【完結】婚約者は浮気中？噂を聞いた令嬢は自分も「恋は盲目」を経験したいと言ってみた

令嬢は知見を広げさらなる学びを求める

　わたくしがお願いしますと、皆様力強く頷いてくださいましたの。

　説明をする前に肯定するほど、それはとても大切な知識なのね？

「言葉の通り、恋に溺れると周りがよく見えなくなる、そういう意味ですわ」

「四六時中恋のお相手のことだけを考えているんですって」

「しかも頭まで悪くなる人が一定数いるのよね」

　最後の過激な発言は、伯爵令嬢のものでしたわ。

　この中では一番上の身分になりますわね。

　もちろんわたくしを除いての話ですわ。

　下位貴族というわけでもないでしょうに。本当に不思議。

　わたくしは彼女ともっとお話をしてみたくなりましたの。

「そのようなことが、世の中では頻繁に起きているものなのかしら？」

　頭の良し悪しにまで影響を与えるなんて。

　それはとてもおそろしいことでしょう？

　ましてやそれが世の中の至るところで生じているとしたら。

　これはすぐでにも貴族として対策を講じなければならないと思いましたの。

「言葉になるほどのことですから……それなりに起きていることかと？」

　男爵令嬢が自信なく語尾を上げてそう言ったあと、続けたのは子爵令嬢でした。

「少なくとも、あの男爵令嬢と深い仲にある皆様は、全員がそれですよね」

　この学園には、恋をして頭が悪くなってしまう方々が、そんなにも存在しておりましたのね？

　わたくし、ちょうど今勉強中なものですから、是非とも観察させていただきたいわ。

　噂の男爵令嬢も共にね。

　だって関わる方全員の頭を悪くしてしまう令嬢なのでしょう？

　それはとても興味深いわ。

　今後の対策を練るうえでも、よく彼女を観察しておかなければならないと思いますの。

　ただの興味本位ではなくてよ？

　わたくしがそのように考えていますと、子爵令嬢はまだ話を続けました。

「公爵令息様までそうなるとは思いませんでしたけど」

　まぁ、そうでしたわ。

　身近なところに、よくお話を聞くことの出来る方がいらっしゃったのね！

「本当にねぇ。まさか公爵令息様がよ」

「あの女のどこにそんな魅力があるのかしら？」

　わたくしは興奮を決して外に漏らさぬようにと、長い時間を掛けて練習してきたように、顔には笑みを浮かべ頭では何を聞こうかとあれこれ考えておりましたの。

　そうしてわたくしが口を閉じておりましたらね。

　彼女たちの会話も一段と弾んでおりましたわ。