八幡戦士

やまのでん ようふひと

序文

1 八幡神とタケルの会話

「タケルよ。

 あのものたちの成していることは良きことですか?

 それとも悪しきことですか?」


「申し上げます。

 悪しきことと考えます」


「何故、悪しきことと思うのですか?」


「強き私念をもって流れるべきものを淀ませ、保つべきものを大量に消費してしまいました」


「そうですね! 復活は困難でありましょうか?」


「試みた海進や寒波など、これまで復活のために幾多の手段を講じてまいりましたが、効果は得られませんでした。

 もう打つ手は無きと思料いたします」


「悲しいことですが止むを得ないでしょう。滅後の生とする手段を選択いたしましょう」


 今からおよそ6500万年前、直径12キロメートルの巨大隕石が地球に衝突した。

 その結果1億6千万年もの間、栄華をほしいままにしてきた恐竜は、ほんの一部を残してその殆どは絶滅した。 



2 地球の主八幡神誕生

 遡ること138億年前の出来事。ビッグバンによる宇宙創造。

 初めてビッグバンが提唱された当初、この考え方は全く相手にされなかった。

 彼のアインシュタインですら否定派だった。

 しかし今やこのことについて否定する研究者はおそらく皆無に等しい。

 このため調査や研究がいろいろとなされた。そしてビッグバンの実態や在り様は徐々にではあるが、解明されだしているところである。


 だが「何故ビッグバンが起こったのか」という疑問にいついては、いろいろな説はあるものの、全くその答えは出せていない。

 何故なら、今の科学では「証明できることが何もない」との結論に至ってしまうからである。


 学者が答えられない答え。

 あえてその答えを示すなら、

「點(てん→みちびき)がそこに作用したから」

 である。


 點?


 點とは一体何だ!

 無であるある一点に、突如として宇宙という一つの生命体を誕生させようとの思いが起こった。


 この思いのことを點という。


 この思いがあって後、そのための組み立てが進められ、最終的にビッグバンが実行に移された。そして宇宙は誕生した。


 では、この思いとは一体誰の思いなのか。

 この思いの主は誰か。そこが重大なポイントである。

 その主とは、宇宙という色(物質)の世界にとどまらず、あらゆる全てのものごとを包括する「神」である。


 神?


 穿うがった思いはあろう。

 現在の科学は相当進歩したとはいえ神の存在を未だ証明することができない故に。科学で証明されたものしか信用しないという殆どの学者たちは因ってこのことを肯定しない。

 しかしこんなことができるのは神しかいないのである。

 とりあえずでもよいので、否定は後回しでお願いする。


 では、話を進める。

 それはそのすべてを包括するための「心」を持つ存在。

 この心を持った存在の対象を「無限八幡大神」と呼ぶ。

 いわゆる神である。

 では、無限八幡大神は何故そう思ったのか。

 それは、生命として生きるということや存在する全てのものを生かすという価値、その意と義と名分を確立したいと考えた。

 正しい生き方。

 正しい生かし方。

 この双方によって、正しい生かされ方へとつながる。

 この状態が継続し増法に乗ることを「正法の世」という。


 果たしてそれが「何のために」あらねばならないのかを明確にすること。

 必要があって生きているというこの成り立ちを立証することが、宇宙創造の目的である。

 したがって宇宙は生き物として誕生したわけで、やがてはその命の尽きる時が来ることを我々は覚悟せねばならない。



 さて宇宙を生み出した無限八幡大神は、我が子である宇宙を慈しみ、愛情をこよなく注ぎ込んだ。

 沢山の銀河を誕生させ、それぞれに生命を宿す星も誕生させた。

 それらの星には無限八幡大神の生命エネルギーを分かつ分身としての神々も次々と誕生した。

 その神たちは無限八幡大神と心を一つにして目的達成に向けて行動を共にしたのである。


 しかしその思いとは裏腹に、現実は艱難辛苦かんなんしんくの連続であった。例えば、せっかく完成に至った銀河同士が大衝突を起こし、その双方の銀河が壊滅するという大惨事が起こってしまったことがある。

 これは無限八幡大神にとって、とてつもなく辛く悲しい大事件だった。


 しかしこのような悲惨な事件が多々起こっても、無限八幡大神はめげたりはしない。

 宇宙が生まれてから地球時間(地球の世界協定時)でいうところの約90数億年が経ったころ、我らが生きるところの銀河系を作り太陽を作った。

 太陽が形作られると時期をほぼ同じくして水星、金星などもその姿を現し始め、生命を育むための地球も誕生させる。

 しかしこの時点ではまだ地球には無限八幡大神の分身である神は誕生していない。何故ならばこの時点ではまだ地球は心を宿していないからである。


 心とは意識のことである。心は古代脳や中枢神経が形成されて初めて発生する。


 人類で例えるならば、卵子が受精すると細胞分裂が始まり成長が始まる。

 しかしこの時点ではまだ心は存在せず、生命を宿した細胞がDNAに従って分裂増殖しているに過ぎない。

 胎児が成長していくにつれて脳も形成されることになるが、脳ができて初めてそこに心が芽生える。

 したがって未熟な状態の胎児でも当然心を持っている。

 胎児のうちに体験する事象や語りかけられた言葉などは、胎児の心に刻まれている。

 このことが生まれてからの成長に大きく影響することはよく知られていることである。


 例外なく地球も成長するにつれ、心が芽生える。


 つまり地球の主が誕生するのだ。


 この理論は、あなたの心があなたそのものの主であるのと同じということを意味している。

 つまり、あなたを生かすも殺すも、あなたの心次第ということなのだ。


 ところで宇宙を司る神が無限八幡大神であるならば、その分身である地球を司る神は地球八幡神(以後単に「八幡神」と呼ぼう)ということに成ろう。

 しかるに八幡神は、無限八幡大神の守護を受けながら成長し、やがて自立して宇宙の一員としての地球の成すべき役割に責任をもって取り組むことになる。

 この成り立ちは、人間社会と同一と考えることができる。


 地球は八幡神が誕生してからしばらくして生命を宿す星となる。

 地球は星としては極めて小さいが、この後宇宙にとってとてつもなく大きな存在となっていく。


 さて、地球が辿ってきた誕生からの約46億年の間、やはり八幡神も地球において多発した問題に苦しんだ。

 冒頭の大隕石の衝突はそのひとつの事象である。


 そして時は今、八幡神は最大の悩みと言えるほどの事態を抱えてしまった。

 地球に於ける「末法」というこれまでになかった大きな歪み現象が起こってしまったのである。

 地球が末法となっているということは全宇宙も末法ということでもある。


「なんだそれ。飛躍させ過ぎ!!」

 と批判的に思われるかもしれないが、例えば体の一部に癌ができれば、その母体は癌患者ということになるのと同じ理屈である。


 無限八幡大神から与えられた地球の役割を完遂するため、八幡神の末法との戦いは以後容赦のないものへと突き進んでいくことになる。



3 生命誕生までの課題と経緯 

 ところで何故地球は末法の世になってしまったのか。

 その原因を探るため、まずは宇宙草創期からの流れを追うこととしてみよう。


 宇宙は物質でできている。

 物質は大きく分けて無機物と有機物の二種類からなっているが、最初から宇宙にこの双方が存在したわけではない。

 ビッグバンによって巻き散らかされた物質は、その全てが水素やヘリウムなどの無機物であった。

 誕生した宇宙を目的に沿う形で成長させていくためには、生命を誕生させその活動を確立させる必要がある。

 しかし無機物だけの集まりでは、そもそも生命を誕生させることなどできよう筈もない。


 ビッグバン直後の原始宇宙は、超高温で超高密度な状態であった。

 しかし光速で膨張する宇宙は、時間の経過とともに徐々に冷却され、物質の間には空間ができた。

 この空間は物質同士の質量の差による衝突を招く。

 超高速での衝突の繰り返しで、物質には化学反応が起こり、いろいろな物質へと変化する。

 その変化した物質同士は更に衝突を繰り返し、高熱を伴って塊を形成していく。

 大きな塊は小さな塊を引き寄せ更に大きな塊となっていく。


 やがて巨大な星があちこちで誕生する。

 この衝突は空間に渦を生じさせ、この渦によって星は回転を始める。

 ブラックホールはこのための大きな役割を果たしている。


 このようにして宇宙は形作られてきたが、まだ初期のこの段階では有機物は存在していない。まだ環境が整っていないのである。


 有機物の存在に必須なものといえば、水である。

 水素はビッグバン当初から大量に存在していた。これが水の生成につながった。

 したがってある程度形作られた宇宙には大量の水が存在するようになる。

 例えば太陽系の惑星のひとつ「土星」、この土星には輪が存在するが、その輪を形成するそのほとんどは氷の粒であることが既に証明されている。


 地球も原始の状態であったころでも水は既にそれなりに存在した。したがってこの環境に因って地球内においても有機物の生成は始まっていたのだ。

 また水を大量に含む宇宙空間では長きにわたり物質の衝突が激しく繰り返されていたため、有機物は地球誕生よりはるか以前に生成されていたのである。


 水は有機物を運ぶためのカプセルのようなものでもある。

 したがって地球に衝突する大量の隕石、土星の輪の氷も含め、これらの隕石などに含まれた水のカプセルに包み込まれた有機物も大量に地球に降り注がれた。

 その水はやがて地球に海を形成することになる。


 ここまでくると、生命誕生の基盤ができてきたように思えるが、生命はそんなに簡単には誕生しない。


 生命を宿らせるとは、有機物を主として構成されたいわゆる細胞に地球(宇宙)の生命エネルギーを注入するということなのである。

 宇宙線や紫外線の照射の強弱や量、噴火や雷による電撃の状態、大気の構成要素などのあらゆる偶然とも思えるタイミングや現象が理にかなった形で起こらねばならないからである。

 それができて初めて生命を宿した活動する細胞なるものを誕生させることができるのである。


 その偶然とも思える事象を発生させることが、とてつもなく大きな課題であることに間違いはない。

 そのための試行錯誤はそれこそ数えきれないほど繰り返された。 

 しかしその難関は地球誕生からおよそ10億年も経過しないうちに見事に突破した。地球(宇宙)の生命エネルギーを細胞に宿らせることに成功したのだ。

 いわゆる生体を誕生させることができたのである。

 八幡神の喜びはひとしおであったに違いない。


 一旦生命が誕生するとその後は次々と多種の生物が生まれだした。

 中でも植物の誕生は地球にとってかけがいのないものとなった。

 あらゆる生命は自衛をしながらしゅを継続させなければならない。

 そのためにいろいろな機能を身に着け分岐し進化をしていく。

 やがて地球上は大なり小なりの形をしたそれこそ多種多様の生物で溢れることになる。

 よって生物の種の生き残りをかけた戦いはその激しさをどんどんと増していく。

 強きものは体をより大きくし、さらに強さを増す。

 弱きものはその数を増やし絶えることを防ごうとする。

 さて、このことは一体何を意味するのか。


 やがて肉食恐竜に対抗するために巨大化し数を激増させた草食恐竜は、地球上の植物を食い尽くす勢いであった。

 地球にとって植物は他のもので補えるほど軽い存在ではない大切な生命である。消滅させるわけにはいかない。

 八幡神は恐竜の進化による自然減なども試みたが焼け石に水の状態。

 もうなす術はなかった。

 その結果冒頭の会話がなされたのである。

 しかし全ての生命を絶滅させることはしなかった。それをしてしまえば無限八幡大神の意を無にすることになってしまうからである。

 恐竜は鳥類を残して生き残ることはなかったが、植物は勿論生命をつなぎ、その後旺盛といえるほどの繁殖に成功する。それは昆虫を含む小動物の進化が発展のカギを握った。


 さて地上には2億年以上前から多種の哺乳類が現れていた。しかし隕石の衝突を因果とし、その多くは絶滅する。

 そのような中でも人類の先祖となる哺乳類は生き残った。

 そして6000万年以上が経過した時点では類人猿に進化した霊長類が多数登場してくる。

 しかしヒトが誕生するまでにはまだまだ相当の時間がかかる。


 そうこうした中でやっと現人類(ホモ・サピエンス)が誕生するが、それは今から20万年ほど前である。

 20万年は長い時間と感じるかもしれないが、この地球における時間の経過から鑑みるに、人類は地球の年齢と比べ、生まれたばかりの極めてほやほやで、全くのニューフェイスの存在でしかないのである。


 これまでに生命の誕生に関し数々の失敗を繰り返してきた八幡神にとって、人類は最後の望みとして生み出した存在である。

 このため人類の脳を、神の存在をもとらえることができるほどに発達させた。

 ただ、よろしくなかったのはこの発達が人類を思い上がらせてしまったことだ。

 つまり人類は生物の頂点に立っていると考えるようになり、地球を我が物顔で支配しているかの如く振る舞うようになる。

 更に人類同士で覇権を争い、その者たちの横暴はとどまることを知らない。


 地球に生まれた人類として八幡神と共に生きることを選択しないというその行動は、結果として地球としての癌のごとき末法を生み出すことになってしまった。


 正に八幡神に期待されて生まれてきたはずの現人類であるが、八幡神にとって頭の痛い存在となってしまったのだ。


 果たしてこの先、人類は地球に生き残ることができるのだろうか。


 それとも恐竜のごとく絶滅させられてしまうのか。


 八幡神は今、何を考えているのだろう。


 それにしても大隕石を衝突させるに至ったとき、八幡神と会話をしていた「タケル」とはいったい何者なのか。



4 神としての八幡戦士誕生

 八幡神は誕生から間もなくして、自らの成長と共に多数の眷属けんぞくの神を誕生させた。

 何故ならば八幡神だけでは地球を生命の溢れる闊達な星にすることは不可能と考えたからである。

 その神たちは八幡神の補佐を役割とする。いわゆる神としての立場にある八幡神の戦士なのである。

 この八幡戦士は八幡神の目となり手となり足となり、忙しく地球の成長のため八幡神と意を一つにして各々の役割に取り組んだ。


 ここで最も重要なことは太陽と地球の関係である。

 太陽は地球を生かすために無くてはならない存在である。

 勿論のことであるが、太陽にも神は存在する。

 その神のことを日乃本の国では、

「天照大神」

 と呼ぶ。

 この天照大神と八幡神は当然無限八幡大神の分身である。

 したがって目指すところは同じであるが、太陽は地球と比べるとあまりにも巨大である。

 地球はこの太陽の引力や放出される熱などの影響を程よく受けられる位置を保たなければならない。このバランスを適切にとることは地球にとっての死活問題である。


 この八幡戦士らの働きもあって、地球は太陽とのバランスを保つことのできる惑星としてほぼ安定化させることができた。

 ようするに太陽の命が尽きるまでこの関係が保たれるようになったのだ。

 この関係が安定したことにより生体を生み出すことが叶ったのである。

 そして生物の進化や生態の在り様などが均整され、地球は順調に繁栄の方向に流れていった。

 恐竜の誕生は動物が進化した結果の傑作と考えられた。

 特に肉食恐竜は知能が高く、生物としての進化は非の打ちどころがないと思えるほどだった。

 これらのことに八幡神は自信を深めていったのだが・・

 そう。ここまでは良かった。

 しかしここまでだった。


 恐竜の大繁殖によって状況は予期せぬ方向へと向かい始めたのだった。


 「無念!」

 八幡神は涙を飲んだ。

 そして八幡神は考えた。

「我と意を一つにし、共に生きているとの自覚ができる生命を誕生させなければならないだろう」と。

 主に考えたのは次の三点。

(1) 如何なる形にしたらよいか?

 ・大き過ぎるのは大量の食料を消費するため良くないと学んだ。程々がよいか。

 ・神の姿に似せたら、神に近しさを感じさせることができるか。


(2) 如何なる能力を持つものがよいか?

 ・こちらの意を汲んでもらうため、神の存在を認識できる能力が必要だろうか。

  となれば、会話をするための明確な言葉を使えるようにしようか。

 ・火を操り、道具などのものを作り出すことのできる能力が必要だろうか。

  となれば、絵を描き文字も使えるようにしようか。

 ・行動を、本能ではなく理性で選択することのできる能力が必要だろうか。

  となれば、理をもって比較することのできる能力が必要だろうか。


(3) そもそも如何なる心を持たせようか?

