最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

出雲大吉

第1章

第001話 異世界転移?


 俺は死んだ。


 死因は老衰。

 99歳で死んだのだから大往生だろう。

 まあ、あと1年で100歳だったからそこまでは生きたいと思っていたのだが、こればっかりは仕方がない。


 しかし、死ねば、極楽浄土か地獄に行くと言われていた。

 果たして、俺はどっちだろう?


 俺は陰陽師であり、多くの人を救ってきたし、町の寺にも多大な寄付をしてきた。

 その点では極楽浄土に行けるかもしれない。

 だが、自分でも自分がまともな人生を送ってきたとは思っていない。

 妖や霊を祓ってきたが、敵対する人やもう救えない者を殺してきたりもしていたのだ。


 それに家族にも迷惑を…………あれ?

 家族のことが思い出せない……


 両親のことは思い出せる。

 弟や妹のことも思い出せる。


 だが、俺の嫁や子供のことが思い出せない。

 というか、結婚したのか?

 いや、さすがにしているとは思う。


 俺は国で最高の陰陽師の家系の一つの如月家の跡取りだし…………あれ?

 俺って、当主になったんだっけ?


 なんだこれ?

 おかしい……

 若い頃のことは思い出せるが、それ以降が断片的にしか思い出せない。


 俺は99歳で死んだ……

 それまで陰陽師として多くの妖を祓ってきた……

 あれ?

 他には?


 なんだこれ?

 記憶がおかしい……


「――クソッ……って、え?」


 俺は思わず目が覚め、上半身を起こしたのだが、呆けてしまった。

 何故なら布団の上で死んだはずの俺がどこぞの森の中にいたからだ。


「おい、ここはどこだ?」


 思わず、独り言が漏れるくらいには混乱していた。


「どうなって……え?」


 手を頭に持っていこうとした瞬間、またもや呆けてしまった。

 俺の手がしわしわのジジイの手ではなく、若く張りのある手だったからだ。


「おいおい……」


 そのままあちこちを触ってみるが、体中にしわなんかない。

 それどころか、慢性的な頭痛や腰の痛みもなくなっており、何十年前を思い出すかのようだった。


「どうなってんだ? まさか、極楽浄土?」


 極楽浄土って森だったのか……

 川は酒が流れているのか?


『おはようございます、マスター』


 混乱していると、急に脳内に声が聞こえてきた。


「――誰だっ!?」


 すぐに飛び起き、周囲を見渡す。

 しかし、誰もいない。


『私の説明は後にしましょう。まずは敵が接近していますのでそちらの対処をお願いします』

「敵?」


 俺は混乱したままだが、脳内の言葉に従い、霊力を使って、周囲を探ってみる。

 すると、近くの草むらにわずかな妖気を感じた。


「なんだ?」


 妖気的にたいしたことないだろうなと思い、近くに落ちていた石を拾うと、草むらに向かって投げてみる。


「――グギャ!?」


 変な声が聞こえてきたと思ったら草むらががさがさと動き、醜悪な顔をして木の棒を持つ小鬼が姿を現した。


「餓鬼……か?」


 似ているが微妙に違う気がする。


「グギャー!」


 うーん、木の棒を持った餓鬼なんて初めて見たんだが……


『マスター? マスター! 敵が急速に接近中! 対処を! マスター!? 早くしてください!』


 この謎の声も意味わからんし……

 ここ、本当に極楽浄土か?

 餓鬼がいる時点で地獄じゃない?


「やはり生前の行いが……鬱陶しいな!」

「グギャッ!」


 近づいてきた餓鬼もどきを蹴飛ばすと、餓鬼もどきが後方に飛んでいく。


「よくわからんが、声に従っておくか……狐火!」


 餓鬼もどきに向かって指を向けると、指から出た金色の火が餓鬼もどきを襲った。


「グギャッ! グギャギャッー!」


 火に焼かれた餓鬼もどきはその場で転がり、バタバタしながら火を消そうとしているが、火はまったく消える気配を見せず、餓鬼もどきは次第に動かなくなっていく。

 そして、まったく動かなくなると、火が消え、そこには黒い物体が残された。


「うーむ、強さは餓鬼だし、餓鬼かもしれんな」


 きっと新種の餓鬼だろう。


『いいえ、それは餓鬼ではなく、ゴブリンです』


 んー?

 ゴブリン?


「なんだそれ?」

『ゴブリンは魔物です。子供サイズでたいした力はありませんが、繁殖力が強く、数が多いです』


 ふーん……


「そんなのいたかなー? もしかして、ここって異国だったりするのか?」

『マスターから見たらそうでしょう』

「俺、異国の極楽浄土に来たのか? もしくは地獄?」


 なんでだ?


『マスター、冷静に話を聞いてもらえますか?』


 脳内の声が改まって聞いてくる。


「聞こうではないか……俺は人の話をよく聞くようにしているんだ」

『マスターも若い頃は柔軟だったんですね…………晩年は頑固ジジイだったのに』


 おい!


「誰が頑固ジジイだ! 俺は親父や死んだ爺さんとは違うぞ!」


 まったく覚えていないが、俺はあんな風にはならないと思っていたのだ。


『血は争えないってやつですよ……いえ、話が逸れました。説明を致します。まず、マスターは死にました。享年99歳、老衰です』


 知ってる。


「それはわかる。わかるんだが、他のことがまったく思い出せん。というか、俺、99歳か?」


 どう見ても若い。

 しかも、さっきの蹴りは99歳にできることではないし、狐火にしても威力が上がっていた。


『その辺りを詳しく説明致しましょう。マスターは死亡し、異世界に転生されました』

「すまんが、言っていることがまったくわからん」


 何を言っているんだ?





――――――――――――


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