7章 - 03

会合の場に顔を出すと、すでに四人が待機していた。


この四人は、軍の拡大に伴い増やされた幹部、下位四天王である。


幹部は今、私達上位四天王を入れて八人になった。




四人は揃って一礼する。


その中に女が一人いる。私が推薦した者で、かつてシロエの拉致に一役買った元側近だ。




私が定位置に着くと、サードナーとセカンドムも現れた。


ほどなくしてファーストリアも来て、幹部が全員揃う。




各々の管轄の状況説明が行われた。


どこも順調に事が進んでおり、下位の者は自分の成果に少し誇らしげだ。




私は特に話すこともなかったので、問題が無いことと、今後の予定を報告した。




サードナーはつまらなさそうに、こっちも何も無い、と言って終わった。


決戦直後は、勇者にとどめを刺すために積極的に戦場に出ていたが、一向に現れない勇者に愛想をが尽き、最近は籠って鍛錬ばかりしていると聞く。




セカンドムはまた新しい研究を始めたようで、その成果を説明した。


話してもわからないと思っているのか、本当にざっくりとした説明なのが一層怪しさを際立たせる。




最後に、ファーストリアも現状を事務的に話した。




「今日もこれで終わりか?回数を減らしてもいいんじゃないか?」




最近は特に詰める話がなかったので、サードナーはこの会合の意義を問いただした。




「気持ちはわかるが、こうやって認識を合わせるのは重要なことだ」




その問いに、ファーストリアが答える。




「こうして新しい四天王の活躍を伺えるのも、私としては興味深い」




セカンドムがそう付け加える。


それに満足している者もいれば、警戒しているように見える者もいた。


私の元部下は無反応であった。視線だけがセカンドムに向いている。


その素っ気なさに、私もこんな風に見られているのだろうと考えてしまう。




「それにだ、今日はお前たちに話さなければならないことがある」




ファーストリアはそう切り出した。




「勇者についてだ」




その言葉に全員が反応した。場の空気が一気に引き締まる。




「依然として姿をくらましているが、このまま出てこないと思っている者はいないだろう。私は近い内にここへ攻めて来ると踏んでいる」


「ほぉ、その根拠は?」




サードナーが真っ先に食いついた。




「法律の樹の寿命…ですか?」


「そうだ。人間はギリギリのところで延命させているようだが、私の見立てではあと一月持たない」




セカンドムはすでに予見していたようだ。




「もはや、勇者が人間たちを導けるとしたら、それしか道は残されていない」


「…法壊機と魔王様」




私の言葉に、ファーストリアはその通りだと頷いた。




「我々の侵略を止めるには2つの事を成さなければならない。一つは法律の樹を死滅させる寄生樹の根源である魔王様と私の討伐。アレは魔王様と私の魔力で動いている。私達の魔力を搾取して解析すれば、引き離す方法が見つかるかもしれない」




ファーストリアは話しながら、自分の心臓に手を当てた。




「もう一つは魔素を魔界の性質に変換する法壊機の破壊。法壊機を止めなければ、仮に法律の樹を救えたとしても、魔界化してしまった世界は変えられない」




起動から一年以上が経過した法壊機によって、世界は魔界の魔素で染まっていた。


魔界の魔素は人間にそれほど影響は無いようだが、魔族がどこでも力を発揮できるのは脅威そのもののはずだ。人間たちにはもう安息の地は無いということだ。




「ようするに、勇者達はギリギリまで力を蓄えて、最後の賭けに出てくるというわけでしょうか?」




下位の一人が簡潔にまとめる。




「だいぶ分の悪い賭けだと思うが、あの勇者のことだ。一筋縄ではないだろう」


「まさか、勇者がのこのこ現れるまで、ここを離れるなとか言うつもりか?」


「お前にしては察しがいいな」




サードナーは、マジか?と少し肩をすくめるが、勇者とケリをつけられるならと納得したようだ。




「私は研究がありますから、どの道ここにいます」


「私も外に出向くこともありません。万が一の為にもそれがよいと思います」




これで、勇者は幹部全員が待ち構える城に乗り込み、すべてを退けることが必至になった。

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