令嬢は無知を恥じ教えを乞う


 それにしても今後ない貴重なお時間ですし?

 わたくし、このような方々に対する淑女らしいお断りの仕方が分かりませんの。


 ですから貴重なこの時間、よく耳を澄ませてただただ楽しむことに致しますわ。



「うふふ。構わなくてよ。わたくしのためを想ってのことなのでしょう?」



 わたくしも意地が悪かったかしら。

 このように言えば、彼女たちはもっと囀って、面白い時間をいただけると思ってしまったのですもの。


 案の定でしたわ。



「もちろんです。わたくしたちはリリーシア様の味方ですから」


「でも不思議よね。誰よりも公爵令息様がリリーシア様を想っておられるようでしたのに」


「お二人は心から想い合う理想の婚約者同士として有名でしたものねぇ」


「それに賢い御方でしょう?なのにどうしてあのように愚かな振舞いをされてしまうのかしら?」


「賢い方だからお気持ちを隠すことがお上手だったのかもしれませんよ?」


「それもそうね」


「でもおかしくなったのはどうして?」


「それは恋をしたからよ。恋は盲目と言うでしょう?」



 確かに彼は聡明な方ですわ。

 彼女たちの言うように、このような瑕疵となる噂を放置する方ではありませんの。


 そこに何かの意図でもございませんと、ねぇ?


 でもわたくし、彼女たちの発言で気になることが出来てしまいましたわ。

 これはいいお勉強になりそう。


 もっとよく話を聞き出すことに決めました。



「わたくしも分からないので教えてくださるかしら?」



 不思議ですわね。

 皆様、目がキラキラしておりますのに、そこに美しさを感じませんわ。


 わたくしいつもならキラキラと輝くものは好みましてよ?



 わたくしは尋ねました。



「不勉強で恥ずかしいのですけれど。『恋は盲目』というお言葉を耳にするのは初めてでしたの。その意味を教えてくださらない?」




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