年の男がテーブルについていた。
そして、そんな男のそばには若いメイドと共に白銀の鎧を着たこれまた壮年の男が立っている。
どう見ても、王様と護衛の騎士だろう。
「おー、リアーヌ、お前は相変わらず、かわいらしいな」
王様らしき男は立ち上がると、手を広げてリアーヌを歓迎する。
「叔父上、毎回、それを言うのはやめてください」
お前、王様の姪っ子かい……
相当、上の方の貴族かと思っていたが、王族だったのか。
「お前がいつまで経っても成長せんからだ。10以上も下の娘に身長を抜かれておるぞ」
「構いません」
「嫁の貰い手がなくなるぞ?」
「殿方は偉そうなことを言いますが、皆、小さい方が好きなのです」
そうか?
お前の元居た世界だけだろ。
「まあ、好きにすればいいがの……さて、そやつらか?」
王様が俺とオットーを見る。
「はい。こちらはユウマ様です。そして、こちらがオットー。例の件で使えるかもしれないと思い、連れてきました」
リアーヌが俺達を紹介してくれた。
「そうか……私がこの国を治めるジェラールである。急な呼び出しに応じてくれて感謝する」
王様は頭こそ下げなかったが、礼を述べる。
「…………セリアの町で冒険者をしているユウマです。この度はお招きいただき光栄に存じます」
待っていてもオットーが挨拶をしないので俺が先に挨拶をした。
オットーはAランクだし、先がいいかなと思って譲ったのだが、俺でいいらしい。
もしくは、そういうことがわからないか、この国ではそういう作法がないかだろう。
「オットーと申します。お招きいただき感謝します」
オットーも挨拶をする。
「うむ。まあ、かたぐるしいのはこれまでにしよう。座ってくれ」
俺達は王様に勧められたので席に着く。
すると、メイドがお茶の準備をし出した。
「叔父上、まずは先日のスタンピードの褒賞の方を」
リアーヌが仕切り、王様に勧める。
「そうだな。おい」
「はっ」
王様が騎士を見ると、騎士が一礼し、俺のもとにやってくる。
そして、その場で跪くと、両手を差し上げた。
すると、両手に小袋と共に宝石が散りばめられた鞘に入った剣が現れる。
「ユウマ、スタンピードの解決及び魔族討伐、さらには娘の危機を救ってもらい感謝する。我が国では武功には剣を贈ると決まっておる。受け取ってくれ」
やっぱり記念品か。
こういうのって売れないんだよなー。
まあ、名誉だけど。
「ありがとうございます」
俺は金貨が入っているだろう小袋と剣を受け取ると、両手で掲げながら頭を下げる。
「うむ。それでちと聞きたいのだが、いいか?」
「何なりと」
「お前、12人も嫁がいたって本当か?」
それかい……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます