第11話 行方不明
しかし、アリエルが領地にたって10日ほど経過したころワトー侯爵のもとに早馬で知らせが届いた。
「なんだと!アリエルが行方不明?!」
その手紙にはアリエルを乗せた馬車が、盗賊に襲われた可能性が高いと書かれていた。
現場は血だらけで、アリエルの衣装や帽子などが道に散乱していたという。無人の馬だけが離れたところで発見された。
荷物を調べ、身元を特定するまでに時間がかかり、まずは領地に報告が行き、領地から王都へと連絡がなされたため時間がかかったようだった。
崖の下に向かって血にまみれ滑り落ちたような跡が残されていたが、犯人の手掛かりも彼女の生存の可能性も見つからなかったという。
ワトー侯爵は直ちに自分も現場に向かった。
その現場を見ると生存は絶望的だった。
ずいぶん川面まで距離がある。そして急流であり、転落して生きていたとしても溺れてしまうだろう。
その川はワトー侯爵領にある山から始まり、海に抜けているのだがそのほとんどが深い森を貫き、がけ下を流れ、人が簡単に立ち入れるような場所は少なく捜索は難航を極めた。
この辺り一帯を調査した騎士は、周囲の状況から、傷を負ったアリエルと護衛はがけ下に落とされ、川に流されてしまったのだろうという結論をだした。
ワトー侯爵は、侯爵家の力を動員してアリエルの捜索を必死で行ったが見つけることは出来なかった。
父からそれを聞かされたセドリックは全身の血が引いたように崩れ落ちた。
「・・・嘘だ・・・何かの間違いだ!アリエルが・・・」
心労を癒す為に領地療養に行くところだったと聞かされた。
領地に向かう原因を作ったのは自分。
アリエルを殺したのは自分だ。
絶望と後悔と胸をえぐり取られたような痛みに発狂しそうだった。
セドリックは父に頼み、自分も捜索隊に加わり走り回ったが、生存の痕跡も死の証も何も見つけることは出来なかった。
侯爵令嬢の襲撃、これには国も動き王宮所属の騎士たちが捜査に乗り出した。
調査が進むと、アリエルの父の事故や母の行方不明、叔父が家督を継承したことなど、アリエルの周りで不審な事柄が多いことが注目された。
家督の乗っ取りのためアリエルの殺害を疑われた叔父だったが、すでに爵位を継承していることと、アリエルがいないと侯爵家が成り立たないことは明白であり、実際領地で仲良く協力している姿も確認されたことで疑いは晴れた。
アリエルの母の失踪との関連も調べられたが、何もわからず二人が行方不明のまま両件は迷宮入りになりそうな気配が漂っていた。
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