第10話 共鳴


 それから30分後。

 縛り上げられ、頭には麻袋を被せられたイモムシが4体揃った。


「むーむーむーむーむー」

「うぐうぐうぐうぐうぐ」

「むはむはむはむはむは」

「うごうごうごうごうご」

 うん、うめき声が共鳴している。どっかのカエルの軍隊みたいだ。だけど、いまいち声が美しくない。もう少しこのまま放っておいて、発声練習させたいくらいだ。


「さて、きちんと説明したら拘束をほどくから。それまでちょっと、おとなしくしていてくれる?」

 うーむ、私の言葉を聞かず、頭とつま先でのブリッジから立ち上がろうとしているの、武闘家の宇尾くんだな。

 私、そのブリッジの上に座り込んであげた。


 わーぉ、すごい。私に体重支えてそのまんまブリッジしていられるんだ。いや、それどころか、そのまま立ち上がりそうな力強さを感じる。だけど、立たせたら厄介だよね。拘束されていてもさ。

 私、容赦なく脇腹をくすぐってあげた。

 ブリッジはすぐにぺちゃんこになった。


「聞きなさいよっ!」

 ぴた。

 私の金切り声に、さすがにみんな静かになった。


「いい?

 これから縄をほどくけど、ここにいるのは敵じゃないから。

 だから、いきなり魔法を使ったり戦ったりしないこと。いいわねっ!?」

 こくこく。

 麻袋を被せられた頭がいっせいに頷く。私の言うことを理解したというより、拘束をほどいて欲しい一心なんだろうな。


「まずっ!

 冒険の旅に出る際の武器と防具の無償貸与があるっ!!」

 こくこく。


「次にっ!

 私たちが旅に出ている間、学校は公欠となるっ!!!」

 こくこく。こくこく。


「最後にっ!

 私たちが旅に出ないと、この世界が滅びるっっ!!!!」

 こくこく。こくこく。こくこく。


「繰り返すけど、これからロープをほどくから、おとなしくしてねっ」

 こくこく。こくこく。こくこく。こくこく。


 私が頷いてみせると、ケイディの部下たちがナイフで拘束をほどいた。

 手が自由になると、自分で頭に被せられた麻袋を取る。ああ、みんな髪の毛がもしゃもしゃになっているな。って、ひょっとして私も!?

 慌てて手を頭にやると、自分の頭ももしゃもしゃ。こんな頭で私、ケイディと話していたの?

 なんてことっ!?

 ケイディ、あいつ、なんで言ってくれなかったのよっ?


 みんなで頭を手櫛で撫で回して、なんとか見られる姿になった。次からは、髪型が崩れない麻袋にして欲しいわ。


「で、公欠ってどういうこと?」

 聞いてきたのは、賢者の結城先生だ。

「方法はいろいろある。公欠にしてもいいが、もっといいのは我が国から君たちを交換留学生として招待することだろうな。Ms.結城は引率役として招待しよう」

 ケイディの言葉に、結城先生の表情が固まった。さすがにびっくりしたんだろう。


「アンタたちの正体は……。

 なんでそこまで……。

 あっ、さっきの話だと、私たちが旅に出ないと、この世界が滅びるのよね?」

「さすがに話が早いな、Ms.結城。

 宇宙の物理学的なバランスが崩れている。そのままだと、我々はこの星に住めなくなる恐れすらあるのだ」

 ケイディの言葉に結城先生、今度は驚いたふうもなかった。



あとがき

こもり気味の共鳴です( ー`дー´)キリッ

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