令嬢は幼い日を懐かしむ
わたくしたちのお茶会には、お友だちとはまた違った決まりがあるわ。
最初から最後まで心を許し合い過ごすのよ。
というのも、将来結婚して長い時間を共に過ごすことになるでしょう?
その間のほんの少しの時間に、貴族らしく紳士淑女の仮面を身に着けて過ごしたとして、どうなるかしら?と二人で考えたことがあったわ。
共有する長い時間に引っ張られて、取り繕えなくなるのでは?というのが、カース様のご意見。
わたくしもこれには同意しましてよ。
それでね。
わたくしたちは考えましたの。
ではずっと貴族らしく振る舞っていたらどうかしら?と提案したのはわたくし。
カース様は反対で、家族になるのだから二人きりのときには気楽に過ごしたいし、外では二人で協力してそれらしく振る舞えばいいのではないか?というお考えだったのね。
内と外を完全に切り替えてしまえば、相応の振舞いが出来るのではないかって。
わたくし、それだけで外できちんと振る舞えるか不安でしたけれど。
カース様は自分がフォローするから大丈夫だと言ってくださって。
あれはまだ、わたくしたちが八歳の頃の話ね。
それでわたくしたちは、学園でお会いしても違った感じで過ごしているわ。
そうそう、そのお話の延長で。
わたくしのお友だちとの関わり方についても相談させていただいたのよ。
当時はわたくしも領地にいて、お友だちは皆様、我が家に属する家系のご令嬢でしょう?
そうすると、身内なのよね。
だから振舞い方に多少貴族らしさが欠けていても、問題になることもなくて。
でも近い将来は学園に入ることが決まっておりましたし、遠い未来には社交界での相応の振舞いを求められるでしょう?
わたくし、カース様の婚約者ですもの。
それでどうしたものかと悩んでいたわ。
わたくしは、お友だちと心を許して仲良くしたい。
でもそれで、わたくしたちがどなたかの前で貴族として失格となる振舞いをしてしまったら?
わたくし一人の問題になるならまだいいわ。
だけどお友だちの誰かが瑕疵ある令嬢になるのは嫌だったの。
大切なお友だちだもの。
精一杯守りますし、取れる限りの責任は取るわ。
それでも何かが起こる前に対策をしておいた方がよろしいでしょう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます