1章 - 03

「まずはフォース、昇格おめでとう。これからも魔王様のために尽力してほしい」




ファーストリアの静かな物言いからは気品さを感じる。


髪も服装もきれいに整えられており、一見戦場に出ているとは思えないが、四天王最強は誰もが認めている。




「もちろんです。ファーストリア様」




私は軽くほほえんで答えた。


それを見てサードナーが「はっ…」と小さく悪態をつく。


セカンドムは相変わらずだなと言わんばかりにニヤついていた。




「では、さっそく本題に入ろう」


「勇者だろ!俺にやらせればよかったのによ」




サードナーは組んでいた腕をほどき、拳をファーストリアに向けた。




「そうだったかもしれないな」




それをファーストリアは目もくれずに軽く流す。




「まぁ、でも少々驚きましたよ。あのクアドラがあんな勇者に負けるとは」




セカンドムはその意外な結果に興味がある様子だった。




クアドラとは元四天王の一人。勇者に敗れ、ここへ戻ってくることはなかった戦士だ。


儀を重んじる変わった魔族だったが、私に色眼鏡を使わなかった数少ない男の一人だった。




「クアドラのことは残念であり、この事態は重く受け止めなくてはならない」


「なら、今度こそ俺にやらせろ」


「いや、サードナーには北へ向かってもらう」


「はぁ!?なんでだよ!」




不服な回答にサードナーは牙を向けた。




「そこには先代勇者の遺品があり、現勇者の師にあたる者が預かっているらしい」




師という言葉にサードナーは少し反応する。




「今の勇者と比べれば、その師の方が強いのは明らか。そこから遺品を奪い取る。お前向けではないか?」


「当然、そいつを殺してもいいんだろ?」


「もちろんだ」




サードナーは満足したのか再び腕を組んだ。




戦えればなんでもいいのか?


私はそのわかりやす過ぎる態度に嫌悪した。


こんなのが四天王で、私はようやくそれと対等かまだ下。




「セカンドムは引き続き、あの装置の完成を目指してくれ」


「承知しています」




セカンドムは軽く頭を下げた。




「そしてフォース」


「は、はい」




ファーストリアが少し間を置き、真っ直ぐに私の目を見る。


透き通った緑色の瞳はまるで宝石だ。そして同時に深い闇が広がっているように感じる。


無意識にその奥を覗こうとしてしまっているのか、私は目を離すことができなかった。




「お前には、ウィンタラルの姫君を拉致してきてほしい」

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