十六夜 いざよい

海翔

第1話

暑い夏の海からもふっと、涼しい風が流れ、秋の訪れを知らせていた。

庭の片隅では夜にはコウロギの虫の声が昼間はつくつくぼうしの蝉の鳴き声が聞こえるようになった。

 葵にとっては賑やかな夏が終わり、静かなさざなみが立つこの時期が好きだった。

今年は恋人の海斗に出会いこれからが楽しみになって来た。

海斗とは、夏の休みに会社の同僚と海に行ったときに新島の民宿で出会った。海斗以外に智也さんと太一さんがいた。

 色々話しているうちに海斗とフィーリングが合って付き合うようになり、その時一緒に行った彩は智也さんと付き合い、六花は太一さんと付き合った。

民宿にいる間は二人で行動したり、6人で泳ぎにも行った。

出会って3日後には休みが終わり、6人は東京で再会を誓った。

 東京に戻ってからも葵は海斗にラインで連絡をした。 

そのラインの中で「この夏に新島で会ったメンバーで温泉にいきませんか?」と連絡があり、さっそく葵は彩と六花に連絡したら二人とも「行きたい」と連絡が来た。          

特に六花は「親が蔵王に別荘を持っていて、そこならゆっくり温泉にも入れるし部屋も十分にあるのでどうですか?」と、葵に話した。

この話に葵も彩も賛成してくれた。

 さっそく、葵は海斗に「その別荘に行かないか?」と連絡したら、しばらくして男性3人からラインで「行きましょう」と連絡が来た。

葵はその事を六花に話して段取りをつけてもらうことにした。

六花は「お互いの仲が深まってきたので別荘では二人ずつの部屋で過ごせるようにしますね。それの方が楽しいと思うので皆さんどうですか?」そういわれ、

みんなその事を了解してくれた。

 さっそく、六花は10月の休みと有給を加えて3日間の旅行を計画した。

 当日は智也の運転で蔵王に向かった。

朝方に出て、途中パーキングエリアで休んで夕方前に別荘に着いた。

さっそく、割り振られた部屋に荷物を置いて夕食の準備をした。と言っても途中で出来合いの物を買ったので今日の夕食はそれで間に合わせた。

 六花は地下のワインクーラーから数本のワインを持ってきて「これ飲みましょう」と言って蓋を開けた。

6人で会うのは夏以来で葵は「みんなに会えて、今回は六花に協力してもらいどうもありがとう。皆さん楽しんで過ごしてください」と挨拶した。

海斗は「皆さんに会えて楽しい時間を共有しましょう」と話した。

 葵は「部屋割りですが、2階の奥は彩さんと智也さん、その隣は私と海斗さん、下に六花と太一さん、各部屋にシャワールームとトイレが付いています。

1階の奥には少し大きい風呂があります、札をつけて入ってください。私からの連絡は以上です」6人は一斉にワインの蓋を開けて飲み始めた。

 久々に会えたメンバーだけに話題にはつきなかった。

彩さんと智也さんはよく映画を見に行ったり、横浜とかに出掛けることが多いと話していた。

六花と太一さんはよくお互いの家に泊まりに行ってお酒を飲んだり、ゲームをして過ごしていた。

葵は海斗と昼間よくデートしていたと話していた。

 葵の家は門限が厳しくて泊まることができなくて今回は親に頼んでやっと許可が出たとのことだった。

こうやって、お酒を飲みながら話していくと時間が過ぎていくのが早く感じられ、

もう、10時を過ぎていた。

この辺で食事を終わりにして各自部屋に戻った。

 30分もしたら彩さんと智也さんが大浴場を使うと言うので札をつけて入っていった。

六花さんと太一さんはワインを飲みすぎたのか?部屋に入るまでフラフラしていたので葵は「お風呂に入らないでシャワーを浴びることで済ますように」と話した。

 葵は一段落したら、海斗を誘って自分の部屋に戻った。

部屋に入ったら海斗はいきなり葵を抱きしめて口づけをして来た。

突然のことで葵はビックリして後ずさりしてしまった。

葵は「突然でビックリしてしまったの、なかなか男性に慣れなくてどうしても殻を破れなくてごめんね」

「元カレに降られてから男性恐怖症になってしまい、一人では何も行動できないの」

海斗は「そうだったんですか、いきなり抱きついてごめんね。これからは君の彼氏になって少しづつ殻を破っていこうね」そう言われ、葵は一筋の涙を流した。

 しばらくして彩さんが部屋をノックして「お風呂空きました入るのでしたらどうぞ」と連絡をしてくれた。

それを聞いて、葵は「どうもありがとう」と返事をした。

海斗は葵に「一緒にお風呂に入ろう」と誘った。

二人は1階にある大浴場に向かった。

