第14話 ピンボールとレトロゲーム 

 

 家から1.5km位のところに、小田急線の経堂という駅があった。


 僅かながら、ロマンスカーが警笛を鳴らしながら走っていたのを覚えている。


 この経堂の駅の近くにオダキューOXという店があり、その中のゲームセンターに通い詰めていた事がある。小学校3年生位の頃だ。


 オダキューOXの中には、ゲームセンターが二カ所あった。小さな方には主に子供向けの、運転シュミレーターなどがあり、大きな方にはピンボールと呼ばれる、斜めになった板の上で鉄球を弾いて遊ぶ、アメリカ生まれの大きなゲームが並んでいた。


 その他には模型のような車が箱の中を進んでいくゲームや、オートバイが走るゲーム、(いずれもマシンは固定で風景が動く)、はたまた魚雷を発射して敵の艦隊を倒すゲームや、飛んでくる鳥を撃ち落とすゲーム、天秤でぐるぐる回るヘリコプターを着地させるゲームなどもあったような気がしたが、私はピンボール一筋で傾倒した。


 今から考えれば、小学校三年生は子供である。


 でも、アメリカ製の、ピンボールに惹かれた。


 初心者はフリッパーを両方一緒に押すが、これはカッコ悪い。球の当たる方片方ずつを動かす。


 動かすのにもコツがあって、始めは上に上げておき、鉄球が乗ったら戻して、飛ばしを強くする。


 そして極めつけは揺らし。


 これが上手くできるようになると、かなり長い間遊ぶことができるようになる。


 フリッパーの間に落ちそうになった球筋を、台を揺らすことで変えてやる。そうすると何とかどっちかのフリッパーで拾えるようになる。


 また、機種によって違うが、仕掛けに鉄球が当たると点数が上がっていくので、仕掛けに当たるタイミングで機械を揺らしてやり、弾かれる力を強くする。


 普通の人なら身体は真っ直ぐ、上から盤を見下ろすような感じでプレイするが、私は上手い人の形を研究して、どうすれば格好良くプレイできるかを考えた。


 両手には角度をつけ、それなりの力を入れる。少し腰を引いて、斜めに盤を見る。背中を丸める感じで身体全体を少し引き、揺らしの体制を作る…


 小学校三年生で、こんな事を考えて、毎日ピンボールをしていた。


 もちろん揺らしの対策はされていて、やり過ぎるとTILTというランプが点灯し、ゲームは終わりになってしまうのだが、そう簡単にTILTになることはなかった。


 そして目指すは上がり。どの盤にも小さな四角い窓があって、規定の点数になると上がりとなり、独特の音と共にここの数字が増える。この「上り」を目指して、毎日全力で取り組んだ。


 それなりにできたような記憶もあるが、数えるほどしか上がったことはなかった。


 今でもやりたい衝動に駆られるが、私のようなプレイヤーが来てしまうとすぐに壊れたり、壊れても直すのが大変だったり、結局は設置しても儲からない事が多いようで、なかなかお目にかかってプレイすることは難しいようだ。


 ただ、名古屋にピンボールやレトロゲームなどを収集、修理しながら展示をしている人がいるとのことで、死ぬまでに一度、行ってみたいなと思った。


 このページで書いた、ヘリコプターを着地させるゲームや、魚雷を発射して敵艦を撃沈するといったゲームは、こちらの方を取材した方が書かれた記事を見て、思い出したもの。


 私は今のゲームは全く興味を示さなくなってしまったけれど、このような70年代のレトロゲームなら、今でもやってみたい、を通り越して、環境が許すなら買って家に置いてみたいとまで考えてしまう、おかしな人なのである。



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