令嬢は気になる


 貴族の子女として、等しく王家の人質となり、王家が定めし教育を受けながら、王国への忠誠を示す立場にある五年間。

 それから先は、成人した貴族としての時間となりますの。


 この方々はどのように貴族として生きていかれるのかしらね。


 うふふ。

 皆様よく話題が尽きないものだわ。

 その情報収集能力については、賞賛いたしましてよ。

 だって話題はずっと件の男爵令嬢と深く関わっている皆様の、愚かな言動についてでしたの。


 これだけの情報をどうやって手に入れているのかしらね?

 学園に密偵でも紛れ込ませているとしたら凄いわ。



「ねぇ、リリーシア様はどう思われます?」



 皆様勝手に盛り上がっておられましたのに。

 急に話を振られましたのよ。


 わたくしは微笑んで囁きましたわ。



「沢山のお話が聞けましたから、恋について勉強になりましたわ」



 これは本心でしてよ。


 すると伯爵令嬢が眉を顰めてわたくしを見詰めましたの。



「リリーシア様も恋をされておりますでしょう?」



 あらあらまぁまぁ。

 もしやわたくしも頭が悪いように見えておりまして?


 それともこの方々は別の何かの方法で恋をしているかどうかを見極められるのかしら。

 でもその見極めは正しくはありませんわね。


 お伝えした方がよろしいかしら。

 角が立つのは嫌ね。



 わたくしが悩んでおりましたら。

 また皆様のお話が進んでおりましたの。



「あの女が引き裂くまでは、お二人はいつも仲睦まじく、並んでいるお姿は絵になるようで……。皆様あのような恋がしてみたいと口々に仰っておりましたわ」


「それなのにこのようなことになるなんて……リリーシア様がおいたわしい」


「信じられませんわよね」


「相思相愛のお二人に見えておりましたのに」


「今ではあの女との方が……」


「だめよ。そのようなことを言っては……」


「リリーシア様。相手が悪かっただけですもの。お気を病まないでくださいね?」



 気になりますわ。

 とても気になりますわよ。


 わたくしたちが仲睦まじく?相思相愛?

 そのように見えていたですって?



 おかしいですわ。

 これはとてもおかしいですわね。


 こちらの皆様には学園でしかお会いしておりませんはずですのに。

 王都に来てから、外を出歩くようなこともまだしておりませんのよ?



 ですのに皆様、急に口を閉じて、何かを期待するような目でわたくしを見ていますの。

 わたくしは仕方なく、皆様にお言葉を返すことにいたしましたわ。



「皆様のご配慮に感謝いたしますわ」



 これくらいしか言えませんものね。

 そうしましたら、伯爵令嬢が一段と眉を顰めましたの。


 伯爵家では表情の学習の時間も用意出来なかったのかしら?

 特に困っているようなお話を聞いたことはございませんのに。

 とても不思議だわ。





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