第4話 装備提供


「話はわかった。じゃあ、そろそろほどいてくれない?

 腕が痛い」

 私がそう訴えると、まっちょの白人は頷いて逆に私に聞いてきた。


「その前に、1つだけいいか?」

「なに?」

 私、質問に質問で返す。


「聖剣タップファーカイトをここで振り回さないと約束してくれるか?

 見返りはあるぞ」

「逆に聞くけど、ここまで話したあとで、なんで私がアンタ含めてここを破壊しないといけないのよ?」

 またまた、私は質問に質問で返すことになった。


 まっちょの白人は私の後ろに向かって、軽く頷いてみせた。

 縛られた両手の内側にひやりとした金属の感触があって、私の両手と腕を縛っていたロープがたらんと力なく落ちた。


「いたたたた……」

 私、そう言いながら、腕や赤くなっていた手首を撫でる。

「で、見返りってなに?」

 なんか、観察する目になってじーっと私を見ているまっちょの白人に、私は聞いた。ついでに、もう一言付け加える。

「あとさ、私の名前とかはもう調べているんでしょうから、アンタも名乗りなさいよ。さすがに年上をアンタ呼ばわりし続けたくはない」


 私のリクエストに、まっちょの白人は一瞬考えてから名乗った。

「ケイディと呼んでくれ」

「本名じゃないんでしょ?」

 私の問いに、ケイディは平然と答えやがった。

「当然だ」

 と。


「つまんない」

「そういう問題ではないだろう。それより、見返りについて話そう」

「うん」

 私、そう頷いて自分で自分の腕を抱いた。だって、痛みは引いてきたけど、痺れてもいたせいか、やたらとじんじんしてきたんだもの。


「キミたちの仲間全員を招待し、安心してその魔界とやらに行く態勢を整えよう。その期間、学校は出席扱いとなり、キミたちは銃刀法からも開放される。装備は選び放題だ」

「……いいわね」

 私、思わずそう答えていた。


 そうなんだよね。

 橙香は戦士だけど、日本で武器や防具の調達は極めて難しいんだ。だいたい日本刀1本100万円近くするって、高校生じゃどうにもならないよ。武闘家だって、素手で魔王を殴ったって限界があるだろう。なんか武器を持って殴ったんじゃないだろうか。例えばメリケンサックとか。ほら、スパゲティの量を計るヤツ。

 賢者だって、杖が必要なんだろうし、それってきっとお年寄りが持っているステッキじゃダメなんだと思う。


 なんかさ、冒険の旅とか行かなくて済むならいいけど、どこかで諦めないといけない気はしているんだ。

 で、出かける以上は装備は整えたいし、後顧の憂いもない方がいい。

 そして、このケイディの提案は、どこぞの王様みたいに銅貨10枚だけとか、どうのつるぎとたびびとのふくだけとかに比べたら、破格と言っていいよね。


「ただね……」

 私のつぶやきに、ケイディは頷いた。

「わかってる。魔王のことだろう?

 これを使え」

 ごとん。

 ケイディがテーブルの上に黒い物を置く。


「ロッグ42ってなに?」

「いいや、LじゃなくてG、グロッグ42だ。プラスチックフレームだから400gを切っていて、旅で持ち歩いても重くはないぞ。弾の威力もそこそこある。キミたちの戦いの手段の中で、これが交じるのは大きなフェイントだろう?」

「まぁ、ね」

 そう答えたけど、私……、戦いのことなんか、まだ思い出せていないんだよね。


「魔王が裏切ったら、これで頭を撃ち抜け」

 えっ、私がこれで、辺見くんの頭を?



あとがき

現代の王様登場ww

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