 ・間違った行動をしてしまった場合、反省のできる心が必要だろうか。

  となれば、行動を改めることのできる心を持たせることも必要だろうか。

 ・やはり八幡神と共に生きることへの自覚を持たせることが必要だろうか。

 となれば、愛することと感謝することのできる心を持たせるべきだろうか。

 となれば、その中に八幡戦士たる存在も必要となるだろう。


 これらを悩み抜いた結果として生み出されたのが「人類」である。

 ただ人類の誕生にも試行錯誤があった。二足歩行だけでは八幡神の描いた形に進化させることはできなかった。

 したがって絶滅した人類種もあった。

 そしてやっとたどり着いて出現したのが、現人類のホモ・サピエンス(考えるヒト)である。


 その現人類だが、登場したばかりの頃は良かった。

 人類に文明なるものができ始めて間もなく、いわゆる神に祈りをささげる儀式(祭儀)をするようになる。

 神の存在を認識し敬うことができる能力を備えたのだ。


 神と意を通ずることのできるもの、いわゆる神通力を持ったものは高い評価を得て司祭となり、その集団のおさとなる。

 しばらくは長の指導の下で神と心を通わせ、穏やかな暮らしが続いた。

 でも良かったのはここまで。


 やがて長は部族の繁栄のためと唱し、他の部族を襲撃する道を選ぶようになる。このため人類同士の戦が頻繁に起こるようになる。

 戦に武器はつきものである。

 やがて様々な武器を作るようになるが、なにより強い武器を作った方の部族は勝ち残ることができる。

 石の武器から銅の刀へと進化し、やがて鉄を手に入れる。鉄は他の武器を圧倒した。

 負けた部族は女を奪われ、男は子供も含め皆殺しになる。

 無残に殺された者たちは怨念を残す。

 当面その怨念は戦場のあたりをさまよって災いを引き起こしたりするが、それら怨念はやがて雷に打たれて地に吸収され、あたりは平静さを取り戻す。


 このようなことがしばらくは繰り返されていたが、戦の規模が大きくなるにつれ怨念の強さは肥大化し、羅動となってさらに大きな災いを及ぼすようになる。

 勝った方は勝利に酔いしれもするがその反面、怨念を極度に恐れもした。

 このためやしろを建て、産土の神を祀り、降伏祈願をするようになる。


 人類は神と共に生きるのではなく、神を利用するようになっていく。


 このため本来の働きが取れない神が出現してしまう事態が起こった。

 すべての神は言わずもがな八幡神の分身である。この事態を八幡神はことのほか悲しんだ。

 人類への能力の付与は、相当の危険を伴う正に両刃の剣だったのだ。

 そこで八幡神はひとつの決意をする。

「神だけでなく、やはり人類にも八幡戦士を誕生させてみよう。そして人類の生き方の方向転換を図ってみよう」と。


 愛を説く戦士

 規律を説く戦士

 感謝と敬いを説く戦士


 地域によって説く内容に異なりはあったが、神については敬うと共に恐れおののく対象であると捉えさせることは共通していた。

 多くの人類はこの教えに共感し付き従がった。

 これら八幡戦士となったものへの良い評価が出たようにも思えた。

 しかしやがて人類は地球の頂点に君臨しており、神は人類のために在るとする考えが急拡大してしまう。


 !!正に人類の傲りそのものである!!


 さらに神の啓示や存在を権利欲や金儲けの手段としてしまうものまで現れた。

 世も末となってしまった。


 つまりこれが「末法の世」なのである。


 このようになってしまったからには、八幡神は今新たな八幡戦士の誕生が必須と考え始めた。

 果たして新たな八幡戦士に、どこの誰が選ばれるのか。

 一人か、二人か。いや、もっと大勢か。

 そもそも戦士にふさわしい素質を備えた人材が存在しているのか。


 さて、そこで君に問う。

 君は八幡神と共に生きることの叶う新たな八幡戦士と成れるのかどうかを・・


 君の正直な意識(心)の下、以下の問いに挑戦してみてほしい。

 果たして八幡戦士に選抜される可能性は・・

 もしかして、君の生きる道が、ここにあるのかも知れない。



5 八幡戦士の条件

 何の職業に就くにしても、まずは自らが自らの能力や適性などを適正に見つめて「これならできる」とか「できない」とか、「やってみたい」とか「やりたくない」とかを考え、就職したいかどうかの判断を下す。

 ただ自分自身はそこに就職したいとの思いに至っても、当然のことながら相手がOKを出さなければその思いは叶わない。

 八幡戦士に成れるかどうかも同じ理屈が成立する。

 そこでまずは八幡戦士たるための適正とおぼしき質問をするが、あくまでも自分の心に素直に答えることが肝要である。偽りの答えで進めてしまえば偽りの世界へと行ってしまう。そこには苦しみと後悔が待っている。

 さあ如何なる結果が出るか。


 問1 神の存在を信じるか。

 A 信じる

 B 少し信じられる

 C信じたり信じなかったり様々

 D信じてみたいけど・・

 E信じない


 A~Cを選んだ方はそのまま次の問いに進んでも構わないが、何故そう思うのかを探ってみると良い。

 DかEを選択した場合は何故信じないのか、その理由を3つあげてみる。

 3つ考えられたら、次にその理由を自分の中でディベートする。

 つまりその信じない理由を否定できる考えを探ってみる。

 結果として納得できるかできないかにこだわる必要はない。


 ディベートの効果は、否定するその認識を覆すことができた場合、とてつもなく強く肯定する心を持つこともできるという不思議があることを認識できる。

 勿論、覆すことができなくても、それはそれとしてそのように認識すればそれでよい。


(信じない理由の例)

 ・とにかく神なんて見たこともないし、そもそも居るはずがない。

 ・社会にはこんなにも不平等が溢れている。神なんていないからこうなる。

 ・神とは人が考え出した、あくまでも空想の世界の代物だ。

 等々。


 以降も設問に対して否定的な答えとなった場合は、この要領でディベートを行ってみるとよい。


 問2 人類は宇宙を構成する一部であるとの認識を持てるか。

 ・持てる

 ・持てるかどうか分からない

 ・考えたこともない

 ・持てるわけがない


 問3 人類が地球に生存する意義はあるか。

 ・ある

 ・ない

 ・分からない


 問4 地球を美しいと思うか。

 ・思う

 ・思わない

 ・どうかな!


 問5 自分は一人でも生きていけるか。

 ・生きていける

 ・生きていけない

 ・分からない


 問6 海辺や川などにごみが散乱しているのを見て如何に思うか。

 ・悲しい

 ・怒りを覚え捨てたものに処罰を与えたい

 ・自分も捨てている

 ・特に何も思わない


 問7 人間の体は神秘的であり、宇宙の成り立ちに通じるものがあると思えるか。

 ・思える

 ・考えてみたい

 ・思えない

 ・突拍子もない質問で答えるのも阿保らしい

 ・考えたこともない


 問8 リンゴの木にリンゴがなっている。どうする。

 ・もいで食べる。又は食べたいと思う

 ・食べることはない

 ・リンゴは嫌いだ

 ・食べてもよいものかいけないものか分からないのに答えようがない

 ・熟しているかも分からない不完成な質問だ

 ・その他


 問9 神仏への一番の願い事は何か。

 ・身体の健康

 ・金持ちになりたい

 ・前述の他に願い事がある

 ・そもそも神仏に願い事などしない

 ・分からない


 問10最後の質問。八幡戦士になってみたいか

 ・成ってみたい

 ・成りたくない

 ・分からない


 さて、どのような答を出したただろうか。

 八幡戦士たる適正云々と位置づけての設問であったが、実のところこの問いに正解は無い。

 何故ならばその答えはあなたの思いなのでありそのままでよい。

 でも何故このような質問を出したのだろう。

 この設問の主旨は何か?


 長々と綴ってきたが、以上で序文を終了する。

 話は次に進む。



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