毎日喧嘩する幼馴染の美少女が俺の許嫁になったんだが、案外悪くない件

あおぞら

第1章 よく喧嘩する幼馴染から許嫁へ

第1話 許嫁

 ———幼馴染。

 優しくて可愛い幼馴染が甲斐甲斐しくお世話をしてくれて、毎日一緒に学校に行く。

 この他にも、世のオタク達はこの幼馴染と言う存在に、それはもう様々な幻想を抱くのであろうが……1つだけ言っておこう。


 ———あんなのフィクションだけだ。


 俺の幼馴染は確かに美人だがそれ以上に———まぁ見てもらった方が早いだろう。


 これを見れば皆の想像している、可愛いくて優しい幼馴染が存在することなどあり得ないと分かるはずだ。








 ———とある学校の2年3組の教室にて。


 普通の高校生ならば、地獄の様な時間であるテスト返却。

 そんな時間に、クラスの生徒達全員が、茶髪で顔面偏差値上の下ギリギリの俺———天音直人あまねなおとと、その対面に座る麗しい漆黒のロングストレートの顔面偏差値上の上の美少女であり幼馴染の———遠月澪とおつきみおを囲んでいた。


「どうだった直人!? やっぱり今回も負けたか!?」

「お前のことだしそろそろ勝てるよな? 頼む勝ってくれ! 今回負けたら賭けが俺の負けになっちまうんだよ!」

「ねぇねぇ澪ちゃん! 今回のテストどうだったの? 私は相変わらずの爆死だけど、澪ちゃんはやっぱり1位?」

「でも今回難しかったよねぇ……特に数学なんて意味不明な問題ばっかりだったしさー」


 周りが好き勝手言う中、帰ってきた素点表(定期テストの全ての教科の点数と平均点が書いてある紙)を握り締めた俺と澪は、お互い緊張し合いながらゆっくりと見せ合い———同時に対極の表情へと変化した。


「ょっしぃッッ!!」

「……くっ……」

「う、嘘だろ……!? あの天下無敵の遠月が負ける……? つまり俺も(賭けで)負けたというのか……!?」

「はっ! ざまぁねぇなぁ! 直人を信じないからこう言うことになるんだよ!」

「くそぉおおおおおおおお!!」


 悔しがる1部の男子の話を聞きながら、俺は負けて悔しそうな澪の方に笑みを浮かべて視線を定める。

 そして思いっきり言ってやった。


「澪さん……俺の勝ちぃ! 何で負けたか明日までに考えといてください! そして必ず考えを教えてください!」

「……っ、た、たかが5点勝ったくらいで、あ、あんまり調子に乗らないでくれるかしら……?」

「え、何だって? 負け犬が何か遠吠えしている気がしたんだけど俺の気のせ———って痛っ!? ちょっ、痛っ……おい脛蹴るのやめろ!」


 俺は、脛を狙って何度も蹴ってくる暴力女から思わず離れる。

 そんな暴力女こと澪は、大してない胸を張り、腕を組んで仁王立ちをしながら、負け犬のくせに強者感出しまくって何やら吠え出した。


「いいかしら? 私と直人のこれまでの戦績は8戦6勝2敗なのよ? 貴方の方が断然負けているじゃない」

「え? でも今回負けたのは澪では? 昔の戦績だして言い訳とかなっさけなぁ!」


 俺が口に手を添えて『ぷーくすくすー!』と笑うと、これ見よがしに澪の眉がぴくりと痙攣する。

 それに連動して口角をヒクヒク引き攣らせながら俺を睨み、宣言した。

 

「つ、次は絶対に完膚なきまでにぶっ潰してやるわッ!! 覚悟してなさい直人!!」

「出来るもんならやってみな。負け犬ちゃん。まぁどうせ無理だろうけどな?」

「くっ……無駄に煽り性能だけは高いわね……!」

「ハハハハハハハハハハ!! 久し振りに勝てて普段煽られてたから何倍もキモチィィィィ———ッッ!!」

「ぶっ飛ばすわよ!?」


 他にも———。


「ぐ……馬鹿な……!? 俺のゲッ◯ウガが負けるだと……!?」


 俺は、テレビに表示された某大人気格闘ゲームの『game set』の文字と、俺の操作していたキャラクターが流れ星になる様子を見ながら愕然としていた。

 その横で腹立つ笑みを浮かべた澪が俺を見下している。


「ふふっ……あれだけ『澪には絶対負けん』『お前なんて1分以内に勝てるわ』なんてほざいていたけど……1分以内に負けたのは直人だったわね?」

「ちょ、調子が悪かっただけだし! 次やれば勝てるし!」

「でも勝負は勝負でしょう? はい、約束のジュースとお菓子買ってきなさい。私の好きなのは分かってるわよね? ハーゲ◯ダッツのストロベリーよ? それ以外だったらもう1回買ってこさせるから」

「クソッタレがッッ!!」








 ———こんな感じなのが、俺と幼馴染の澪の日常である。

 お互いが負けず嫌いなことも影響して、小さい頃からことあるごとに勝負しては煽り、煽られ返していた。

 一緒に学校に行くこともほぼないし、起こしてもらえることも甲斐甲斐しく世話してもらうこともない。


 ———その筈なのだが……。







「「———お前ら今日から許嫁な」」

「「………は? はぁあああああああああああああああ———ッッ!?!?」」


 俺達は、お互いの父親に、突然そんな言葉を告げられ、思わず大声で絶叫する。


 一体何故、こんなことになってしまったのだろうか……?


 全ては僅か数時間前に遡る———。



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 新作です。

 頑張って甘々書きます。

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