第24話


 ディスグラドでの俺の日常は、以前と比べると少しだけ変わっていた。

 その理由は当然ながら、ドラゴン討伐に俺が同行していたことにある。


 『戦乙女』の面々が黙ってくれているおかげで俺が倒したことまでは感づかれることはなかったのだが、色々と情報が深掘りされていくうちに彼女達に俺が同行していたという事実だけはわりと早い段階で発覚してしまったのだ。


 そのせいで俺のギルド内での悪名は、以前にも増して轟いている。

 以前は腐れ魔術師扱いだったが、今じゃあ完全に『戦乙女』にまとわりつくコバンザメや金魚の糞扱いだ。

 ……どっちもひどすぎてあんまり変わんない気もするが、そこはノーコメントで。


 まあ、とにかく俺は以前よりも多くの人のヘイトを受けることになった。

 目立つのが嫌なので正直不本意なのだが、『戦乙女』と関わり始めたから仕方のないことだ。一種の有名税と思って受け入れるしかないだろう。


 それに悪いことばかりでもない。

 『戦乙女』と一緒にいるところを見られてぐぬぬ……と羨ましそうな視線を向けられたりすると、優越感を感じて鼻の穴がデカくなっちゃったりするしな。


 何より俺の異世界ライフに美人な女の子達が入ってきたことで、QOLは爆上がりだ。


 かわいい子って、目の保養になっていいよね。

 ただかわいいだけじゃないから、取り扱いには細心の注意が必要だけど。


 『戦乙女』の連中とつるむようになったことで、生活自体にも変化があった。


 俺は以前と変わらず適当に依頼を受けて日銭を稼ぎ、江戸っ子もびっくりなその日暮らしをしている(当然ながら、ランクも以前と変わらず銀のままだ)。


 だが基本的には暇人なので、空いている時にアイリスなんかに連れられて『戦乙女』の面々と一緒に時間を過ごすことが徐々に増えていた。

 といっても、そんなに多いわけじゃない。多くても週に二、三回程度だろうか。


 俺としても『戦乙女』という同業者の友人達ができたことは、正直ありがたい部分も大きかった。


 何せドラゴン討伐の折に、彼女達には魔法に関してはかなりの部分を見られてしまっている。それに『収納袋』の力も、彼女達の前なら自重せずに使える。


 彼女達の借家でなら、何かを使ったり食ったりしても情報が外に漏れるようなことがないし。


 誰にも言えなかったという部分が自分でもストレスになっていたらしく、俺は彼女達と一緒に行動するようになって、以前にも増してのびのびと過ごすことができるようになった。


 一応今も詳しい事情は説明はしていないが、それでも問題はなかった。

 『戦乙女』の面々はその辺りはしっかりしていて、明らかにおかしなところがあっても俺から強引に情報を引き出そうとすることはない。


「誰にでも隠したいことの一つや二つはあるものよ」


 そう言って根掘り葉掘り聞いてこないエルザには、本当に感謝しかない。

 その恩返しというわけではないけれど、俺は定期的に彼女達の調理場を借りて料理を作ったりもしている。

 せっかくだし、今日も作りに行こうかな。


 ちなみにウィドウとは身体強化の訓練、ルルには魔法の指導なんかもしているから、まるっきり遊んでいるってわけでもない。

 一緒にいる時は……そうだな、体感七割くらいが遊びって感じだな!


 それでも多いだって?

 バカ言うな、三割も真面目モードなんだぞ。

 異世界ではめちゃくちゃ適当にしている俺からすれば、大真面目もいいところだ。


 遊びに行く度に、アイリスには「部屋は空いてるからこっちに移ってきなさい」と言われたりもしているが……流石にそれは遠慮させてもらっている。


 そこまですると、『戦乙女』好きの男達に刺されかねないからな……まあ今でもブチギレ案件なのは間違いないが。


 あ、そうそう。

 ドラゴンスレイヤーとして正式に認められたことで現在『戦乙女』の知名度はぐんぐん上がり続けており、最近ではなんとファンクラブまでできている。


 意味がわからないんだが、なぜか国外にまで会員がいるらしい。


 会ったことがない女の子達のファンクラブに入る……俺には謎だが、きっと異世界のオタク文化は複雑怪奇なんだろう。


 まあこんな風に、若干の変化はあり賑やかにはなりながらも、俺の異世界ライフも平常運転に落ち着いている。


 今日は朝からウィドウと身体強化の訓練だ。

 いずれは俺も、彼女みたくぶんぶんと大剣を振り回してみたいところである。

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