第19話 賢者の装備
次は結城先生、賢者の装備だ。
さあ、楽しみだ。橙香と宇尾くんは、あっさりとケイディに攻略されちゃった。だけど、ケイディの国の軍隊と言えども魔法は使っていないから、賢者は攻略できないはずだもん。
「私は杖を」
「そうは言っても、魔法を司る杖など、どうにもならないぞ」
ほらほら、思ったとおりだ。
「そんなもの、最初から求めてはいない。それより、ケイディ、簡単な武器の改造もできるのよね?」
「ああ。ここは航空機の開発実験もしているから、基本的な工具と材料であれば揃っている」
「じゃあ、これからの私のリクエスト、作れるかどうか答えて」
「ああ」
えっ、ひょっとして賢者、オリジナルで一から作ってもらう気なの?
「長さ90cm、太さ4cm、ああ、1.5インチでもいいわ。それに、長さ30cm、太さ2インチの頭を付けて。素材はジェラルミンのパイプ、表面には滑り止めを。下は攻撃に使える強度の石突を。上はステッキ握りの外観のハンマーに。中は区切って浄水システムとサバイバルキット、そしてファーストエイドキットを。方位磁石も欲しい。強度は限りなく欲しいけど、重さは極限まで軽く。できる?」
「石突を外すと槍、その穂先を折りたたんで戈、にもできるぞ。この際だし、ジェラルミンはチタン合金にしてもいい」
え、ケイディ、またもや逆提案?
「できるの?」
「それくらいのものなら。基本的にここにあるものでできるし、戦士の剣の柄と大して変わらない作業だな。『表面には滑り止めを』というのも、同じローレット加工でいいだろう。刃物は軍用のナイフを切ればいいし、浄水システムやサバイバルキットだのエイドキットだのも、ここには腐るほどあるしな。1日あれば余裕だろう」
「さすがだわー」
なんか賢者、マジで感心していない?
そんなにすごいことなのかな?
「いや、むしろ驚いたのはこちらだ。魔法でなにができるか私にはわからないが、現代の技術を詰め込むと割り切ることで同等の機能を得ようとはな」
「杖があるから魔法が使えるわけじゃない。杖は、魔術師の魔法を媒介するものに過ぎない。ならば、現代の装備が詰め込まれていた方が使える。魔法よりも信頼性は確実に高いでしょう。ただ、それだけのことよ」
……またか。
賢者とケイディも仲が良くなってしまうのか。
淋しい。
勇者たる私をさしおいて、なんでみんなケイディと仲良くなっちゃうの?
提案どおり、本当にケイディが魔界に行けばいいじゃん。
「あとは勇者だな。勇者は、聖剣タップファーカイトが体内から出現するのを媒介するものがあればいいんだよな。これなんかどうだ?」
「……なんでよ?」
私は低い声で応える。
ケイディの手に持たれていたのは、おばあちゃんちで一回見たことのある竹の物差し。1メートルの。しかもご丁寧に、cmと尺寸の両方が刻んである。
なんでみんなチタンだの軍の装備品だのって話をしているときに、私には竹の物差しなの?
差別なの?
嫌がらせなの?
あとがき
防具は、新聞紙を折って兜にしてあげようw
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