大晦日

勝利だギューちゃん

第1話

大晦日

もうすぐ年が明ける。


流行り病のせいで、自粛されていた紅白も今年は行われる。


僕は、正直興味はない。

昨年までは・・・

いや、前回までというべきか


どうして、今日もを持ったかと言うと・・・


「みんな、のってるかい?」

「イェーイ」


幼馴染の女の子が、アイドル歌手として数年前にデビューを果たした。

まや。

河内まや。


「まやちゃんは、アイドルになるの?」

「うん、ゆうくんは?」

「まだ、わからないけど」

「けど?」

「まやちゃん、アイドルになったら、僕の事なんて忘れるんだろうな」

「そんなことないよ。そうなっても仲良しだよ」


幼き日の会話も懐かしい。


まやちゃんの有言実行で、それが花開いた。

そして、今回紅白に初出場する。

とても、僕は会場にはいけない。


なので、テレビで応援することにした。


まやちゃんは、会場ではなくて野外で出演することになった。

もうすぐ、まやの出番だな。


ピンポーン


誰か来たようだ。

誰だよ、こんな時に・・・


ドアを開ける。


「ゆうくん、久しぶり」

「あれ?まやちゃん?どうして?」

「どうしてでしょう」

「今、紅白に出ているはずしゃ・・・」


画面を見る。

確かに彼女が歌っている。


「ああ、あれ録画」

「録画?生じゃないの」

「そうだよ。あそこの客席を見てみて」


画面を見る。

客席には、クラスメイトなどほとんどが知った顔だ。


「悪い意味じゃないんだよ。ゆうくんに声をかけなかったのは」

「どうして?」

「言ったでしょ?何があってもゆうくんとは仲良しだって。」


とても、嬉しい心遣いだ。

でも、それって、詐欺じゃ・・・


「私は、ゆうくんに支えられてここまで来た」

「僕は何もしてないよ」

「ううん。ゆうくんがいてくれたから、私はアイドルになれたんだよ」


まやちゃん、貝かぶりすぎだよ。


「だから、今度は私がゆうくんの支えになる」

「ありがとう。でも・・・」

「でも?」

「もう少しは自分でがんばってみるよ」

「だーめ」


今僕は、病気で療養している。

流行り病ではないが、闘病生活も長い。


なので、彼女の存在が一番の支えになっている。


「大丈夫だよ。おじさんとおばさん、私の両親も承諾済みだから」


画面では、彼女が引退宣言をしていた。


「みんな、ありがとう。私は大切な人のために、普通の女の子に戻ります」

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大晦日 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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