(SS)ヒロインちゃんとお食事を
※限定SSで書いたものを加筆修正したものです。サポーターの皆様、ありがとうございます。
続けるならこんな感じかなって実験です。
「勇者パーティに会っちゃったの。魔法一発放ったら、逃げていったわ。それでね、一人はぐれて気絶していたから連れてきたわよ」
魔法が得意なナオが、ふわふわと勇者を浮かべ連れてきた。リーダーの魔王シノはリリアを呼んだ。
「リリア〜! 早く来て! ナオがあんたの知り合い連れてきた〜!」
リリアが来てみると、そこにいたのは『あああああああ』ちゃん。別名アンリだった。
大声で目が覚めたアンリ。
「あ、あなた達、魔族ね! 私をどうする気よ!」
シノは、魔王としての演技を始めた。
「我は魔王。何もせん。ゆっくりしていけ」
他人と対峙する時は魔王でいなきゃと律儀な対応。
そこにリリアがやってきた。
「あ、久しぶり」
「リリア?!」
「ああ、紹介するね。彼女は勇者パーティのあああああああちゃん。名前変で可愛そうだから、アンリって呼んであげて」
「アンリ? いや、本名は大切だ。真名で呼ぼう。なあみんな!」
魔王様は本名推しだった。
「よろしくな、あああああああ」
「いやぁぁぁぁぁぁぁ―――――――、アンリって呼んで―――――――!」
しばらく、このやり取りが続いた。
◇
「つまり、この子も日本人の転生者なのね。しかもヒロイン」
「そうなのよ、シノ」
「お前、何校出身だ?」
唯一の男性、カイトが聞いた。
「学校? 亭返短期大学」
「学科は?」
「文学部の文学科」
「趣味と特技は?」
「趣味はラノベとゲーム? 特技は指の関節が、ほら、ここまで曲がるの」
(((使えね〜)))
技術高校上りの彼らにとって、普通校、特に文系はなんというか……そういう扱い。
「まあ、せっかくだからゆっくりしていきなよ。ご飯食べる? ほら、味噌も醤油もある和食よ。魚醤じゃない、本物の醤油よ」
「わっ、和食? 醤油!」
一も二もなくリリアの提案に飛びついたアンリ。
「そうだね。転生者でいつも洋食じゃかわいそうだな。お主、我が村の飯を喰らうがよい」
「じゃ、魚焼くか。待ってな」
「ご飯、足りないな。じゃ、冷凍ご飯ボクが魔導レンジで温めるか」
「味噌汁作りますね。お漬物も出しましょうか」
それぞれ食事の支度を始めた。
◇
「おいしい。おいしい。焼いただけの魚! お漬物! お米のご飯。これよ。うわあああん」
「泣きながら食べるパターンか。よほど和食に餓えていたんだな」
「リリアがいなくなって、うどんも蕎麦も食べられなくなったんだもん! リリアのせいよ〜〜〜〜」
「私に言われても。自分で作りなさい」
「お好み焼きしか作れないの!」
「帰ってきて!」
「ヤダ! こき使われそうだし」
「じゃあ、私もここにいさせて!」
そう言われて考え込む魔王チーム。
「ダメね。 シナリオがおかしくなる!」
「「「お前が言うな〜」」」
えっ、という顔をリリアがした。
「しかし、まあ、ここに置くわけにはいかんな。確かにリリアの言うとおりかもしれない」
シノが言うと説得力が増した。
「そうだな、俺もそう思う」
「ボクもだね」
「私ももそう思いますわ」
四人はアンリを囲んだ。
「じゃあ、ナオ、やっておしまい」
「分かった。スリープ」
ぐっすり眠らされたアンリは、そのまま王都の近くの街道まで連れて行かれた。
◇
「大丈夫だったか、俺のあああああああ!」
「大丈夫じゃない! アンリって呼べ!」
いつも通りの王子。
「どこに行っていたのですか? 魔族に連れ去られたのかと心配していましたのよ」
イリーナが声をかけた。
「魔族の里。リリアがいたわ」
ぼんやりとした頭でアンリは答えた。
「「「リリア!」」」
「魔族の国で天国を見た」」」
そう言うと、また眠りに落ちた。
「何だと! 死ぬような目にあわされたのか! リリア、あいつだけは許さん!」
王子たちは、勝手にアンリが拷問にあったと勘違いをし、打倒リリアの思いを強くしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます