第2話 自白?
「ごめんなさい。とてもじゃないけど、偵察衛星なんて弁償はできない。でも謝るから」
私の声に、まっちょの白人はとても驚いた顔になった。
「えっ、もう認めるのか?」
「だって、ダム湖で一部始終を見られていたんじゃ、いいわけなんかできないじゃない」
「……驚いたな」
なによ。
そう言わなかったら、私を拷問にでもかける気でしょ?
痛いのはイヤだし、隠さなきゃいけないこともないから、さっさとみんな喋るよ。
「聞く気があるなら、みんな話すわよ」
「では聞こう」
「言っておくけど、私のことを高校生にもなって中二病なのかとか、いろいろ言わないでよ。私だってびっくりしているんだから」
「わかった。気をつける」
そう言われて、私、逆になんかビビった。
どうせ、私の言うことなんか信じないと思っていたし、軍事用偵察衛星なんてもんを管理している人たちが、私の心情に気を使ってくれるなんてないと思いこんでいたからだ。
「同じクラスに、前世で……、あ、前世と言っても、この世界の隣なんだけど、そこで魔王をやっていたヤツが転生して来ていたの。私たちは私たちで、前世でその隣の世界に行って、魔王を退治してきた仲。
最初は馬鹿な笑い話だと思っていたんだけど、聖剣タップファーカイトが出ちゃったので笑い話にできなくなった。で、私自身、聖剣タップファーカイトと元魔王や元の仲間たちがいると、勇者モードになっちゃって冷静さを失うみたいなんで、独りで考えようと思ってダム湖に行ったんだ」
「……なるほど、それで」
そうまっちょの白人が頷いたので、私、聞いてみた。
「『それで』って、なに?」
「仕掛けたマイクで情報収集していたときのキミの話っぷりは、今とは別人格だった」
「まぁ、ねぇ」
私はそう頷かざるをえない。
「まぁ、我々の方にもいる。歴戦の軍人で、任務のとき以外は学校にいたときのキミみたいになってしまった者だ」
「……うれしくない。それ」
「すまない。だが、許容範囲を超えた重圧を超えた者は、あまりにも極端な合理化された思考をする。人外と戦った勇者とは、そういう者なのだろう」
うんうん。そんな感じでまっちょの白人は自分の言ったことに頷いて見せた。
「……アンタ、まさかRPGなんかで遊ぶの?」
まっちょの白人から勇者という単語がするりと出てきたことで、私はそう聞かずにはいられなかった。
「もちろんだ。仕事は仕事、プライベートはプライベートだ。日本に来てから、DQもFFも1からすべて楽しんだぞ」
「ああ、そう」
私、げんなりして短く相槌を打った。
まっちょがゲームコントローラーいじるんじゃないよ。筋肉が無駄だろ。
そんだけ筋肉ついているんなら、頭は空っぽでいて欲しい。それで頭の中身もいっぱい入っていたら、貧弱な私たちが救われないじゃん。
「まぁ、プライベートのことはどうでもいい。キミの話を続けてくれ」
「……わかった」
ちぇっ。やっぱり頭もいいのかよ。そのままゲームの話を小一時間語ってくれてもいいのに。
「でもってさ、その元魔王が話すには、私たちの世界があって、魔王の世界、つまり隣接の魔界があって、さらにその隣の深奥の魔界があると。たぶん、層構造みたいに世界は重なっているんだって」
って、ここまで聞いただけで、なんでこのまっちょの白人、露骨にうれしそうなんだろう?
あとがき
「まっちょがゲームコントローラーいじるんじゃないよ。筋肉が無駄だろ」は、暴言w
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