第20話

立ち上がった瞬間に気づく。先ほどまでガヤガヤしていた人たちが誰もいなくなっている。

辺りを見回してもホテルマンさえいなくなった。

鯷球「どうやら人払いをしてくれたんですね」

?「全員サクラ。散っただけだ」

鯷球「春にはいいですが、些か綺麗な桜には見えませんでしたね」

?「例のことは、事実か?」

鯷球「ええ」

?「ご苦労であった。まさか成し遂げるとはな」

鯷球「たまたまですよ」

?「後日、依頼料は振り込んでおく」

鯷球「居場所などは見つかったのでしょうか」

?「君はもうこちら側の人間ではない。これ以上は踏み入れるな」

鯷球「そうですか…」

再びガヤガヤが戻ってくる。

ホテルマンも先ほどとは違う人。本当に全員がサクラだったのだ。

鯷球「見抜けなくなるなんて、だいぶ落ちぶれたな」

―公園―

ブランブランとブランコに揺られる。

心にポカリと開いた穴。

喪失感なのだろうか。鯷球の腰が縛られているかの如く、ブランコから降りれずにいた。

?「球ちゃん?何してるの?」

ふと声の主を見る。

鯷球「葵ちゃん、今日学校だろ?」制服姿の葵が立っていた。

葵「何言ってるの?もう16時だよ?」

鯷球「え?」携帯を開くと16時20分。

葵「どうしたの?なんか変じゃない?」

鯷球「そうか?ちょっと疲れてな」

葵「この間のが今更?」

鯷球「いや、今日の依頼が疲れたんだろう」

葵「へぇ」

鯷球「そういえば茜ちゃんは?」

葵「今日は塾だってさ。頭いいのに熱心だよねぇ」

鯷球「葵ちゃんの部活は?」

葵「テスト期間前だからお休み」

鯷球「もうそんな時期か…」

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