(SS)ヒロインちゃんとお食事を

※限定SSで書いたものを加筆修正したものです。サポーターの皆様、ありがとうございます。

 続けるならこんな感じかなって実験です。




「勇者パーティに会っちゃったの。魔法一発放ったら、逃げていったわ。それでね、一人はぐれて気絶していたから連れてきたわよ」


 魔法が得意なナオが、ふわふわと勇者を浮かべ連れてきた。リーダーの魔王シノはリリアを呼んだ。


「リリア〜! 早く来て! ナオがあんたの知り合い連れてきた〜!」


 リリアが来てみると、そこにいたのは『あああああああ』ちゃん。別名アンリだった。


 大声で目が覚めたアンリ。


「あ、あなた達、魔族ね! 私をどうする気よ!」


 シノは、魔王としての演技を始めた。


「我は魔王。何もせん。ゆっくりしていけ」


 他人と対峙する時は魔王でいなきゃと律儀な対応。


 そこにリリアがやってきた。


「あ、久しぶり」

「リリア?!」


「ああ、紹介するね。彼女は勇者パーティのあああああああちゃん。名前変で可愛そうだから、アンリって呼んであげて」


「アンリ? いや、本名は大切だ。真名で呼ぼう。なあみんな!」


 魔王様は本名推しだった。


「よろしくな、あああああああ」


「いやぁぁぁぁぁぁぁ―――――――、アンリって呼んで―――――――!」


 しばらく、このやり取りが続いた。



「つまり、この子も日本人の転生者なのね。しかもヒロイン」

「そうなのよ、シノ」


「お前、何校出身だ?」


 唯一の男性、カイトが聞いた。


「学校? 亭返短期大学」

「学科は?」

「文学部の文学科」

「趣味と特技は?」

「趣味はラノベとゲーム? 特技は指の関節が、ほら、ここまで曲がるの」


(((使えね〜)))


 技術高校上りの彼らにとって、普通校、特に文系はなんというか……そういう扱い。


「まあ、せっかくだからゆっくりしていきなよ。ご飯食べる? ほら、味噌も醤油もある和食よ。魚醤じゃない、本物の醤油よ」


「わっ、和食? 醤油!」


 一も二もなくリリアの提案に飛びついたアンリ。


「そうだね。転生者でいつも洋食じゃかわいそうだな。お主、我が村の飯を喰らうがよい」


「じゃ、魚焼くか。待ってな」

「ご飯、足りないな。じゃ、冷凍ご飯ボクが魔導レンジで温めるか」

「味噌汁作りますね。お漬物も出しましょうか」


 それぞれ食事の支度を始めた。



「おいしい。おいしい。焼いただけの魚! お漬物! お米のご飯。これよ。うわあああん」


「泣きながら食べるパターンか。よほど和食に餓えていたんだな」


「リリアがいなくなって、うどんも蕎麦も食べられなくなったんだもん! リリアのせいよ〜〜〜〜」


「私に言われても。自分で作りなさい」

「お好み焼きしか作れないの!」


「帰ってきて!」

「ヤダ! こき使われそうだし」

「じゃあ、私もここにいさせて!」


 そう言われて考え込む魔王チーム。


「ダメね。 シナリオがおかしくなる!」

「「「お前が言うな〜」」」


 えっ、という顔をリリアがした。


「しかし、まあ、ここに置くわけにはいかんな。確かにリリアの言うとおりかもしれない」


 シノが言うと説得力が増した。


「そうだな、俺もそう思う」

「ボクもだね」

「私ももそう思いますわ」


 四人はアンリを囲んだ。


「じゃあ、ナオ、やっておしまい」

「分かった。スリープ」


 ぐっすり眠らされたアンリは、そのまま王都の近くの街道まで連れて行かれた。



「大丈夫だったか、俺のあああああああ!」


「大丈夫じゃない! アンリって呼べ!」


 いつも通りの王子。


「どこに行っていたのですか? 魔族に連れ去られたのかと心配していましたのよ」


 イリーナが声をかけた。


「魔族の里。リリアがいたわ」


 ぼんやりとした頭でアンリは答えた。


「「「リリア!」」」


「魔族の国で天国を見た」」」


 そう言うと、また眠りに落ちた。


「何だと! 死ぬような目にあわされたのか! リリア、あいつだけは許さん!」


 王子たちは、勝手にアンリが拷問にあったと勘違いをし、打倒リリアの思いを強くしたのだった。

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