第27話 魔界で核爆弾?


 元魔王の辺見くんは続ける。

「まぁ、その違いはあるが、トータルの生産力は地球とリモアールは大して変わらぬよ。だが、我らの魔素を扱う技術は、地球の科学技術には及ばぬ。

 前世の勇者の時代であれば、まだ互角であった。魔族側の魔素を扱う技術については、今回の『謀略のアウレール』の攻撃をこの身に受けて、そう大きな進歩がないことを確認した。それに対し、地球の科学技術の進歩は凄まじい。余が記憶を取り戻したとき、それはパソコンの前であった。そのときの余の戸惑いがわかるか?

 魔族がいかに魔素を上手く扱おうとも、コンピュータと同等なものは作れぬ」

「じゃあ、今さらだけど、ケイディの武器は魔界で通用するんだね?

 前は大して効果がないって話だったような気がしたけど……」

 私の言葉に、元魔王の辺見くんは首を横に振った。


「銃火器など、所詮は高速でなにかを打ち出しているだけのもの。投石は戦の慣らい、防御は完璧にできる。手榴弾も所詮はその延長だな」

「じゃあ、どんなところで地球の技術が怖いっていうの?」

 銃が怖くないと言われて、私、聞かずにいられなかった。


「ミサイル、核といったところだ。大陸間弾道弾ICBMで星の裏側から攻撃してくるなど、魔族の想像を超えている。また、地上に太陽以上の火を灯すという凄まじき技など、魔族の魔法では防ぎようがない。それに比べたら、上将ワイバーン『謀略のアウレール』の炎など、そよ風程度にしかならぬ」

「そりゃそーだ。そのとーりだ」

 私、全面的に同意するしかない。確かに、核は別格だろうな。


「ケイディ、ミサイルとか核とかは持ってきてないよね」

「あまりに当然なことを聞くな。どれほどの大きさなのか、想像ぐらいしろ」

 私の質問に、ケイディは吐き捨てた。

「本当に?」

 そう後ろから声が掛かる。賢者だ。いつの間にか起き出したみたいだ。


「原子番号98のカリホルニウムだったら、数グラムで核爆弾が作れる。対物ライフルの弾丸に仕込むことだってできるでしょ。実はそういうのを持ってきているんじゃない?」

 ケイディの顔がこわばった。

 これが、あらぬ疑いを掛けられたためなのか、真実を突かれたからなのか、

私にはわからない。


「作戦目的と、ケイディがどこの国に所属しているかを考えれば、この疑いは当然のものでしょ。ただ、半減期を考えると、2週間くらいしか有効期限のない核弾頭だろうけれど」

「おかしな疑いをかけられるのは迷惑だ」

「ここに来るとき、大電力の磁場発生機を使ったよね。異世界との間の回廊は、構成するにも壊すにも大きなエネルギーが必要よね。実際、私たちが帰るときは辺見くんと私で魔素を使って力場を作り、聖剣タップファーカイトで回廊形成する予定よね。

 で、魔族の作戦では、向こう側に出城を作るというものだったけど、核で通路自体を二度と構成できないように破壊できれば一番楽よね」

 否定するケイディに、賢者の結城先生は食い下がる。

 で、賢者の言っていることがいちいち怖いよ。

 数グラムで作れる核爆弾って、なんなのよ。


「証拠もないのに、人を疑うのはやめてもらいたい」

「じゃあ、あのロボット犬、ビッグドッグの脇腹の予備バッテリーって言っていた部分が、冷却されていて冷たいのはなぜ?

 核弾頭を水に沈めて、カリホルニウムの自然崩壊の熱を逃がすためなんじゃない?」

 ちょっと待ってよ。

 怖すぎるよ。ケイディ、さすがにこれはきちんと答えて欲しいよ。




あとがき

このくらいのことはしますよね、世界最大の国の軍とその軍人なら……

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