 入り口で入浴中の札を立てて中に入ったが、葵は海斗と初めてお風呂に入ることが恥ずかしかった。

それを察してか海斗は先に裸になって浴室に入った。

 しばらくして葵も裸になり、胸からタオルを垂らして、浴室の中に入った。

海斗は「お湯の中、温かく気持ちいいよ」と話した。

葵は湯船の淵で体にお湯を掛けて体を湯に慣らした。海斗は横から見えた葵の乳房の美しさに目を見張った。

葵は湯の中に入り、タオルを湯船の淵に置き、海斗の横に来た。

葵は恥ずかしさのあまり顔中を真っ赤にしていた。

海斗は葵に「綺麗な体だね」と言った。

葵は「恥ずかしい」と言って顔を横に向けた。

 海斗は体が暖まったので湯の外に出て体を洗い始めた。

それを見た葵は「背中流しましょうか?」そう聞かれ、海斗は「うん、お願いします」葵は海斗の石鹸の付いてるタオルを受け取り背中を流した。

 背中を流したところで海斗は「後は自分でしますので、葵さんは背中流しますか?」そう言われ、私は「いいです」と答えた。

二人は体を洗い、部屋に戻った。

 葵は海斗に「さっき話したように元カレのことでなかなか殻を破れないの、でも、海斗さんは好きです」

「今日だけはお互いの肌を合わせて海斗さんを感じたいの、明日は貴方の中に入れて下さい」

海斗は「葵さんの気持ちを大切にしたいので今日はお互い裸になって寝ることにします」そういって海斗も裸になってベッドに入った。

そして、葵を抱きしめて口づけをした。

 ペッテングだけの行為だったが、葵は海斗に少しずつ殻を破ろうとしていった。

窓の外を見たら大きな丸い満月が出ていた。

 二人は裸の体に触れることでより相手が身近に感じられた。

葵はそのまま、海斗の腕の中で眠りについた。

 翌朝、目を覚ましたら横にいるはずの海斗は居なくてシャワーの音が聞こえていた。葵はその音が聞こえるシャワールームに入って、海斗に「おはよう」と言った。

海斗も「昨日はよく寝れましたか?」そう言われ「はい」と答えた。

二人は着替えて1階の居間に向かった。

 他の4人は食事の準備で忙しく、葵は「寝坊してしまった、ごめんなさい」そういって、食事の支度を手伝った。

朝食は簡単なものと言うことでサンドイッチとコーヒーの準備をして食事にした。

食事をしながら、みんなと相談したら「今日は蔵王の温泉巡りをすることで一日過ごすことにしましょう。

地図を見てると結構入れる温泉がいくつもあるで入ってみませんか?」

そういわれ、蔵王から近い温泉に向かった。

 そして、温泉の後にはアイスクリームを食べて、また温泉に入った。

最後に六花は「この先に面白い温泉があるんですがいきませんか?」と言われ、どんな温泉か気になり、確認したら、畑の真ん中から温泉が出てきたと言う開拓温泉に出掛ることにした。

本当にこの温泉は畑の真ん中から出た温泉で素朴な温泉だった。

 夜にかかったところで空を見たら、満天の星が見えた、そして、十六夜の月で回りが明るくなっていた。

葵は「またこの温泉に来てみたいです」と言った。


 夕食は途中のレストランで済ませ、9時過ぎに別荘に着いた。

さすがにみんな疲れ、各自自分の部屋に行き休むことにした。

 葵と海斗が寝る前にシャワーを浴びて、裸のままベッドに横になっていたら、葵は海斗に「私を抱いてください。私の最後の殻を破って下さい」

海斗は「いいんですね」と念を押して、葵を抱き締めた。

 葵も初めは痛かったが、海斗が腰を動かした頃から痛みが麻痺して、気持ちよさが前に来た。

 葵は涙を流しながら「やっと、海斗と一つになれた」

葵は海斗に「ありがとう」と言った。

海斗も涙を流して「よかったねよかったね」といってくれた。

そして、海斗の腕の中で葵は眠りについた。

 翌朝、目を覚ましたら葵さんがベッドから起きて先にシャワーを浴び終わっていて、海斗が起きるのを待っていた。

目を覚ました海斗に葵は「抱いて」と言った。

海斗は寝起きの状態で裸の葵を抱き締めた。

 二人ともしばらくはこのままでいたが、海斗がシャワールームに向かうので葵も一緒にシャワーを浴びた。

その後、居間に行き朝食にした。

 食事の後、六花は外に出て空を見たら蔵王にしては珍しく雲一つない天気だった。

横にいた葵は「また来たいね」と言って帰り支度を始めた。


 葵に取っては今回の旅行は自分の殻を破る思い出の残る旅行になった。

 

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