姉を断頭台へ送った妹は、愛されながら毎日を幸福に過ごしていく

仲仁へび(旧:離久)

第1話




 私には三つ年上の姉がいる。


 先に生まれただけの姉が。


 でも、この姉あまりすごくない。


 すごいのは、私より年をとっているだけ。


 愛嬌もないし、上手に世渡りもできない。


 人間なんて単純だから、みんな適当におだてて、微笑んでいれば、簡単に味方になってくれるのに。


 ひとりぼっちだって、いつも陰でめそめそしているのよ?


 おかしいったらありゃしないわ。


 皆に愛されたかったら、笑えばいいのに、褒めればいいのに。


 どうしてそんな簡単な事ができないのかしら。


 姉はきっと自分の事を可哀想だと思っているのだろうけれど、だからなに?


 自分で努力しないのが悪いんじゃない。


 他人より劣っているのを自覚しているなら、頑張ればいいのよ。


 なんで頑張らないの?


 頑張らないくせに、人の物をほしがらないでよ。


 人を嫉妬しないでよ。


 頑張ってそれでもできなかったら、同情する余地があるのに。


 それすらもできないなんて、本当にだめな姉ね。


 最初はちょっと可哀想だなって思っていたけど、私はだんだん姉の事が嫌いになっていった。


 不幸ぶった、悲劇の主人公ぶった人間って、ほんと嫌だわ。







 だから、姉がいるところでわざと挑発するような行動をとった。


「まあ、友達がいないの? お姉さまったら可哀想。私の友達に仲良くするように言ってあげるわね」


「お姉さまの顔は少し、人より血色が悪いものね。でも大丈夫、美人じゃなくたって、きっとお姉さまを好きになってくれる人がいるわ」


「私、結婚が決まったの。でも落ち込まないで、お喋りも笑顔も上手じゃないけど、そんなお姉さまを気に入ってくれるようないい相手が、きっと見つかるわよ」


 手助けするって何度か言ったけど、本当にはしてやらない。


 与えられるのを待つだけの家畜のような存在に、どうして施してやらなければならないのかしら。


 あなたは人間でしょう?


 何もしなければ家畜以下になってしまうわよ?


 そんな事を続けていたら姉は、私にイジワルをするようになった。


 単純なお姉さまねまったく。


 裏があるとも知らずにのせられて、本当に扱いやすいんだから。






 決定的なのは私を殺そうとしたことね。


 姉と二人きりになった時、誕生日パーティーの事を話題に出したら、本当に面白いくらい怒ってくれたわ。


 私は両親にも、使用人にも、友達にも、婚約者にも祝ってもらえたのに。


「お姉さまは一人でバースデーケーキを食べなくちゃいけないなんて、かわいそう」


 って。


 そしたら、逆上。


 見事姉は断頭台おくりになった。


 本当、おまぬけさんだわ。


 自分を磨く事なく、羨むばかりで努力しないからこうなるのよ。


 私には美貌も愛嬌もあるし、人の心の機微をよむ力もあるけど、ちゃんと努力してるんだから。


 断頭台にいる姉をみて、私は口元のにやつきがとめられない。


 さようならお姉さま。


 イラつく人間がいなくなってくれるから、私は本当にこれからは幸せに生きられるわ。


 来世はもっと、人の癇に障らないような、器用な人間に生まれてこれるといいわね。



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姉を断頭台へ送った妹は、愛されながら毎日を幸福に過ごしていく 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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